親失格な気がする…子育てで怒ってばかりの私はだめでしょうか?

監修者の石川蓮(公認心理師)先生より

育児と仕事等の両立は本当に大変なことです。毎年、親御さんが精神的に参ってしまうというケースが多くあります。

その中でも、ふとした時に声を荒げてしまうことで悩まれるのです。

今回は育児と生活の両立で悩んだ際、その原因と備えておくべきことを整理しています。

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30代女性(主婦)

3歳の息子を育てている主婦です。
毎日のように怒ってしまい、夜、寝顔を見ては「ごめんね」と繰り返しています。
特に夕方、仕事から帰ってきて余裕がないときに声を荒げてしまうことが多く、そのたびに自分は親失格なんじゃないかと思います。

先日は夫にも「そんなに怒るなんておかしい」と言われて、何も言い返せませんでした。
子どものことは大切なのに、優しくできない自分がどうしても許せません。

ココラボ相談室からの回答

ご相談ありがとうございます。子育ての中で怒ってしまうたびに、自分を責めてしまう気持ちはとてもつらいものです。 まして誰かにその姿を指摘されると、心はさらに追い詰められていきます。

この記事では、親失格かもしれないという気持ちがどこから来るのかを整理しながら、今の状態をどう立て直していけるかを一緒に考えていきます。

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親失格な気がするとき、先に知っておいてほしいこと

まず最初に、親失格だという気持ちの輪郭を少し整理するところから始めます。

子育てでつらくなるだけで親失格とは言えない

子どもに声を荒げてしまった日の夜、寝顔を見て「ごめんね」と思う。 そんな経験のある方はいるかもしれません。

つらいと感じること自体は、子育てに向き合っている証でもあります。 怒ってしまったことだけを切り取って、自分の親としてのすべてを否定する必要はありません。

怒った日にも、ごはんを用意して、着替えを手伝って、体調を気にかけていたはずです。 その積み重ねは、怒った一場面では消えません。

ただし、同じ苦しさが続くときは助けが必要

一方で、つらさが一時的なものではなく、毎日のように続いている場合は、少し立ち止まって状況を見直すことも大切です。 「怒ってしまう自分が嫌だ」と思いながら同じことを繰り返しているなら、それは気合や反省だけでは変えにくい状態になっている可能性があります。

自分を責め続けることがさらに余裕を奪い、また怒ってしまうという悪循環は、心の体力が限界に近づいているサインでもあります。 その場合は、この記事の後半で触れる相談のサインも参考にしてみてください。

子育てで「親失格かも」と思いやすいのはどんなとき?

子育てで「親失格かも」と思いやすいのはどんなとき?

親失格だと感じる瞬間には、いくつかのパターンがあります。 代表的な場面を取り上げながら、その背景にあるものを見ていきます。

怒ってしまったとき

もっとも多いのが、子どもに怒鳴ってしまった直後の自己嫌悪です。 本当は穏やかに接したいのに、夕方の忙しい時間帯に言うことを聞いてもらえず、つい声が大きくなる。 その後に押し寄せる後悔は、親としての自分を丸ごと否定したくなるほどの重さを持ちます。

ただ、怒りという感情そのものは、子どもに関心があるから湧くものです。 どうでもよければ怒りは生まれません。

怒った事実だけで親失格だとは言えないこと、でも怒り方が激しくなりすぎていないかを振り返ることは、分けて考える必要があります。

子どもをかわいいと思えない瞬間があるとき

マイナビ子育てが行ったアンケートでは、子育て中に子どもをかわいいと思えなかった瞬間があるかという問いに対して**44%の母親が「ある」**と答えています。

夜泣きが何日も続いたとき、イヤイヤ期で何を言っても拒否されるとき、そうした瞬間にかわいいと思えないのは、愛情が消えたわけではありません。

心身の疲労が限界に達すると、感情を感じ取る力そのものが鈍ります。 かわいいと思えないのは、自分の心がそれだけ消耗しているというサインです。 愛情の量ではなく、今の体力と余裕の状態に目を向けてみてください。

周りと比べて自分を責めるとき

SNSで楽しそうに子育てをしている投稿を目にしたり、ママ友が余裕をもって子どもに接している姿を見たりして、自分との差に落ち込むことがあります。 しかし、見えているのはその人の一場面でしかありません。

心理学では、ネガティブな感情のときほど他者の良い面だけが目に入りやすくなることが知られています。 比較が始まったら、それは自分の余裕がなくなっているサインかもしれないと受け取ってみるのも一つの視点です。

母親失格とは何か、と聞きたくなるのはなぜ?

ここでは、親失格だという気持ちがどこから強まっていくのか、その背景を少し丁寧に見ていきます。 気持ちの正体が見えると、自分の責め方が少し変わることがあります。

一度つらく当たったことと、ずっと傷つけることは同じではない

子どもにきつい言葉を言ってしまったとき、それが子どもの人生を壊してしまうのではないかと不安になることがあります。 けれど、一度の関わりと、日常的に繰り返される関わりでは、子どもへの影響は大きく異なります。

一度怒ってしまったことを取り返しのつかないことにまで広げてしまうのは、レッテル貼りと呼ばれる思考のくせかもしれません。 その日の一場面で、親としてのすべてを判定する必要はないのです。

寝不足やワンオペで余裕がなくなっている

子育て中の怒りの背景には、睡眠不足や孤立した育児環境が深く関わっています。 厚生労働省の調査でも、子育てに負担や不安を感じている保護者は7割を超えており、その理由には経済的な負担に加えて、時間的・体力的な余裕のなさが含まれています。

特にワンオペ状態が続くと、怒りのコントロールが難しくなるのは自然なことです。 配偶者の帰宅が遅い、近くに頼れる人がいないといった状況では、イライラの原因は自分の性格ではなく、環境にあることも少なくありません。

自分を責める前に、今の環境が無理のないものかどうかを見つめ直してみてください。

完璧主義や自分責めが強くなっている

親失格だと感じやすい人には、こうあるべきという理想像が強い傾向が見られます。 心の中で常に自分にダメ出しをしていると、許容範囲がどんどん狭まります。

90点でも100点でなければ0点と同じのように感じてしまう完璧主義は、子育ての場面では自分を追い詰める方向に働きやすくなります。

また、検索して目に入る情報も「これはNG」「やってはいけないこと」が多く、ますます自分の行動に自信が持てなくなることがあります。 正解を探そうとする前に、自分がなぜそこまで追い込まれているのかに目を向ける方が、気持ちが楽になることがあります。

親失格かどうかを整理するときの判断軸

親失格かもしれないという不安を、もう少し具体的に整理するための視点を紹介します。 自分を裁くためではなく、今の状態を冷静に見つめるための軸です。

誰かに言われた言葉をそのまま信じていないか

親失格という気持ちが、自分の内側から湧いたものなのか、誰かに言われた言葉がきっかけなのかを分けてみてください。

配偶者から「母親失格だ」と言われた、義家族に子育てを否定された、という経験がきっかけになっている場合、その言葉はあなたの親としての実態を正確に映しているとは限りません。

日本には、子どもの行動や出来事をすべて母親の責任として扱う空気が根強くあります。 その空気の中で投げつけられた言葉を、そのまま自分の評価として受け入れる必要はありません。 傷ついている自覚があるなら、その傷自体がまずケアされるべきものです。

ふだんの関わり全体を見渡す

ある日怒鳴ってしまったことだけを取り出して、親失格かどうかを判断しようとすると、答えは常に「失格」に傾きます。 大切なのは、その一日だけでなく、ふだんの関わりの全体を見ることです。

朝起こすこと、食事を作ること、体調に気を配ること。 こうした日常の関わりは派手ではないぶん自分では気づきにくいですが、子どもにとっては大きな安心の土台になっています。

日常の当たり前が「安心の土台」に

自分の子育てを振り返るなら、最悪の一瞬だけでなく、一日全体を見渡す視点を持ってみてください。

子どもへの影響が心配なときは、続き方に目を向ける

怒ってしまった後、子どもの様子が気になるのは自然なことです。 ここで覚えておいてほしいのは、親子関係は一度の出来事で決定されるものではなく、その後の関わりによって修復ができるということです。

怒ってしまった後に少し落ち着いてから子どもに声をかける、翌日にいつもどおり接する。 そうした小さなやりとりの積み重ねが、子どもにとっての安心感を育てていきます。

大切なのは、一度も怒らないことではなく、怒った後にどう関わるかという続きの部分です。

子どもにきつく当たってしまった日の立て直し方

怒ってしまった後、自分を責め続けてしまうことがあります。 親側・子ども側・相談先の3つの面から、立て直し方を整理します。

まず親の心身を落ち着かせる

怒った直後に謝ろうと焦ると、かえって感情が収まらないまま子どもに接してしまうことがあります。 まずは自分のクールダウンが先です。

  • その場を少し離れる
  • 水を飲む
  • 深呼吸をする

子どもが安全な状態であれば、数分間距離を置くことに問題はありません。 怒りのピークは数分程度で下がると言われていますので、その時間をやり過ごすだけでも対応は変わります。

子どもへの関わりを修復する

気持ちが落ち着いてから、子どもに声をかけてみてください。 長い説明や完璧な謝罪でなくて構いません。 「さっきは怒りすぎたね」「大きい声でびっくりしたよね」といった短いひとことで十分です。

大切なのは、怒った後に関係を放置しないことです。 子どもは、親が怒った後にもう一度やさしく接してくれるという経験を通じて、関係が壊れても戻れるということを学んでいきます。

修復しようとする姿勢そのものが、子どもにとっての安心感になります。

頼れる相手や相談先をひとつ決める

日頃から「つらくなったらここに連絡する」という先をひとつだけ決めておくと、追い詰められた瞬間の選択肢が増えます。

もし配偶者やパートナーに頼れない場合でも、使える仕組みはあります。

  • 地域の子育てひろば
  • ファミリー・サポート・センター
  • 保育園の一時預かり

こども家庭庁の相談窓口一覧では、電話やSNSで相談できる窓口がまとめられています。

また話す相手がすぐに見つからない場合は、よりそいホットライン(0120-279-338、24時間対応)に電話をかけることもできます。

親失格かどうかより、今の状態を立て直すことが大切

親失格かどうかという問いには、明確な答えがありません。 子育てには合格も失格もなく、うまくいく日もいかない日もあるのが実際のところです。

それよりも大切なのは、今のしんどさをそのまま抱え続けないことです。 怒ってしまった自分を責めるエネルギーを、環境を少し変えることや、誰かに話すことに使ってみてください。

自分の状態を立て直すことが、子どもとの関わりを変えていく一番の近道になります。

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監修者: 石川蓮(公認心理師)

公認心理師、行動心理士。1997年生まれ。北里大学・大学院卒業。その後、公認心理師と行動心理士の資格取得。
在学中は高齢者や生産人口の色覚異常や朝型夜型特性が睡眠に与える効果等の研究を行う。
大学院卒業後、大学病院附属の研究所にてカウンセリングやデータマネジメント担当として勤務。また、都立高校の心理学講師としても勤務。
「心の悩みを持つ方のそばに寄り添う」をモットーに業務遂行しております。

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