母親に優しくできないのはインナーチャイルドのせい?冷たくしては罪悪感ばかり

監修者の石川蓮(公認心理師)先生より

母親に優しくできないと、自分を薄情な人間みたいに感じてしまいますよね。

でも、その苦しさ自体が、本当は歩み寄りたい気持ちの裏返しだったりします。

インナーチャイルドという言葉に飛びつく前に、今の自分がどれだけ疲れているか、まずそこから見てあげてほしいんです。

アバター画像

40代女性(会社員)

実家に電話するたび、母の愚痴が始まると急に息苦しくなります。

早く切りたくて、つい素っ気ない返事をしてしまうんです。

年老いていくのは分かっているのに、優しくできない自分が情けなくて。

インナーチャイルドのせいなのか、ただ私が薄情なだけなのか、分からなくなっています。

ココラボ相談室からの回答

ご相談ありがとうございます。

優しくしたいのにできなくて、そのたびに自分を責めてしまう。

そのループの苦しさは、あなたが薄情だからではなく、心のどこかがまだ癒えていないサインなのかもしれません。

この記事では、母親に優しくできない心の仕組みをインナーチャイルドという言葉から整理しながら、許せない気持ちとの付き合い方まで、一緒に見ていきます。

母親に優しくできないと悩む、その罪悪感のこと

まずは、優しくできない自分を責めてしまう気持ちから、少しずつほどいていきます。

ここでは、あなたが感じている罪悪感を、性格の問題として片づけないところから始めます。

答えを急がず、今の心の状態をそのまま眺めてみましょう。

「冷たい娘」ではないと言える理由

優しくしたいのにできない、と悩むこと自体が、本当は歩み寄りたい気持ちの表れです。

心から冷淡な人は、そもそもこの悩みで検索したりしません。

心理学では、こうした心の引き裂かれを認知的不協和と呼びます。

親は大切にすべきという価値観と、実際には優しくできないという現実がぶつかると、強いストレスが生まれます。

そのズレを埋めようとして、自分を責めたり母を避けたりしてしまうのです。

つまり罪悪感は、あなたが冷たい証拠ではなく、大切にしたい気持ちがまだ残っている証拠でもあります。

大切にしたい気持ちと優しくできない現実の板挟みが、強い罪悪感につながることがあります。
大切にしたい気持ちと優しくできない現実の板挟みが、強い罪悪感につながることがあります。

会うと疲れて、後悔ばかり残る心理

母と話すと、なぜかイライラして、あとから「またやってしまった」と落ち込む。

この繰り返しに、心当たりのある人は多いはずです。

イライラは、長いあいだ抑えてきた本音のサインであることがあります。

たとえば同じ話を繰り返されて苛立つとき、その奥には自分の話を聞いてもらえなかったという昔の記憶が反応している場合があります。

疲れてしまうのは、あなたの我慢が足りないからではありません。

会うたびに古い感情が刺激され、心のエネルギーを使い果たしているのです。

母と話すたびに古い感情が刺激されると、短い会話でも心のエネルギーを大きく使います。
母と話すたびに古い感情が刺激されると、短い会話でも心のエネルギーを大きく使います。

年老いた母への焦りが罪悪感を強める

母が年を重ねるほど、元気なうちに優しくしなければ、という焦りが強くなります。

残された時間を思うと、冷たくした一日がひどく重く感じられますよね。

ただ、焦りに追われて無理に優しくしようとすると、反動でまた消耗してしまいます。

時間の限りへの不安と、今日の自分にできることは、いったん切り分けて考えるほうが、心は落ち着きやすくなります。

アバター画像

監修者の石川蓮(公認心理師)先生に相談してみませんか?

インナーチャイルドと母親に優しくできない心の仕組み

ここからは、優しくできない心の仕組みを少しずつ解きほぐしていきます。

インナーチャイルドという言葉を入り口にしながら、その言葉が何を指すのかも正直にお伝えします。

仕組みが見えてくると、自分を責める力は少しゆるみます。

インナーチャイルドという言葉の位置づけ

インナーチャイルドとは、幼少期から大人になるまでについた心の傷や、満たされなかった思いを指す言葉です。

アメリカの心理学者ジョン・ブラッドショーが、満たされなかった子ども時代の自分として広めた考え方が知られています。

ここで押さえておきたいのは、インナーチャイルドは医学的な診断名ではないということです。

心の傷を扱いやすくするためのイメージであって、これがあるから病気、というものではありません。

言葉に飛びつきすぎず、あくまで自分の状態を見つめる手がかりとして使っていきましょう。

インナーチャイルドは診断名ではなく、心の傷や満たされなかった思いを見つめる手がかりです。
インナーチャイルドは診断名ではなく、心の傷や満たされなかった思いを見つめる手がかりです。

未完了の感情と防衛反応のメカニズム

幼い頃に受け止めてもらえなかった悲しみや怒りは、消えずに心の奥へ沈んでいきます。

これが未完了の感情として残り、母と接したときに揺り起こされます。

愛着理論では、子どもは親を安全基地にしながら育つとされます。

その安全基地がぐらついた経験があると、大人になっても、また傷つくかもしれないという防衛反応が働きます。

優しくしようとすると体がこわばる。

それは意識して選んでいるのではなく、心が自分を守るために作った自動的な反応なのです。

母の愚痴の聞き役だった役割逆転

子どもの頃、母の愚痴や不安をずっと聞く側だった、という人もいます。

本来は守られる立場の子どもが親を支える役に回ることを、役割逆転と呼びます。

こうした育ちでは、自分の感情をあとまわしにする癖がつきやすくなります。

大人になって母と向き合うと、その頃の疲れがよみがえり、優しさより先に消耗が来てしまうのです。

子どもの頃から母の聞き役を続けると、自分の感情を後回しにする疲れが今にも残りやすくなります。
子どもの頃から母の聞き役を続けると、自分の感情を後回しにする疲れが今にも残りやすくなります。

傷の背景になりやすい母親の傾向

心の傷の背景には、母親側の関わり方が影響していることもあります。

過干渉、情緒不安定、子どもに同情を求める、束縛が強い、といった傾向がたびたび語られます。

ただし、これは母を悪者にするための分類ではありません。

あくまで傾向として眺め、自分の何が刺激されるのかを知る材料にとどめておきましょう。

母親を許せなくても大丈夫という考え方

この章では、許せない気持ちとの付き合い方を扱います。

許すことをゴールに置くと、かえって苦しくなることがあるからです。

結論を出す前に、少し肩の力を抜いて読んでみてください。

許す・許さないは二択ではない

母を許さなければ前に進めない、と思い込む必要はありません。

今は憎いのなら、無理に許さなくていい。

いつか許したくなったら、そのとき許してもいい。

許す・許さないを固定した二択にせず、どちらでもいいと自分に許可する

その揺れをそのまま認めることが、心と行動のズレを小さくしていきます。

母を許すかどうかを急いで決めず、揺れる気持ちをそのまま認めてもかまいません。
母を許すかどうかを急いで決めず、揺れる気持ちをそのまま認めてもかまいません。

「優しくしたい」気持ちの中身を点検する

優しくしたい、という願いの中身は、ひとつではありません。

親孝行すべきという社会通念から来ることもあれば、愛されたかった飢餓感が形を変えていることもあります。

その願いが、純粋な労りなのか、認められたい気持ちなのか。

一度立ち止まって点検すると、無理に優しさを作らなくてもいい場面が見えてきます。

アバター画像

監修者の石川蓮(公認心理師)先生に相談してみませんか?

自分でできるインナーチャイルドの癒し方と距離の取り方

ここでは、家でできる小さなワークと、母との距離の設計を紹介します。

どれも、優しくできるようになることではなく、自分の心の安全を守ることを目的にしています。

できそうなものだけ、ひとつ試すつもりで読んでください。

感情を言葉にする・手紙を書くワーク

まず、当時の自分がどんな気持ちだったかを、言葉にしてみます。

ノートに書き出す、幼い自分に宛てて手紙を書く、といった方法があります。

寂しかったね、よく我慢したね、と昔の自分に声をかけるつもりで書いてみる。

誰にも見せなくていいので、きれいにまとめる必要はありません。

感情を書き、幼い自分へ言葉を向ける手紙は、誰にも見せず自分のためだけに使えます。
感情を書き、幼い自分へ言葉を向ける手紙は、誰にも見せず自分のためだけに使えます。

つらくなったら中断してよい安全ルール

過去に触れる作業は、ときに強い感情を呼び起こします。

涙が止まらない、動悸がする、記憶が生々しくよみがえる。

そんなときは、すぐに中断してかまいません

安全のために、体が落ち着く時間帯に、短い時間でおこなうのがおすすめです。

つらさが強いときは、一人で掘り下げず、専門家と一緒に進めるほうが安心できます。

頻度・話題・時間で決める3つの距離

距離を取ることは、母を見捨てることではありません。

自分を守るための、現実的な工夫です。

  • 頻度:会う回数や連絡の間隔を、自分の体調に合わせて決める
  • 話題:愚痴や比較など、消耗しやすい話は深追いしない
  • 時間:長電話を避け、切り上げる区切りを先に決めておく

優しさの量ではなく、自分の安全を確保できているかを基準にすると、線引きがしやすくなります。

母との距離は、連絡の頻度、話す話題、一緒にいる時間の三つから具体的に調整できます。
母との距離は、連絡の頻度、話す話題、一緒にいる時間の三つから具体的に調整できます。

癒しが進むと変わっていくこと

心の整理が進むと、過去の母と今の母を分けて見られるようになっていきます。

同じ話をされても、前ほど強く揺れなくなった、と感じる人もいます。

ただ、変化のスピードには個人差があり、必ずこうなると約束できるものではありません。

うまくいかない時期があっても、それはあなたの努力不足ではないのです。

ひとりで抱えず専門家に相談する目安

最後に、自分だけで抱えないほうがいい状態について整理します。

セルフケアには限界があり、誰かを頼ることは弱さではありません。

迷ったときの目安として、読んでおいてください。

相談を考えたいサインのチェック

次のような状態が続くときは、相談を考えるタイミングかもしれません。

  • 母を思うと動悸や涙が止まらない状態が、二週間以上続く
  • 眠れない、食欲がないなど、生活に支障が出ている
  • 自分を強く責める考えから、抜け出せなくなっている

こうしたサインは、心が限界に近づいている合図です。

がんばりで乗り切ろうとせず、早めに手を借りてください。

心身のつらさが続くときは、一人で抱えず専門家と一緒に気持ちを整理できます。
心身のつらさが続くときは、一人で抱えず専門家と一緒に気持ちを整理できます。

カウンセリング・医療機関の選び方

気持ちの整理が中心なら、公認心理師などによるカウンセリングが選択肢になります。

眠れない、気分の落ち込みが強いなど、体の不調が続くときは、心療内科や精神科への相談も考えてみてください。

公的な窓口を頼る方法もあります。

厚生労働省のまもろうよ こころでは、電話やSNSで使える相談先がまとめられています。

どこに相談するか迷ったら、いちばん話しやすそうな入り口をひとつ選べば十分です。

優しくできない自分を抱えたまま、少しだけ誰かに預けてみる。

その一歩が、あなた自身の呼吸を、少し楽にしてくれるはずです。

アバター画像

監修者: 石川蓮(公認心理師)

公認心理師、行動心理士。1997年生まれ。北里大学・大学院卒業。その後、公認心理師と行動心理士の資格取得。
在学中は高齢者や生産人口の色覚異常や朝型夜型特性が睡眠に与える効果等の研究を行う。
大学院卒業後、大学病院附属の研究所にてカウンセリングやデータマネジメント担当として勤務。また、都立高校の心理学講師としても勤務。
「心の悩みを持つ方のそばに寄り添う」をモットーに業務遂行しております。

この記事をシェアする

cotreeは日本最大級の
オンラインカウンセリングサービス

登録しておけば、
頼りたいときにすぐ相談の1歩を踏み出せます!

公認心理師が
あなたの一歩を支えます

相談は無料です。
お気軽にお問い合わせください。

公認心理師がサイト上で回答します

公認心理師にオンラインで相談

カウンセリングの詳細