大人のADHDは、なぜ完璧主義で仕事がこんなに疲れるの?
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この記事では、仕事で完璧主義になりやすく疲れてしまう理由と、無理に自分を変えずに「力を抜いて働く」ための考え方がわかります。
石川先生のおすすめポイント
- 「ちゃんとやらなきゃ」というべき思考は、怠けではなく真面目さの裏返し
- 常に気を張り続ける働き方が、仕事後も頭が休まらない疲れにつながっている
- 「出来なかった」ところではなく「できたところ」に目を向ける
30代男性(会社員)
子どもの頃にADHDの診断を受けており、自分なりに特性を理解しながら働いています。ただ、仕事になると小さなミスや確認不足がとても気になり、何度も見直してしまいます。
周りからは「そこまで気にしなくていい」「もっと気楽にやればいい」と言われますが、頭では分かっていても、手を抜くことに強い不安や罪悪感を感じてしまいます。
その結果、仕事中はずっと気が張った状態で、帰宅してからも「今日の対応は本当に大丈夫だっただろうか」と考え続けてしまい、なかなか気持ちが休まりません。
最近は、仕事そのものよりも、**常に完璧でいようとして疲れている自分**にしんどさを感じています。
大人のADHDは、なぜこんなに完璧主義になりやすく、仕事で疲れてしまうのでしょうか。力を抜いて働くことはできるのでしょうか。
ココラボ相談室からの回答
ご相談ありがとうございます。
仕事で細かなところまで気になり、気を張った状態が続くと、とても疲れてしまいますよね。手を抜きたいわけではないのに抜けない、そのしんどさは自然なものです。
大人のADHDの方からは、仕事が終わっても頭が切り替わらなかったり、ちゃんとやろうとするほど苦しくなってしまったりする、という声をよく聞きます。
こうした状態は、性格や努力の問題ではなく、ADHDの特性と真面目に向き合ってきた経験が重なって起きやすいものです。
では、ここからはADHDとはどういうものなのか、特徴である完璧主義の付き合い方について解説していきます。
ADHD(注意欠如・多動症)とは?

ADHDとは、注意の向け方や気持ちの切り替え方に特徴がある、生まれつきの脳の特性です。
正式には注意欠如・多動症と呼ばれますが、必ずしも落ち着きがない、じっとしていられないという姿だけを指すわけではありません。
大人になると、
- 細かなミスが気になって頭から離れない
- 一つの作業に意識が集中しすぎてしまう
- 何から手をつければいいのか分からなくなる
ような日常や仕事の中に困りごととして表れやすくなります。
ADHDの特徴の一つは、集中のコントロールが難しいことです。気が散りやすい一方で、興味のあることには深く入り込み、周囲が見えなくなるほど集中してしまうこともあります。
その結果、以下のような思考のクセや、完璧主義、自己否定の強さにつながることがあります。
- 失敗を避けようとして慎重になりすぎる
- 一度気になると止まらなくなる
- できない自分を攻め続けてしまう

注意や思考の切り替えにエネルギーを使いやすいという、脳の特性による偏りが影響しており、自分の特性を知らないまま無理を続けると、疲れや生きづらさだけが積み重なってしまいます。
ADHDの人に完璧主義が多いのは本当ですか?

結論から言うと、大人のADHDの方の中には、完璧主義で悩みやすい人が少なくありません。
もちろん、すべてのADHDの方が完璧主義というわけではありませんが、仕事や人間関係の中で、ミスをしないように気を配ったり、周囲に迷惑をかけないよう意識し続けたりするうちに、自分にとても厳しくなってしまうケースはよく見られます。
ADHDの特性があると、注意がそれやすかったり、うっかりしたことで指摘を受ける経験を重ねやすかったりします。そうした体験が続くと、もう失敗したくない、ちゃんとやらなければ、という思いが少しずつ強まっていきます。
大人のADHDで、なぜ仕事がこんなに疲れてしまうのか
大人のADHDの方が仕事で強い疲れを感じやすいのは、能力や努力の問題ではありません。多くの場合、ミスをしないように、常に気を張り続けていることが大きな理由です。
仕事では、時間や優先順位、人とのやり取りなど、同時に気を配ることが増えます。ADHDの特性があると、それらを一つひとつ意識して対応する必要があり、頭の中が休まらない状態になりやすくなります。
その結果、以下のような感覚が続きます。

子どもの頃より、大人になってから苦しさが増える理由
大人になると、失敗が許されにくくなり、責任も増えます。その分、ADHDの方は人一倍気をつけようとし、確認や準備に力を使ってきた方が多いはずです。
仕事で疲れやすいのは、頑張りが足りないからではなく、これまでずっと頑張ってきた結果です。
完璧主義が仕事をしんどくしてしまう理由

完璧主義そのものが悪いわけではありません。ただ、仕事の中では、その真面目さが無意識のうちに負担になってしまうことがあります。
特にADHDの特性があると、力の入れどころを調整するのが難しくなり、頑張りがそのまま疲れにつながりやすくなります。
ここでは、完璧主義が仕事をしんどくしてしまう理由を、具体的に見ていきます。
過集中が起きると、力の配分が崩れやすい
ADHDの特性があると、気になったことに一気に集中してしまう「過集中」が起きやすくなります。
仕事に真剣に向き合えている反面、細かい部分に力を使いすぎてしまい、全体のバランスが取りづらくなることがあります。
その結果、必要以上に時間やエネルギーを使ってしまい、仕事が終わる頃には強い疲労感が残りやすくなります。
頑張っているのにしんどい、という感覚が生まれやすい理由の一つです。
集中できない自分を責めてしまう悪循環
一方で、常に集中できるわけではないのもADHDの特性です。
集中が続かない場面があると、「ちゃんとできていない」「自分はダメだ」と感じてしまいやすくなります。
過集中と集中の波を繰り返す中で、うまくいかなかった部分ばかりが印象に残り、自分を責める気持ちが強まっていきます。
その自己否定がさらに緊張を生み、仕事をよりしんどく感じさせてしまう悪循環につながります。
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「ちゃんとやらなきゃ」が止まらなくなる「べき思考」とは?

「ちゃんとやらなきゃ」「ここまでできて当然」
頭では少し厳しすぎると分かっていても、こうした考えが自然と浮かんでくることがあります。
このような思考のクセは、べき思考と呼ばれています。べき思考は、自分を律する力にもなりますが、強くなりすぎると心を追い込んでしまいます。
少しでも基準に届かないと、できていない自分ばかりが気になり、仕事が終わっても気持ちが休まらなくなります。
「ちゃんとやらなきゃ」が止まらない状態は、気合や努力が足りないからではありません。多くの場合、無意識に身についた考え方のクセが働いています。
ADHDと「べき思考」はなぜ結びつきやすいのか
ADHDの特性があると、注意がそれたり、うっかりミスを指摘された経験を重ねやすいことがあります。
そうした経験が続くと、同じことを繰り返さないように、自然と自分に厳しいルールを課すようになります。
ちゃんと確認しなければ、もっと丁寧にやらなければ、迷惑をかけてはいけない、といった考えが重なっていきます。
こうした考えは、失敗を防ぐための工夫でもあります。
ただ、その基準が少しずつ上がっていくことで、気づかないうちに「常にちゃんとしなければならない」状態になってしまいます。
ADHDの方にとって、べき思考は怠けを防ぐためのものではなく、必死に適応してきた結果として身についてきた考え方だと言えます。
真面目さと完璧主義は紙一重

べき思考が強い人は、決していい加減な人ではありません。むしろ、責任感が強く、仕事を大切にしてきた人ほど、この思考に縛られやすくなります。
だからこそ、少し力を抜いたつもりでも、
- これで本当に大丈夫だろうか
- まだ足りないのではないか
と不安が残ってしまいます。
真面目さと完璧主義は、とても近いところにあります。
今しんどさを感じているのは、サボっているからではなく、ずっと真面目に頑張ってきた証拠とも言えるでしょう。べき思考を無理に消す方法ではないので、少し距離をとりながら、仕事を続けていくための考え方です。
ADHDでも「力を抜いて働く」ための考え方3選

完璧ではなく「十分」で終わらせるという選択
ADHDの方は、無意識に“完璧”を求めてしまいがちです。
そこで「80%できていれば十分」という基準をあらかじめ決めておくことが役立ちます。
「ここまでできていればOK」というラインを作るだけで、力を入れすぎずに仕事を進めやすくなります。
これは手を抜くのではなく、疲れにくい働き方をつくるための工夫です。
タスクを区切ることで、こだわりから離れる
タスクを大きなひとまとまりで捉えると、完璧主義が強まりやすくなります。
作業を小さく区切って、「ここまでで一旦終わり」と決めることで、過度なこだわりや過集中が落ち着きます。
小さな区切りを積み重ねるほうが、結果として効率もよくなり、負担も減らせます。
「できなかったこと」より「できたこと」に目を向ける
完璧主義の人は「できなかったところ」ばかりに意識が向きがちです。
しかし、小さな達成でも「今日はここができた」と振り返ることで、気持ちが軽くなり、無理に完璧を求めなくなっていきます。
できている部分に気づけるようになると、自分に対する評価が穏やかになり、働き方も自然と安定しやすくなります。
ADHDに向いている仕事を探す時に、知っておいてほしいこと

仕事がしんどくなると、「自分に向いている仕事があるはず」と探したくなるものです。環境を変えれば、今より楽になるのではないかと考えるのも自然な反応です。
ただ、仕事選びを進める前に、一度立ち止まって考えてほしいことがあります。それは、今感じているしんどさの多くが、仕事の種類ではなく、働き方のクセから来ている可能性があるという点です。
完璧主義やべき思考を抱えたままだと、どんな仕事に就いても、無意識に気を張り続けてしまいます。向いている仕事を探しているのに、なぜかどこでも疲れてしまう、という感覚につながりやすくなります。
仕事選びより先に整えたい「働き方のクセ」
向いている仕事を考えるとき、多くの人は「自分に何ができるか」「どんな職種が合っているか」に目が向きます。
しかし、ADHDの方にとっては、それと同じくらい、どんなペースや関わり方なら無理なく続けられるかが大切です。
たとえば、常に完璧を求められる環境や、細かな確認を一人で抱え込む働き方は、疲れやすさを強めてしまいます。
一方で、多少の余白があり、相談しやすい環境では、同じ仕事でも負担の感じ方が変わることがあります。
仕事選びの前に、自分はどこで力を使いすぎているのか、どんな場面で無理をしやすいのかを整理しておくだけでも、選択の軸がはっきりしてきます。
不注意優勢型の人ほど、自分を責めやすい

不注意優勢型のADHDの方は、外から見ると落ち着いて見えることが多く、周囲に理解されにくい場合があります。その分、ミスや抜けに気づいたときに、「自分が悪い」と内側で抱え込みやすくなります。
注意がそれやすいことを自覚しているからこそ、人一倍気をつけようとし、完璧を求めてしまう人も少なくありません。その努力が評価されにくいと、さらに自分を責める気持ちが強まってしまいます。
向いている仕事を探すときは、能力や適性だけでなく、自分を責めすぎずに働ける環境かどうかという視点も大切です。それが、長く安定して働くための大きなヒントになります。
ADHDの働き方悩んでいるあなたへ

完璧主義で疲れてしまうのは、あなたの性格の問題ではなく、ADHDの特性によって頑張りすぎてしまうクセが強まりやすいからです。だからこそ、自分を責める必要はありません。
今日お伝えしたように、十分思考を取り入れたり、タスクを区切ったり、小さな「できた」に目を向けるだけでも、日々の負担は確実に軽くなります。
あなたがこれまで真面目に仕事に向き合ってきたことは、ちゃんと力になっています。
少しずつで大丈夫なので、肩の力を抜ける働き方を少しずつで大丈夫です。