
「うちの子、どうしてこんなに落ち着きがないんだろう?」
「何度言っても聞いてくれない…私の接し方が悪いのかな?」
こうした悩みを抱える保護者の方は少なくありません。
実は、その子どもの行動の背景には「ADHD(注意欠如・多動症)」という発達特性が隠れていることがあります。この記事では、公認心理師である筆者が、子どものADHDについてわかりやすく解説しながら、接し方のコツや支援の方法を紹介します。

■ ADHDの定義
ADHD(Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder)は、発達障害のひとつであり、主に以下の3つの特性が見られます。
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不注意(集中力が続かない、忘れ物が多い)
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多動性(じっとしていられない、身体を動かし続ける)
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衝動性(順番を待てない、思ったことをすぐ口に出す)
これらは脳の神経伝達の仕組みによるもので、しつけや本人の努力不足ではありません!
子どもに見られる具体的な行動例

以下は、ADHD傾向のある子どもによく見られる行動です。
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授業中に立ち歩く・手遊びが止まらない
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宿題や片づけが最後までできない
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忘れ物が多く、毎日の持ち物チェックが欠かせない
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周囲の話を聞かずに、自分の話ばかりする
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危ない場所で急に走り出す、注意してもすぐ忘れる
これらの行動は、家庭や学校で「困った子」と捉えられやすいですが、本人も「どうしてうまくいかないんだろう」と葛藤しています。
ADHDの診断とそのタイミング
◯何歳頃にわかる?
ADHDの傾向は3歳頃から見られることがありますが、小学校入学以降に顕著になるケースも多くあります。
◯診断方法
医師(小児科・児童精神科)による問診、家庭・学校での行動観察、心理検査などを通じて総合的に判断されます。
◯早期の理解がカギ
「診断=レッテル貼り」と思われがちですが、子どもの特性を理解し、適切な支援につなげるスタート地点としてとらえることが重要です。

親が知っておきたい接し方のポイント
① 否定ではなく、まずは共感
「なんでそんなことするの!」と怒るよりも、
「そうしたかったんだね」と子どもの気持ちを一旦受け止めることが信頼関係の第一歩です。
② 行動ではなく「環境」を整える
注意が散りやすい子どもにとって、**「静かな場所」「一つずつの指示」「短時間の集中」**が有効です。
例:
×「宿題全部やりなさい」
◯「まず1ページだけ一緒にやろう」
③ 行動を肯定的にリフレーミングする
「落ち着きがない」は「エネルギッシュ」
「話を遮る」は「思ったことをすぐ伝えられる」
といったように、視点を変えてポジティブな側面を伝えることが、子どもの自己肯定感を育てます。
④ できたことを“具体的に”褒める
「ちゃんとしてて偉いね」よりも、
「最後までイスに座ってたの、すごく助かったよ」と伝えると、行動の定着につながります。
学校や周囲との連携が大切
教師との情報共有
担任や支援学級の先生に子どもの特性や家庭での様子を丁寧に伝えることで、連携したサポートが可能になります。
支援制度の活用
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通級指導教室:通常学級に在籍しながら、特性に合わせた個別指導を受けられる制度
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特別支援学級:より手厚いサポートが必要な場合に在籍可能
これらは地域の教育委員会や学校を通じて相談できます。
保護者の“こころ”のケアも大切に
ADHDのある子どもを育てる中で、親も以下のような感情を抱きがちです。
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周囲の目が気になる
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「ちゃんと育てられていないのでは」と自責の念にかられる
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いつもイライラしてしまい、自己嫌悪に陥る
だからこそ、保護者自身が安心できる場やサポート体制が不可欠です。
オンラインカウンセリングでは、自宅から気軽に相談ができ、子育ての悩みを心理的に整理するサポートが受けられます。
24時間365日いつでも受付中!
ADHDの子どもは“可能性の宝庫
ADHDの子どもは、ある分野で驚くほどの集中力や創造性を発揮することがあります。
例:
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興味のあることには驚異的な没入力
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人を惹きつけるユーモアや感受性
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思考の柔軟さや斬新なアイデアの発想力
こうした特性を活かすには、“できないこと”ばかりに目を向けるのではなく、“得意なこと”を見つけて伸ばす視点が大切です。
ADHDの子どもと共に歩むために
ADHDは「問題」ではなく、「個性」であり「特性」です。
公認心理師としてお伝えしたいのは、子どもの行動の背景には、必ず意味があるということです。
子育てに悩んだとき、迷ったときは、一人で抱え込まずに相談してください。
あなたの「不安」を「安心」に変えるお手伝いを、私たちはいつでも準備しています。