躁鬱の彼氏から別れを告げられた…どう支えればよかった?

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20代女性(会社員・公務員)

3年付き合った彼氏に別れを告げられました。彼は仕事のストレスから双極性障害(躁鬱)と診断され、迷惑をかけたくないからと距離を置かれてしまいました。

私なりに調べて、そばにいたいと伝えたのですが、しつこいと言われてそれきりです。支えたい気持ちは変わらないのに、私がいることで彼を追い詰めてしまったのかもしれないと思うと、どうすればよかったのか分からなくなります。

ココラボ相談室からの回答

ご相談ありがとうございます。
支えたいと思って関わってきたのに、それを拒まれてしまったとき、やり場のない気持ちが残るのは自然なことです。

自分の対応がまずかったのではないかと何度も振り返ってしまう方も少なくありません。
この記事では、双極性障害(躁鬱)の恋人が別れを口にする背景と、言われた側の気持ちの整理の仕方について、公認心理師の視点からお伝えしていきます。

躁鬱(双極性障害)の恋人が別れたいと言うのはなぜ?

双極性障害のある恋人から突然別れを切り出されると、何が起きたのか分からず混乱することがあります。
ここではまず、躁状態とうつ状態それぞれで別れを口にしやすくなる背景を整理します。

うつ状態では相手のために身を引こうと考えやすい

双極性障害のうつ状態では、気力や意欲が大きく落ち込み、自分には何もできないという感覚に支配されやすくなります。
恋人に対しても、一緒にいると迷惑をかけてしまう、自分のせいで相手を不幸にしてしまうといった考えが強まり、自分から身を引こうとすることがあります

こうした言葉は、相手のことが嫌いになったから出てくるわけではありません。
むしろ大切に思っているからこそ、これ以上負担をかけたくないという気持ちが別れの言葉になって表れやすいのです。

うつ状態のときは物事を悲観的に捉えやすく、関係の良い面よりも自分のマイナス面ばかりが目に入る傾向があります。

躁状態では極端な判断や距離の取り方が出やすい

一方で、躁状態のときにも「別れ」を口にすることがあります。
気分が高揚して万能感が増す躁状態では、今の関係に窮屈さを感じたり、もっと自由にやれるはずだと衝動的に動いてしまうことがあります。

うつ状態の別れが自己否定から生まれやすいのに対して、躁状態の場合は現状を一気にリセットしたいという衝動が背景にあることが多い点が異なります。
どちらの場合も、気分の波が激しいときに出た言葉は、本来の判断力のもとで発せられたものとは限らないという点は共通しています。

躁鬱の人が恋人と別れたがる心の背景

双極性障害の人が恋人と距離を置きたくなる背景

別れたいという言葉の奥には、相手への拒絶だけでは説明しきれない心理が隠れていることがあります。
ここでは、別れの言葉が生まれる手前にある気持ちをもう少し掘り下げてみます。

迷惑をかけてしまうという罪悪感

双極性障害のある人の多くは、自分の気分の波が周囲に影響を与えていることを自覚しています。
特にうつ状態に入ったとき、連絡を返せない自分や約束をキャンセルしてしまう自分に対して強い罪悪感を抱きやすく、恋人を巻き込みたくないという気持ちが膨らみます

相談文にもあったように、迷惑をかけたくないからという言葉は、本人なりの誠実さの裏返しであることが少なくありません。
ただ、パートナーからすると、その誠実さが一方的な遮断として伝わってしまうのが苦しいところです。

感情の揺れ幅が大きく、昨日と今日で言うことが変わりやすい

双極性障害では、躁とうつの気分エピソードによって感情の振れ幅が非常に大きくなります。
昨日まで一緒にいたいと言っていた人が、翌日には距離を置きたいと口にする。
そうした変化が、前触れなく訪れることがあります。

こうした揺れは、本人にとってもコントロールが難しいものです。
恋人の立場で振り回されるように感じるのは当然ですが、本人も自分の感情の急変に戸惑い、疲弊していることが多いという側面があります。

本人も自分の感情の急変に戸惑い、疲弊していることが多い

人との距離を極端に取りたくなることがある

うつ状態が深まると、人と関わること自体がエネルギーを消耗する行為になります。
たとえ好きな相手であっても、連絡を見るだけでしんどい、返事をする気力がないという状態に陥ることがあります。

これは恋人のことが嫌になったわけではなく、心のエネルギーが著しく低下しているために起きる現象です。
距離を置きたいという言葉が、関係への拒絶ではなく、今の自分を守るための精一杯の訴えである場合もあります

躁鬱の彼の言葉は本心?それとも症状による言葉?

別れを告げられたとき、多くのパートナーが最も知りたいのは、その言葉が本当の気持ちなのかどうかということです。
ただ、この問いにはっきりとした答えを出すのは、実はとても難しいことです。

気分の波が強い時の重大な決断は揺れやすい

双極性障害の治療において、気分エピソード(気分の落ち込みや高ぶりが強く出ている時期)の最中に人生の重要な決断をしないことは基本的な原則とされています。
うつ状態でも躁状態でも、本来のその人が持っている現実を見極める力や判断力が低下しているためです。

つまり、気分の波が激しいときに出た別れの言葉は、安定した状態であれば選ばなかった可能性があります。
ただしこれは、その言葉に意味がないということではありません。
本人がその瞬間に本当に苦しくて、そう言わざるを得なかったという事実は残ります。

その言葉をそのまま確定させない方がよい理由

だからこそ、別れの言葉をその場で確定的に受け取る必要はありません。
同時に、症状だから本心ではないと一方的に否定してしまうのも、相手の苦しさを軽く見てしまうことにつながります。

大切なのは、白か黒かで判断しようとしないことです。
気分が落ち着いたときにしか見えてこないものがあるからこそ、今すぐ結論を出さずに曖昧さを少しだけ抱えておくという選択が、結果として関係を壊さない方向につながることがあります。

別れを告げられた側が苦しくなりやすいポイント

ここまでは相手側の心理を整理してきましたが、別れを言われた側にも大きな心の負荷がかかっています。
自分の気持ちにも目を向けてみることが、このあとの判断にとって欠かせないステップです。

見捨てたくない気持ちと限界の間で揺れる

双極性障害の恋人を支えたいという気持ちは、とても自然で尊いものです。
しかし、その気持ちだけで関係を続けようとすると、自分自身が少しずつすり減っていくことがあります。

躁鬱の彼氏を支えたいけど、しつこいと言われてしまった。
離れたくないけど、近づくほど拒まれる。
こうした矛盾の中にいると、どちらに進んでも苦しいという感覚が生まれやすくなります。

恋人を大切に思うことと、自分の心身を守ることは対立するものではなく、両方とも同じくらい重要なことです。

自分が悪かったのではと責め続けやすい

相手が病気を抱えている場合、私の接し方がまずかったのではないか、もっと上手にできたのではないかと、自分を責め続けてしまうことがよくあります。
特に、支えようとした行動が拒まれたとき、その傾向は強くなります。

けれど、双極性障害の気分の波は、パートナーの対応の良し悪しとは関係なく起きるものです。
あなたがどれほど完璧に対応したとしても、うつ状態に入れば彼は同じように距離を取ろうとした可能性があります。

たとえばそばにいようとした言葉や行動が、結果的に相手の気分の変化と重なってしまうことがあります。
親への連絡を見られてしまったような場面でも、あなたが心配から動いたこと自体は責められるものではありません。双極性障害の気分の波は、きっかけの大小に関わらず起きるものです。

別れるべきか迷うときに考えるべき判断軸

別れるか、待つか。
この問いに正解はありませんが、考えを整理するための軸をいくつか挙げてみます。

1. 気分が落ち着いた時に話し合いができるか

双極性障害では、気分の波が落ち着いた通常状態のときに冷静な対話ができるかどうかが、関係を続けるうえでの大きな分かれ目になります。
波が収まったあとに、お互いの気持ちや距離感について率直に話し合えるなら、関係を再構築できる余地はあります。

通常の状態のときに、連絡の頻度や会い方について事前にルールを共有できていると、次の波が来たときの混乱を和らげやすくなります。

逆に、落ち着いた時期であっても対話が成り立たない場合は、気分の波とは別のところに課題がある可能性も考えられます。

2. 治療や生活リズムに向き合う姿勢があるか

双極性障害は、服薬の継続や生活リズムの安定が症状のコントロールに大きく関わる疾患です。
本人が治療を継続する意思を持っているか、通院や服薬に前向きかどうかは、パートナーとして長期的に関わる際の現実的な指標になります。

支える側がどれほど頑張っても、本人が治療から離れてしまうと、気分の波はより激しくなりやすく、関係の維持は難しくなっていきます。
これは本人を責めるためではなく、お互いが消耗しないために必要な視点です。

3. あなた自身の安心や尊厳が守られているか

支えることに集中しすぎると、自分自身の気持ちが後回しになりやすくなります。
しかし、パートナーの安心や尊厳が守られていない関係は、どちらにとっても健全とはいえません。

常に相手の気分に振り回されて不安が消えない、自分の生活が成り立たなくなっている、相手の言動に傷ついているのに我慢し続けている。
そうした状態が続いているなら、今の関係のかたちが本当に自分にとって持続可能なものかどうか、立ち止まって考えてみることも大切です。

躁鬱彼氏のために、今すぐできる関わり方

最後に、今この瞬間にできることを整理します。
大きな決断ではなく、小さな行動の方向性として参考にしてみてください。

引き止めるよりも、いったん距離を置くことが大切な場合もある

別れを切り出された直後に何度も連絡をしたり、強く引き止めようとすることは、うつ状態の相手にとって大きな負荷になることがあります。
本人が距離を求めているときに無理に近づこうとすると、かえって相手を追い詰めてしまう場合があるのです。

いったん距離を置くことは、相手を見捨てることとは違います
相手が安心して治療に集中できる時間を確保するという意味で、距離を取ること自体がひとつの支え方になり得ます。

距離を置いたあと、相手から連絡が来るケースもある

気分の波が落ち着いてきたタイミングで、相手の方から連絡が来るケースは実際にあります。
うつ状態のときに発した別れの言葉を、本人が後から振り返って後悔するということも珍しくありません。

ただし、それを期待して待ち続けることが自分を苦しめるなら、待つことだけが正解ではありません。
連絡が来たときに改めて関係を考える余地を残しつつ、今は自分自身の生活や気持ちを立て直すことに意識を向けてよいのです。

またどのくらい待てばよいかという目安は人によって異なりますが、双極性障害の気分エピソードが落ち着くまでには数週間から数ヶ月かかることが多く、半年以上の時間軸で考えることはむしろ現実的です。ただし、待つことを自分に課すのではなく、自分の生活を続けながら余白を残しておくという感覚の方が、長期的に自分を傷めにくくなります。

危険サインがある時は自分自身だけで抱えない

もし相手が死にたいという言葉を口にしていたり、自傷の傾向が見られる場合は、恋人という立場だけで対応しようとしないでください。
そうしたサインは専門的な対応が必要な状況であり、一人で背負おうとすることは、あなた自身にも大きな負荷がかかります。

相手の主治医や家族、地域の相談窓口など、頼れる先を知っておくだけでも心の余裕は違ってきます
相手のことが心配なときほど、自分だけで抱え込まず、専門家の力を借りるという選択を持っておいてほしいと思います。

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この記事の監修者

石川蓮(公認心理師)

公認心理師、行動心理士。
1997年生まれ。北里大学・大学院卒業。その後、公認心理師と行動心理士の資格取得。
在学中は高齢者や生産人口の色覚異常や朝型夜型特性が睡眠に与える効果等の研究を行う。
大学院卒業後、大学病院附属の研究所にてカウンセリングやデータマネジメント担当として勤務。
また、都立高校の心理学講師としても勤務。
「心の悩みを持つ方のそばに寄り添う」をモットーに業務遂行しております。

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