自他境界が曖昧な母親とはどう距離を取ればいいですか?罪悪感で苦しいです

監修者の石川蓮(公認心理師)先生より

母親と距離を取りたいと思うだけで、胸が締めつけられる方は多いですね。

その苦しさは、あなたが冷たいからではありません。

近い関係ほど、どこまでが自分でどこからが母親なのか、線が引きにくくなるものなんです。

まずは、しんどいと感じている自分の気持ちに、そっと目を向けてみてください。

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30代女性(会社員)

実家を出て一人暮らしをしていますが、母から毎日のように電話がかかってきます。

出ないと不機嫌になるので、疲れていても結局折り返してしまうんです。

少し距離を置きたいと思うたび、母を突き放す冷たい娘なのかと落ち込みます。

ココラボ相談室からの回答

ご相談ありがとうございます。

母親のことを考えると気持ちが重くなる。

それでも突き放せない自分に、後ろめたさを覚える方は少なくありません。

この記事では、自他境界という視点から母親との関係を見つめ直し、罪悪感とどう付き合いながら距離を取るかを一緒に考えます。

答えを急がず、今の自分の状態に気づくところから始めてみましょう。

母親といると消耗してしまう自分を責めていませんか

母親と過ごした後、どっと疲れが出ることはないでしょうか。

その疲れは、わがままや冷たさから来るものではありません。

まずは、今のあなたの状態を静かに見つめるところから始めます。

母がしんどいのは冷たさのせいではない

母親のことを重く感じる自分を、親不孝だと責めていませんか。

育ててくれた人だからこそ、距離を置きたいと思うたびに後ろめたさがついて回ります。

けれど、しんどさを感じること自体は、心が出している自然な反応です。

近い相手であるほど、その言葉は簡単に自分の内側まで届いてしまいます。

通りすがりの人の一言は受け流せても、母親の言葉は長く胸に残る。

その差は、あなたが弱いからではなく、関係が近いことの裏返しなのです。

同じ苦しさを抱える人は少なくない

母親との関係に悩んでいるのは、あなただけではありません。

ネット上の相談でも、母の機嫌に振り回されて消耗したという声は数多く見られます。

ある人は、母との旅行中ずっと機嫌をうかがい続け、一人になれた数分の散歩でようやく息がつけたと書いていました。

母の機嫌を自分の責任として背負い続けると、心は少しずつ消耗していきます。
母の機嫌を自分の責任として背負い続けると、心は少しずつ消耗していきます。

自分を責める前に、その消耗がどこから来ているのかを、一緒にほどいていきましょう。

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自他境界が曖昧な母親とはどんな状態か

母親との関係を考えるとき、自他境界という言葉が手がかりになります。

ここでは、その意味と、母子でとくに境界が曖昧になりやすい背景を整理します。

専門用語は、あなたの状況を理解するための道具として使っていきます。

自他境界とじぶんゾーンの意味

自他境界とは、ここまでが自分でここからが他者、という心と体の境目のことです。

バウンダリーとも呼ばれ、自分の感情や考え、責任と、相手のものとを分ける見えない線を指します。

公認心理師による解説では、体・秘密・持ち物・感情や思考・人としての権利など、自分だけの領域を「じぶんゾーン」として捉える考え方も紹介されています。

この線が引けていると、母が不機嫌でも、それは母の側の問題だと考えやすくなります。

母子で境界が曖昧になりやすい理由

赤ちゃんは、母親と自分を同じ存在のように感じる時期から育ちます。

発達心理学では、これを母子一体感と呼び、そこから少しずつ自分は自分、母は母と切り離していく過程を分離個体化と言います。

この分離がゆっくりとしか進まなかった場合、大人になっても母との境目が曖昧なまま残ることがあります。

母の感情と自分の感情の間に見えない線を意識することが、自他境界を整える第一歩です。
母の感情と自分の感情の間に見えない線を意識することが、自他境界を整える第一歩です。

曖昧さは、あなたの努力不足ではなく、育つ過程で線を引く練習ができなかっただけとも言えます。

過干渉や愚痴の聞き役という侵害の形

境界の曖昧さは、日常の具体的な場面に表れます。

進路や交友関係への口出し、予定の細かな確認、そして母の愚痴や父への不満の聞き役にされること。

こうした関わりは、心配や愛情という優しい言葉で差し出されることが多いものです。

好意から出ていても、あなたが嫌だと感じるなら、それは境界を越えられているサインになります。

祖母から続く境界の曖昧さ

境界の曖昧さは、母親一代だけの問題とは限りません。

母もまた、自分の母親から境界を尊重されずに育ったのかもしれない、という見方があります。

臨床の現場では、祖母から母、母から子へと関わり方の癖が受け継がれることが語られています。

連鎖に気づくことは母を責めるためではなく、自分の代でその癖を手放すための一歩です。

境界が曖昧なまま育つと自分に起きること

境界が曖昧なまま大人になると、対人関係にいくつかの影響が出やすくなります。

ここでは、その表れ方と、母を悪者にしないための見きわめ方を扱います。

大切なのは、正しさの判定ではなく、あなたの消耗に目を向けることです。

NOと言えず顔色をうかがってしまう

境界が薄いと、嫌なことを嫌と言えなくなりがちです。

断ると嫌われる、悲しませると感じて、本当は乗り気でない誘いにも応じてしまう。

断れず緊張する反応は性格の欠点ではなく、関係の中で身につけてきた反応かもしれません。
断れず緊張する反応は性格の欠点ではなく、関係の中で身につけてきた反応かもしれません。

その積み重ねは、自己肯定感の低下や、いつも人の顔色を気にする癖につながります。

当てはまるものがあっても、それは性格の欠点ではなく、身につけてきた反応だと捉えてみてください。

母を「毒親」と決めつけないという視点

情報を調べるうちに、母は毒親だったのかと考える人もいます。

その言葉で気持ちが整理されることもありますが、毒親は診断名ではありません。

母を悪者にするか、しないかの二択で考えると、かえって苦しくなることがあります。

母がどんな人かより、今の関係が自分にどんな影響を与えているかで見ていくほうが、判断はぶれにくくなります。

侵害かどうかは自分の消耗で見きわめる

境界を越えられているかは、母の意図では測れません。

母に悪気があるかどうかより、あなたが会った後にどれだけ消耗しているかを手がかりにします。

会った翌日に寝込む、着信を見て動悸がする、数日気分が沈む。

そうしたサインが続くなら、今の距離が自分に合っていない合図として受け止めてよいのです。

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罪悪感をやわらげて母親と距離を取る方法

距離を取ろうとすると、多くの人が罪悪感につまずきます。

ここでは、その罪悪感の意味を捉え直し、無理のない距離の取り方を考えます。

一度にすべてを変えなくてかまいません。

返信の時期、話題、会う回数を選ぶだけでも、関係の距離は少しずつ調整できます。
返信の時期、話題、会う回数を選ぶだけでも、関係の距離は少しずつ調整できます。

罪悪感は間違いのサインではない

距離を置こうとしたとき湧く罪悪感を、間違いの証拠だと感じていませんか。

実際には、長く担ってきた役割から外れようとするときに鳴る、警報のようなものです。

罪悪感が出るのは、あなたが冷たいからではなく、これまで真面目に応え続けてきたからです。

その感情はあってよいものとして、抱えたまま小さく動き出せば十分です。

連絡や話題で距離はゼロか百かにしない

距離を取るというと、絶縁のような極端な形を思い浮かべがちです。

けれど、選べる幅はもっと細かくあります。

毎日の電話を数日に一度にする、返信を翌日に回す、話す話題を天気や体調にとどめる。

距離はゼロか百かではなく、連絡の頻度や時間、話題、会う回数で少しずつ調整できます。

「わたしはわたし」を伝える短い言葉

その場で長く説明しようとすると、かえって言い負かされてしまうことがあります。

用意しておくのは、境界を思い出すための短い一言で十分です。

心の中で、わたしはわたし、母は母、と唱えるだけでも、線を引き直す助けになります。

相手に伝えるなら、それは今は決められない、また連絡するね、と穏やかに区切る言い方から始めてみてください。

つらさが続くときの相談先とセルフケア

ここまでの内容を試しても、つらさが引かないことはあります。

寝込む、動悸、眠れないといったサインが続くときは、外部に相談してよい段階です。
寝込む、動悸、眠れないといったサインが続くときは、外部に相談してよい段階です。

その場合は、一人で抱え込まずに外の力を借りる段階かもしれません。

最後に、注意したいサインと相談先の選択肢を整理します。

寝込む・動悸などのSOSサイン

心と体は、限界が近いときにサインを出します。

母と関わった後に寝込む、着信で動悸がする、眠れない、仕事や家庭に支障が出る。

こうした状態が長く続くときは、我慢の量が増えすぎている合図です。

消えてしまいたい気持ちが出てきたときは、緊急性の高いサインとして受け止めてください。

心療内科やカウンセリングという選択肢

つらさが続くなら、心療内科や精神科、カウンセリングに相談する選択肢があります。

話し合いだけでは解きほぐせない関係を、第三者と一緒に見直す場になります。

国が案内しているこころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)のような公的な窓口も、最初の一歩として使えます。

金銭の搾取や暴力、脅しがある場合は、行政や法律の相談先も選択肢に入れてよいものです。

距離の取り方に唯一の正解はなく、あなたが少し楽に呼吸できる形を選んでいけば大丈夫です。

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監修者: 石川蓮(公認心理師)

公認心理師、行動心理士。1997年生まれ。北里大学・大学院卒業。その後、公認心理師と行動心理士の資格取得。
在学中は高齢者や生産人口の色覚異常や朝型夜型特性が睡眠に与える効果等の研究を行う。
大学院卒業後、大学病院附属の研究所にてカウンセリングやデータマネジメント担当として勤務。また、都立高校の心理学講師としても勤務。
「心の悩みを持つ方のそばに寄り添う」をモットーに業務遂行しております。

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