予防線を張ってしまう心理が知りたい。言い訳が先に出て人が離れていく気がする

監修者の石川蓮(公認心理師)先生より

つい私って〇〇だから、と先に言ってしまう癖は、意志の弱さではなく心の守り方の一つです。

言ったあとに一人で落ち込む方に、カウンセリングでもよく出会います。

仕組みが分かれば、言葉は少しずつ選び直せますよ。

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40代女性(自営業・フリーランス)

自己肯定感が低く、すぐ人に言い訳がましく言ってしまいます。

「私って〇〇だから…」などと言い、年下には言った後に「だからごめんね」と言ってしまいます。

こんなことを言われても相手を困らせてしまうだけだし、付き合いにくいと思われて人が離れていってるのも感じています。

自分の中で思うだけに留めて、相手には言わないようにしたいのですが、どうしたら良いでしょうか。

ココラボ相談室からの回答

ご相談ありがとうございます。

自分を下げる言葉が癖になっていて、言ったあとに一人で落ち込んでしまう。

そのくり返しに、心が疲れてしまっているのですね。

この記事では、予防線を張ってしまう心理の仕組みと、言葉にせず心の中に留めるための小さな練習を、公認心理師監修のもとで一緒に整理していきます。

つい「私って〇〇だから」と口にしてしまうあなたへ

私って〇〇だから、という言葉がなぜ口をついて出るのかを、まずは責めずに眺めるところから始めましょう。

ここでは、言い訳が先に出るときの心の動きを整理します。

言い訳が先に出る自分を責めなくていい理由

言い訳が先に出るのは、性格の欠点でも怠けでもありません。

失敗して傷つく場面を先回りして避けようとする、心の反射のような動きです。

先に出る言い訳は、傷つきを避けようとする心の反射として起きることがあります。
先に出る言い訳は、傷つきを避けようとする心の反射として起きることがあります。

努力が先だと頭では分かっているのに言葉が出てしまうのは、意志の問題ではなく仕組みの問題だからです。

仕組みで起きていることは、仕組みを知ることで少しずつ変えていけます。

言い訳がましい人だと自分にレッテルを貼るほど、かえって言葉は増えやすくなります。

自分でもしんどいと感じているなら、変わりたい気持ちがすでに動き始めている証拠でもあります。

「だからごめんね」と年下に言ってしまう心の動き

年下の相手にほど謝ってしまうのには、理由があります。

目上の人と話すときは立場が自分を守ってくれる感覚がある一方で、年下と向き合うときは実力だけで見られている感覚が強くなるからです。

だからごめんね、という一言は、相手にがっかりされる前に自分から謝っておくことで、批判やあきれた反応から心を守ろうとする動きです。

先回りの謝罪は自分を守る一方で、相手を戸惑わせることもあります。
先回りの謝罪は自分を守る一方で、相手を戸惑わせることもあります。

謝罪までセットになるほど、傷つきたくない気持ちが強いのだと捉えることができます。

年下に嫌われたくない、頼れる先輩でいたいという思いが強い人ほど、先回りの謝罪は増えやすくなります。

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予防線を張ってしまうのは心を守る仕組みだから

ここでは、予防線を張る心理の背景を心理学の視点から整理します。

名前のある仕組みだと分かるだけでも、自分への見方は少し変わってきます。

セルフハンディキャッピングという自己防衛

自分に不利な条件を先に口にして、失敗したときの言い訳を用意しておく行動を、心理学ではセルフハンディキャッピングと呼びます。

1978年にアメリカの心理学者ジョーンズとバーグラスが提唱した概念です。

例えば、テストの前に全然勉強していないと周囲に話しておくのは、その典型とされています。

失敗しても仕方ないと思ってもらうことで、自尊心が深く傷つくのを防いでいるのです。

セルフハンディキャッピングには、不調や不利を言葉で先に伝える主張的なタイプと、あえて準備をしないなど行動で不利な状況を作る獲得的なタイプがあるとされています。

私って〇〇だから、という前置きは、言葉で保険をかける主張的なタイプにあたります。

セルフハンディキャッピングには、言葉で保険をかける形と行動で保険をかける形があります。
セルフハンディキャッピングには、言葉で保険をかける形と行動で保険をかける形があります。

私は〇〇に向いてないから、という言葉も同じ働きをしています。

予防線は怠けではなく、自分を守るための心理的な仕組みなのです。

傷つきたくなさと自信のなさ、過去の失敗経験

予防線を張る人の背景には、共通する土台がいくつかあります。

  • 失敗して傷つきたくない気持ちが強い
  • 自分の力を信じきれず、成功した場面を思い描けない
  • 過去の失敗で恥ずかしい思いをした記憶が残っている

自己肯定感が低い状態では、挑戦の前にまず失敗した自分を想像してしまいます。

すると、その痛みから心を守る言葉が、努力よりも先に準備されてしまうのです。

過去の失敗を責めずに振り返ることが、予防線の背景を知る手がかりになります。
過去の失敗を責めずに振り返ることが、予防線の背景を知る手がかりになります。

あらかじめ最悪の結果を想定して不安を和らげようとする、防御的悲観主義と呼ばれる考え方の癖が関わっていることもあります。

失敗を避けたい感覚は、今の時代に広く共有されているものでもあります。

SHIBUYA109 lab.の調査では、Z世代の約4割が失敗はできるだけしたくないと答えており、決してあなただけの感覚ではありません。

「どうせ」が本当の失敗を呼ぶ自己成就予言

心理学には自己成就予言という考え方があります。

うまくいかないはずだという予想を口にしているうちに、無意識に行動がその予想へ沿っていき、実際に失敗しやすくなる現象です。

どうせ私にはできない、と言葉にするたび、心のどこかで手を抜く準備が始まります。

予防線は失敗の痛みを和らげる一方で、失敗そのものを引き寄せやすくする側面も持っているのです。

否定的な予想が挑戦を減らし、自信を下げる循環につながることがあります。
否定的な予想が挑戦を減らし、自信を下げる循環につながることがあります。

また、言い訳はくり返すほど癖として強まり、挑戦の回数そのものを減らしてしまうことも指摘されています。

守っているつもりの言葉が、長い目で見ると自信を育てる機会を奪ってしまうのです。

予防線がかえって人を遠ざけてしまう理由

人が離れていっている気がする、という感覚にも理由があります。

ここでは視点を変えて、予防線を張られた側の心理を整理してみます。

年下や後輩が感じる負担とすれ違い

私って〇〇だから、と言われたとき、たしかに聞いた側は返す言葉に迷います。

そんなことないですよと励ますべきか、聞き流すべきか、毎回小さな判断を迫られるからです。

さらに謝られると、年下の側は許す役割まで引き受けることになります。

目上の人を励まし続ける関係は、若い相手にとって思った以上に気を使うものです。

励まされた側も、また言わせてしまったと落ち込み、次の予防線につながる悪循環が生まれることもあります。

励ますことや許すことが続くと、年下の相手にも見えにくい負担が生まれます。
励ますことや許すことが続くと、年下の相手にも見えにくい負担が生まれます。

相手を困らせているかもしれない、というあなたの感覚は、相手の状態をかなり正確に捉えています。

だからこそ、その気づきは自分を責める材料ではなく、言葉を選び直すきっかけにしていけるとよいのです。

保険をかける言葉が信頼を下げるとき

失敗する前に保険をかけるような言い訳は、聞き手には責任を避けようとする姿に映ることがあります。

本人はただ身を守っているだけでも、挑戦する前から逃げ道を作っているように見えてしまうのです。

心理学の研究でも、セルフハンディキャッピングをする人は、しない人に比べて周囲からの印象や評価が下がりやすいことが指摘されています。

悪気のない一言の積み重ねが付き合いにくい印象につながるのは、とてももったいないことです。

裏を返せば、結果を素直に受け止める姿勢を見せられる人には、周囲は安心して物事を任せられます。

完璧さよりも、言葉と行動を合わせる姿勢が安心できる関係を育てます。
完璧さよりも、言葉と行動を合わせる姿勢が安心できる関係を育てます。

信頼は完璧さではなく、言葉と行動が一致しているかどうかから生まれていくものです。

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言葉にせず心の中に留めるための小さな練習

思うだけに留めて口に出さない、という目標には、段階を踏めば近づいていけます。

ここでは、今日から試せる三つの練習を順番に紹介します。

言い訳が出そうな瞬間に気づく

最初の練習は、言葉を止めることではなく、出そうになった瞬間に気づくことです。

私って、と言いかけたときの胸のざわつきや、頼まれごとを引き受けた直後の不安に、そっと注意を向けてみてください。

今、予防線を張ろうとしているな、と心の中で実況するだけで十分です。

慣れてきたら、どんな場面で予防線が出やすいのかを振り返ってみるのもおすすめです。

人前で意見を言うときなのか、初めての作業を任されたときなのか、傾向が見えると心の準備がしやすくなります。

言ってしまったあとに気づいた場合も、失敗ではありません。

気づける回数が増えること自体が、癖が変わり始めているサインです。

気づいてひと呼吸置くだけでも、言葉を選び直す余地が生まれます。
気づいてひと呼吸置くだけでも、言葉を選び直す余地が生まれます。

予防線を「事実の共有」に言い換える

どうしても何か言いたくなるときは、無理に飲み込むより言い換える方が長続きします。

自分を下げる言葉を、相手の役に立つ情報に変えるのがコツです。

この作業は初めてなので、確認しながら進めますね、という伝え方なら、同じ不安でも相手は受け取りやすくなります。

ポイントは、能力の評価を口にせず、状況と対応だけを伝えることです。

ごめんね、の代わりにありがとうを増やしていくと、会話の温度も自然と変わっていきます。

最初から完璧に言い換えられなくても構いません。

十回に一回変えられたら上出来、くらいの基準で続けてみてください。

自分を下げず、状況と対応を伝えると、相手にも受け取られやすくなります。
自分を下げず、状況と対応を伝えると、相手にも受け取られやすくなります。

小さな成功体験で自己効力感を育てる

言葉の癖の根っこには、自分にはできるという感覚の弱さが関わっています。

心理学者バンデューラは、この感覚を自己効力感と名づけ、小さな成功体験の積み重ねによって育てられるとしました。

大きな挑戦は必要ありません。

今日は言い訳を言わずに引き受けられた、という小さな記録を残していくと、できた事実が少しずつ自分への信頼に変わっていきます。

寝る前に、手帳やスマホのメモへ一行書き残すだけでも十分です。

続けるうちに、思うだけに留められた日が増えていることに気づけるはずです。

それでもしんどいときに一人で抱えないために

一人で抱えず専門家と整理することも、自分の心を扱う大切な練習です。
一人で抱えず専門家と整理することも、自分の心を扱う大切な練習です。

言葉の癖の背景には、長い時間をかけて育ってきた自己肯定感の低さが関わっていることもあります。

一人での練習に疲れたときの選択肢も、知っておいてください。

公認心理師に相談するという選択肢

言わないようにしようと意識するほど苦しくなる場合や、自分を責める気持ちが日常に影を落としている場合は、カウンセリングで整理していく方法もあります。

公認心理師のような専門家と一緒に振り返ると、予防線の裏にある傷つきや、自己肯定感が下がってきた経緯を、安心できる場で少しずつ言葉にしていけます。

誰かに話すことは弱さではなく、自分の心を扱う練習の一つです。

言い訳の多い自分をどうにかしたいと、一人で考え続けてきたこと自体、すでに十分がんばってきた証です。

心の中に留める練習と並行して、話せる場所を持つことも、選択肢の一つに加えてみてください。

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監修者: 石川蓮(公認心理師)

公認心理師、行動心理士。1997年生まれ。北里大学・大学院卒業。その後、公認心理師と行動心理士の資格取得。
在学中は高齢者や生産人口の色覚異常や朝型夜型特性が睡眠に与える効果等の研究を行う。
大学院卒業後、大学病院附属の研究所にてカウンセリングやデータマネジメント担当として勤務。また、都立高校の心理学講師としても勤務。
「心の悩みを持つ方のそばに寄り添う」をモットーに業務遂行しております。

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