双極性障害の寛解まで何年かかる?治療しても良くならない気がする…

監修者の石川蓮(公認心理師)先生より

私にも双極性障害の友人がおり、調子が良い時は「大丈夫かもしれないな」と思える一方で、再び波が来ると「結局よくなっていなかった」と考えてしまうという悩みを相談受けたことがあります。

双極性障害は、良くなったり悪くなったりを繰り返しながら少しずつ波を穏やかに安定させていくことが目標となる病気です。

この記事では専門家として寛解とはどのような状態か、そして「治療してもよくならない気がする」と感じる背景を整理して自分と付き合っていくためのヒントをお伝えします。

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30代男性(会社員)

双極性障害(躁鬱)と診断されて3年になります。
薬を飲んで気分が安定していた時期もあったのですが、半年ほど前にまた波が大きくなり、今は少しずつ持ち直しているところです。

調子がいい日が続くと、もう大丈夫かもしれないと思います。
でもまた崩れると、結局なにも変わっていないんじゃないかと感じて気持ちが沈みます。
朝、出勤前に薬を飲むたびに、これをいつまで続けるんだろうと考えてしまいます。

躁うつは寛解するものなのか、寛解までに何年くらいかかるのか、自分が今どのあたりにいるのか、分からなくなることがあります。

ココラボ相談室からの回答

ご相談ありがとうございます。
良くなったと思ったのに、また崩れる。
その繰り返しのなかで、自分はどこに向かっているのか分からなくなる気持ちは、治療を続けている方にとってとても自然なものです。

この記事では、躁うつの寛解とはどういう状態を指すのか、そして寛解しないと感じてしまう背景にはなにがあるのかを、少しずつ整理していきます。

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躁鬱の寛解とはどういう状態か?

寛解という言葉を聞いても、それが自分にとって何を意味するのか、すぐにはつかみにくいかもしれません。

寛解とは、躁状態やうつ状態の症状が落ち着き、日常生活に大きな支障がない状態が続いていることを指します。
ただし、これは病気が完全になくなった状態、つまり完治とは異なります。
高血圧や糖尿病といった慢性的な病気と同じように、薬や生活管理を続けながら安定を保っている段階です。

寛解にもいくつかの段階があります。

  • 完全寛解:DSM-5(精神疾患の診断基準マニュアル)の診断基準で、躁症状もうつ症状も一切認められない状態が2か月以上続いた場合
  • 部分寛解(不完全寛解):軽い症状が残ってはいるものの、日常生活がある程度送れている状態

ここで押さえておきたいのは、部分寛解も回復の一つの形であるという点です。

完全に症状がゼロにならなければ回復していないという見方をすると、自分の変化に気づきにくくなります。
白か黒かではなく、症状の安定度に幅のあるグラデーションとして捉えるほうが、自分の今の位置を見渡しやすくなります。

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寛解までに何年くらいかかるのか

躁うつの寛解までの期間に、明確な基準はありません
症状の重さ、型(I型かII型か)、発症から治療を始めるまでの期間、治療内容、生活環境やストレスの多寡など、関わる要素が多いためです。

3か月で安定する方もいれば、数年にわたって気分の波を繰り返しながら徐々に落ち着いていく方もいます。

期間がはっきりしないと聞くと、余計に不安になるかもしれません。
一つの参考として、順天堂大学の加藤忠史教授の報告では、発症後5年以内に約8割の方が再発しているとされています。

一度安定したとしても、再び波が訪れる可能性は低くありません。
また、再び安定するまでの期間も人それぞれで、うつ状態からの回復には3か月から半年以上かかる場合もあります。

ただ、ここで知っておいてほしいのは、再発を経験したことが治療の失敗を意味するわけではないということです。

躁うつは波のある病気であり、波が来たときにどれだけ早く対応できるかが、長期的な安定に直接つながります。

治療を続けているのに寛解しないと感じてしまうのはなぜか

薬を飲み続けて、通院も欠かさない。それでも良くなっている気がしない。
そう感じるとき、その背景にはいくつかの異なる事情が隠れている場合があります。

良くならないと感じること自体は、回復途中の自然な揺れでもある

まず、良くなっていないという感覚そのものが、治療がうまくいっていない証拠とは限りません

双極性障害の治療は、劇的に変わるという実感を持ちにくい経過をたどりやすいとされています。
波が少しずつ穏やかになっていく過程では、変化が小さすぎて本人には見えにくいものです。

しかも、調子の良い日が続いたあとに崩れると、良い日の記憶がかえって落差を大きく感じさせます。
こうした繰り返しのなかで、何も進んでいないという認知が固まりやすくなります。

加えて、病気を受け入れるプロセスそのものが一筋縄ではいきません。
双極性障害の第一人者である加藤忠史教授は、否定や否認の時期を経なければ最終的な受容には至れないと指摘しています。

診断を受けてから受容に至るまでには、怒りや落胆、焦りなど、さまざまな感情が行き来するのが通常の流れです。

部分寛解が続いているのに気づけていない場合

すでに部分寛解の状態にあるのに、自分ではそれを回復とみなせていないという構造もあります。

完全寛解だけを回復だと思っていると、わずかに残る気分のムラや疲れやすさが目につき、自分はまだ良くなっていないと感じてしまいます。

けれども、以前に比べて波の深さが浅くなっていたり、仕事を休まずに済む日が増えていたりするなら、それは治療が前に進んでいる状態です。
半年前の自分と今の自分を並べてみると、数字や事実のうえでは安定していることに気づけるかもしれません。

自分の変化を客観的に捉えるためには、日々の気分や睡眠、活動量を簡単に記録しておくことが役立ちます。
1か月前、3か月前の記録と比べたときに安定が見えてきたら、主治医と一緒にその変化を確認してみてください。

うつ病として治療が進んでいる可能性

そもそも診断の段階でずれが生じているケースも見逃せません。
双極性障害は、多くの場合うつ状態で受診されるため、初診時にうつ病と診断されることは珍しくありません

うつ病と双極性障害では、使う薬がまったく異なります。
うつ病治療で用いる抗うつ薬は、双極性障害に単独で使うと躁転(うつ状態から急に躁状態に切り替わる現象)を引き起こしたり、気分の切り替わりが頻繁になるリスクがあります。

こうした治療のずれがあると、薬を飲んでいるのに安定しない状態が長引きやすくなります。

もし、抗うつ薬を長期間飲んでいるのに改善しない、あるいは薬を始めてからかえって気分の上下が激しくなったと感じるなら、そのことを主治医に率直に伝えてみてください。

双極性障害では、本人が過去の軽躁状態を調子が良かっただけと記憶していることが多いため、家族やパートナーの視点を加えることで診断の精度が上がる場合もあります。

気分の波が速くなるラピッドサイクラーという状態

ラピッドサイクラーと呼ばれる状態に移行しているケースもあります。
これは年に4回以上、躁状態またはうつ状態のエピソードが出現する状態を指し、治療への反応が鈍くなりやすい特徴があります。

ラピッドサイクラー化は、治療を中断して再発を繰り返した場合や、双極性障害に抗うつ薬が不適切に使用された場合に起こりやすいとされています。

大塚製薬のすまいるナビゲーターでは、再発を繰り返すたびにエピソードの間隔が短くなり、急速交代化を誘発する可能性があることが解説されています。
この状態では安定した時期が極端に短くなるため、良くなっている実感を得にくくなります。

ただ、ラピッドサイクラーの状態であっても、気分安定薬を中心とした治療の見直しや生活リズムの再構築によって、波を緩やかにしていくことは可能です。

なかなか安定しないと感じたら、気分の変動の頻度を具体的に主治医へ伝えることが、治療方針の再検討につながります。

寛解期とその手前の時期をどう過ごしていくのか?

ここまで、寛解しないと感じる背景について整理してきました。
ここからは、症状が落ち着いている時期やそのすぐ手前にいるときの過ごし方を考えます。

長期的な安定の土台は、波が静かな時期にこそつくられます。

服薬を続けることの意味と、やめたくなる気持ちの扱い方

調子がいい日が続くと、もう薬は必要ないのではと感じる瞬間が出てきます。
この気持ちは、治療を続けている多くの方が一度は経験するものです。

しかし、双極性障害の薬は、今の安定をつくっている土台でもあります。

メタ解析による研究では、再発後に新たなエピソードが出現するまでの平均期間は約1.4年とされ、最初の1年で約44%の方がなんらかの再燃を経験しています。
薬を自己判断でやめると、このリスクが大きく上がります。

やめたいと感じたとき、それを否定する必要はありません。
むしろ、その気持ちを主治医に伝えること自体が治療の一部です。

自己判断でやめることと、相談したうえで減らしていくことは、まったく別の行為です。

生活リズムを整えるとは?

生活リズムの安定は、再発予防のなかでも特に重視されている要素の一つです。
対人関係・社会リズム療法(IPSRT)という治療法では、起床・食事・就寝・外出・人と会う時間など、日常の行動リズムを記録し、乱れやすい場面を特定していきます。

特に睡眠リズムの乱れは、躁転の引き金になりやすいことが知られています。
徹夜や極端な夜更かし、交代勤務などで睡眠が崩れると、脳の活動パターンが不安定になり、気分の波が動きやすくなります。

生活リズムを整えるというと完璧を求めがちですが、毎日同じ時間に起きる、朝に光を浴びるといった一つか二つの習慣を安定させるだけでも、身体への影響は小さくありません。

無理なく続けられるラインで始めて、できた日を積み上げていく感覚のほうが、長く続きやすいです。

再発のサインを自分と周囲で共有しておく

再発の兆候は、本人よりも周囲のほうが先に気づく場合が多いとされています。
特に躁状態の始まりは、本人にとっては調子の良さとして感じられるため、病気のサインだとは思いにくいものです。

  • 睡眠時間が短くなっても元気でいられる
  • 話の量が急に増える
  • 買い物が増える

こうした変化は自分では客観視しにくいサインです。
家族やパートナー、信頼できる人とあらかじめ共有しておくことが、再発を早い段階で食い止める助けになります。

変化に気づいたら主治医に相談する、というルートをあらかじめ決めておけば、深刻な状態に進む前に手を打てる可能性が高まります。

本人が無理をしてしまう前に声をかけてもらえる関係があるかどうかは、安定した日々を維持するうえで見過ごせないポイントです。

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監修者: 石川蓮(公認心理師)

公認心理師、行動心理士。1997年生まれ。北里大学・大学院卒業。その後、公認心理師と行動心理士の資格取得。
在学中は高齢者や生産人口の色覚異常や朝型夜型特性が睡眠に与える効果等の研究を行う。
大学院卒業後、大学病院附属の研究所にてカウンセリングやデータマネジメント担当として勤務。また、都立高校の心理学講師としても勤務。
「心の悩みを持つ方のそばに寄り添う」をモットーに業務遂行しております。

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