双極性障害は寿命が短いって本当ですか?平均寿命や短命と言われる理由が不安です
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監修者の石川蓮(公認心理師)先生より
双極性障害と寿命の情報に触れると、知りたい気持ちと怖さが一緒に押し寄せてくることがあります。相談の場でも、数字だけが独り歩きして、未来への不安が強まってしまう方にお会いします。
大切なのは、短命という言葉だけを切り取って受け止めないことです。背景にある要因や治療との関係を落ち着いて整理することが、不安に飲み込まれない助けになります。
30代男性(会社員)
3年前に双極性障害と診断されて、今は薬を飲みながら働いています。先日、ふとスマホで自分の病気について調べていたら、寿命が短いという記事をいくつも見つけてしまいました。
平均で10年以上短くなるとか、突然死のリスクがあるとか。それから気になって関連する記事ばかり読んでしまって、夜も眠れない日が続いています。
妻にも話せていませんが、自分はこの先どうなるんだろうと思うと怖くて仕方ありません。数字がどこまで本当なのか、自分に何ができるのか、少しでも整理したいです。
ココラボ相談室からの回答
ご相談ありがとうございます。
寿命に関わる情報は、知っておきたい気持ちと、知るのが怖い気持ちが同時にぶつかるテーマです。検索するたびに不安な数字が出てきて、気持ちが落ち着かなくなっている方もいるかもしれません。
この記事では、双極性障害の寿命に関するデータがどのような前提のもとに語られているのか、そして短命と言われる背景に何があるのかを、少しずつ整理していきます。
(関連記事:双極性障害は治らないのですか?完治と寛解の違いは何ですか)
双極性障害の平均寿命はどれくらい?

双極性障害のある方の平均寿命は、一般の方よりおよそ8〜12年短いと報告されています。研究によっては10年以上の差があるとするものもあります。この数字を目にして、強い不安を感じた方も少なくないと思います。
具体的な年齢に置き換えると、少しだけイメージがつかみやすくなります。厚生労働省の令和4年簡易生命表を見てみます。日本人の平均寿命は、およそ男性81歳、女性87歳とされています。ここから8〜12年ほど短いと考えてみます。あくまで統計上の目安ですが、男性は70歳前後、女性は75歳前後が一つの見当になります。
ただ、この数字にはいくつか前提があります。多くの研究で使われているのは平均余命という統計指標です。ある年齢の集団が今後あと何年生きられるかを推計したものです。個人の寿命を予測する数字ではありません。研究が行われた国や年代、治療環境によっても結果は変わります。
そのため大切なのは、数字の大きさに圧倒されないことです。その背景にある要因や、自分にできることへ目を向けていきます。
実際、この差は誰にでも一律に決まっているものではありません。
治療を続けながら、身体の健康管理を意識していきます。そうすることで、縮めていける部分もあると考えられています。
監修者の石川蓮(公認心理師)先生に相談してみませんか?
双極性障害の方はなぜ寿命が短いと言われるの?

寿命が短いと言われる背景には、大きく分けて二つの柱があります。一つは自殺リスク。もう一つは心血管疾患や生活習慣病などの身体疾患です。
双極性障害が直接命を縮めるわけではありません。症状の波や、それに伴う生活の変化が積み重なります。そうしてリスクが高まりやすい構造として語られることが多いです。
自殺リスクが高まりやすい背景
自殺率は、双極性障害のない方と比べて20〜30倍ほど高いと報告されています。この数字を目にするだけで、胸が締めつけられるような感覚を覚える方もいると思います。

リスクが高まりやすいのは、主にうつ状態のときです。深い絶望感や無力感にのまれて、生きること自体がつらくなる時期があります。
加えて、躁状態からうつ状態に切り替わるタイミングも危うさがあります。衝動性が残ったまま気分が落ち込むため、突発的な行動につながりやすいとされています。
自分では危うさに気づきにくいときもあります。周りが気づける変化もあります。次のような様子が重なるときは、注意して見守りたいところです。
- 「死にたい」「消えたい」と口にする、または急に投げやりな態度が増える。
- 眠れない日が続き、飲酒量や衝動的な行動が増えている。
- 一人暮らしや失業などで、そばに頼れる人が少ない状況にある。
自分の中に危ない感覚が出てきたとき、あるいは身近な人に強い変化が見えるとき。まずは一人で抱え込まないこと。それが最初の一歩です。今すぐの安全が心配なときもあります。救急や地域の緊急窓口など、すぐにつながれる相談先も、選択肢に入れてください。
生活習慣病や心血管疾患のリスク

双極性障害のある方は、糖尿病や高血圧、脂質異常症などの生活習慣病を併発しやすいことがわかっています。肥満の有病率も、一般の方より高いという報告があります。
この背景には複数の要因が絡んでいます。気分安定薬や抗精神病薬の一部には、体重増加や代謝への影響が出やすいものがあります。
躁状態では活動量が増えすぎて、食事や睡眠のリズムが崩れがちです。うつ状態では動けなくなり、運動量が落ちます。
生活習慣病は、進行すれば心筋梗塞や脳卒中など命に関わる疾患につながります。
寿命に影響しやすいのは、双極性障害そのものではないのかもしれません。その周辺で起きやすい身体のリスクだと言えます。
見方を変えてみます。身体の健康管理に意識を向けることで、下げられるリスクもあります。
脳萎縮・突然死などその他の要因
寿命について調べていくと、いくつもの言葉にぶつかります。パーキンソン病、脳萎縮、突然死。どれも怖さの強い言葉です。中身を整理しておくと、漠然とした不安に少しだけ輪郭が生まれます。
パーキンソン病
双極性障害のある方は、パーキンソン病の発症リスクが約3倍高いとする研究があります。脳内の神経伝達物質が長く変動し続けることとの関連が考えられています。ただ、すべての方に起きるわけではありません。
脳萎縮
脳萎縮についても報告があります。MRI検査で前頭前野や海馬の体積が減少しているというものです。ただ、それが直接寿命を縮めているかは、はっきりしていません。
集中力や記憶力に影響が出ることはあります。日常の困りごとや将来への不安を強めることもあります。再発を繰り返すほど、脳への負担は大きくなるとも指摘されています。治療を続けて再発を防ぐことの意味は、ここにもつながっています。
「記憶が飛ぶ」と感じることもあります。背景にあるのは、脳萎縮そのものではないのかもしれません。そのときの症状や薬の影響が関わることも多いようです。躁状態では考えが次々に移り、記憶が断片的になります。うつ状態では集中力が落ちて、覚えにくくなります。
こうした変化は気分が安定してくると和らいでいくことも多いとされています。だからこそ、萎縮そのものを気にしすぎないことです。波を小さく保っていくことが、現実的な対処につながります。
突然死
突然死については、心血管疾患や脳血管障害との関連が指摘されています。ただ、一般の方との比較データは十分にあるとは言えません。リスクの大きさを断定できる段階ではありません。
不安をゼロにするのは難しいかもしれません。それでも定期的な健康診断で、身体の変化を早めに捉えられます。それが現実的にできる備えになります。
寿命のリスクを下げるために大切なこと

ここまでの内容を全部を一度にどうにかしようとしなくて大丈夫です。何から手をつけるかの見当がつくだけでも、漠然とした怖さの質が変わってきます。
まず守りたいこと:治療の継続と再発予防

土台になるのは、治療を途切れさせないことです。気分安定薬や抗精神病薬には、躁とうつの波を抑え再発を防ぐ働きがあります。再発が重なるほど、心身の負担は増えていきます。調子が良い時期にこそ続ける意味があります。
ただ、躁状態では薬が不要に思え、うつ状態では通院する気力がわかない。どちらの時期にも途切れやすいのが、この病気の厄介なところです。
安定しているうちに、以下の小さな準備を行うことでいざというときの命綱になります。
- 主治医と服薬の意味を確認しておくこと。
- オンライン診療や家族の代理受診が使えるか、調べておくこと。
次に整えたいこと:生活習慣病と心血管の対策

精神科には通っていても、内科の健診は後回しになりがちです。
しかし定期的なチェックは、双極性障害のある方にとって特に大切です。血液検査や血圧、心電図を意識してみてください。
薬の副作用で体重や血糖値、脂質に変化が出ていないか。早めにつかめれば、薬の種類や量を主治医と相談して調整できます。
やめるのではなく、折り合いをつけながら続けることが長期的な健康を支えます。
生活習慣では、まず睡眠のリズムを最優先にしてください。睡眠の乱れは躁転やうつの悪化に直結しやすく、心血管系にも負荷がかかります。食事や運動はその次のステップとして、できる範囲で少しずつで十分です。
支え方のポイント:自殺リスクと孤立を防ぐ

自殺リスクや孤立への対策は、本人だけで完結するものではありません。家族やパートナーの存在が大きな支えになります。
ただ、励ましすぎや行動の管理はかえって追い詰めることがあります。
大事なのは、以下の行動です。
- いつもと違う変化に気づいたとき責めずに声をかけること。
- つらいときに頼れる先を、本人と一緒に確認しておくこと
支える側も消耗します。家族会やカウンセリングなど、自分自身が話せる場もあります。それを持っておくことが、長く関わるための足場になります。
監修者の石川蓮(公認心理師)先生に相談してみませんか?
寿命の数字よりも大切にしたい視点

平均寿命のデータには、さまざまなケースが含まれています。治療が続かなかったケースも、身体の管理が十分でなかったケースもあります。今、治療を続けながらこの記事を読んでいる方もいます。あなたはすでに、その平均とは違う歩み方をしています。
仕事を続けられるだろうか。結婚や妊娠はどうなるのか。寿命の不安は、暮らし全体の心配とつながっています。でも、そのすべてに今すぐ答えを出す必要はありません。治療を続けながら、主治医やカウンセラーと一緒に少しずつ考えていく。その過程そのものが、不安を扱いやすくしてくれることがあります。
もし一人で抱えている時間が長くなっているなら、誰かに話してみるのも一つの方法です。心理カウンセリングは、正解を教えてもらう場ではありません。自分の気持ちや考えを安全に広げ、整理していく場です。検索ではほどけなかった不安が、声に出すことで少し軽くなることもあります。