先延ばし癖は完璧主義のせいでしょうか、締め切り直前まで動けない自分が怖いです

監修者の石川蓮(公認心理師)先生より

締め切りが迫るほど手が止まる。それを『完璧主義のせい』の一言で片づけると、自分を責める材料が増えてしまうんですよね。

失敗が怖くて動けないのか、ただ疲れがたまっているのか、止まる理由は人によって違います。

直そうと焦る前に、まずそこを見分けるところから始めてみませんか。

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20代女性(会社員・公務員)

資料づくりをいつも締め切り直前まで抱え込んでしまいます。完璧に仕上げたい気持ちはあるのに、その分だけ手が止まって、気づけば前の晩に泣きながら片づけています。

これは完璧主義のせいなのか、ただ怠けているだけなのか、自分でもよく分からなくなってきました。

ココラボ相談室からの回答

ご相談ありがとうございます。

締め切りが近づくほど動けなくなる自分を、何度も責めてこられたのだと思います。完璧に仕上げたい気持ちと、手が止まってしまう現実の間で、ずいぶん消耗されてきたのではないでしょうか。

先延ばし癖が完璧主義のせいなのかどうかを一度落ち着いて整理し、自分を痛めつけずに動くための工夫を、順を追って見ていきます。

先延ばし癖は完璧主義のせいだと感じる自分を受け止める

締め切りのたびに動けなくなる。その繰り返しを、意志の弱さとして片付けてきた方は多いです。まずは、その苦しさをそのまま見るところから始めます。

締め切り直前まで動けない自分を責めていませんか

やらなきゃいけない。頭では分かっている。それでも手が動かない。

この状態を、怠けや甘えと決めつける必要はありません。

先延ばしは、時間の使い方が下手なのではなく、目の前の不快な気持ちをどう扱うかの問題だと考えられています。心理学では、先延ばしを「あとで困ると分かっていながら、やるべきことを自分から遅らせること」と説明します。

課題に向かおうとした瞬間、退屈や不安、うまくできない恐れが胸をよぎる。その感情から今すぐ逃れるために、脳は「今はやらない」を選びます。

つまり、サボりたくて止まっているのとは違います。動こうとするたびに湧く落ち着かなさから、とっさに距離を取っているだけの状態です。

不安から着手を避けると一時的に安心できるため、反応が繰り返されやすくなります。
不安から着手を避けると一時的に安心できるため、反応が繰り返されやすくなります。

「完璧主義だから」に安心と不安が両方ある

自分の先延ばしを完璧主義のせいだと考えると、少しほっとする面があります。

だらしないからではない。ちゃんとやりたいからこそ動けない。そう思えると、責める気持ちが和らぎます。

一方で、心のどこかに引っかかりも残ります。完璧主義という言葉が、動けない理由の言い訳になっていないか。本当は別の何かがあるのではないか。

心理学には、セルフ・ハンディキャッピングという考え方があります。あらかじめ言い訳を用意して、失敗したときの痛みを小さくしておく心の働きです。完璧主義という説明にも、少し似た面があります。

完璧主義という説明に安心しつつ迷うのも、自分を理解しようとする自然な反応です。
完璧主義という説明に安心しつつ迷うのも、自分を理解しようとする自然な反応です。

ただ、それは責められるようなことではないのです。どちらの気持ちも、あなたが自分を理解しようとしているサインです。両方を抱えたままで構いません。

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先延ばし癖と完璧主義の関係を整理する

ここからは、両者のつながりを少し落ち着いて見ていきます。完璧主義が原因という見方と、そうではないという見方の両方に触れます。そのうえで、あなたの実感に近い線を探します。

完璧主義と先延ばしに相関がないという研究もある

意外に思われるかもしれません。完璧主義と先延ばしはあまり関係しない、という指摘もあります。

先延ばし研究で知られるピアーズ・スティール氏は、両者の結びつきは弱いと述べています。むしろ深く関わるのは、自信のなさや、目の前の刺激への流されやすさだと言われてきました。

とはいえ、これはあなたの実感を否定するものではありません。完璧主義そのものというより、その裏にある失敗への恐れが動きを止めている、と読み替えると腑に落ちやすいです。

完璧主義のせいだと決めて終わらせず、その一歩奥にある恐れに目を向ける。そこが、自分を責めずに整理していく入口です。

先延ばしを生むのは「理想追求型」の完璧主義

完璧主義とひとことで言っても、その中身は一つではありません。

計画を綿密に立てて、むしろ早めに終える人もいます。理想の形にこだわって、手がつけられなくなる人もいます。

完璧主義にも、早めの行動を支える面と、高い理想で着手を止める面があります。
完璧主義にも、早めの行動を支える面と、高い理想で着手を止める面があります。

先延ばしにつながりやすいのは、後者の理想を追い求めるタイプです。頭の中の完成形が高すぎて、今の自分では届かない。だから最初の一歩が遠のきます。

さらにこのタイプは、時間のかかる大きな仕事を後ろに回し、すぐ達成感が得られる小さな作業に手が伸びます。調べ物やメール整理で一日が終わり、肝心の課題は残る。そんな覚えはないでしょうか。

もしあなたが「ちゃんと決めてからでないと始められない」と感じているなら、このタイプに近いのかもしれません。

動けないのは時間管理より失敗への恐れ

先延ばしを直そうとして、まず手帳やアプリに手を伸ばす人は多いです。

けれど、うまくいかないこともあります。動けない本当の理由が、時間の管理ではなく気持ちの側にあるからです。

着手した瞬間、「完璧にできないかもしれない」という恐れと向き合うことになります。始めなければ、その恐れは眠ったまま。未着手でいる間は、まだ失敗していないという短い安心が手に入ります。

人の脳は、遠い先の安心より、今すぐの安心を大きく感じ取るようにできています。だから、締め切りが迫ってやっと動けるのも、意志が弱いからではありません。目の前に迫って初めて、恐れより焦りが勝つからです。

始めない間の短い安心を選ぶと、締切が迫って焦りが恐れを上回るまで動きにくくなります。
始めない間の短い安心を選ぶと、締切が迫って焦りが恐れを上回るまで動きにくくなります。

先延ばしは、この安心をとっさに選んでしまう反応とも言えます。

基準を下げても動けないなら別の理由も考える

一度、試してほしいことがあります。

今日ひとつだけ、六割の出来でいいから終わらせて出してみる。それで動けたなら、あなたの先延ばしは完璧主義寄りの可能性が高いです。

反対に、基準を下げても、最小の一歩にしても、どうしても動けない。そういう日が続くときは、完璧主義だけが理由とは限りません。

気分の落ち込みや、集中を保ちにくい特性など、別の背景が重なっているときもあります。とくに子どもの頃から始められない困りごとが続いている。そんな場合は、そこも含めて見たほうが自然です。

基準を下げても動けないときは、完璧主義だけでなく疲労や落ち込みも含めて見ていきます。
基準を下げても動けないときは、完璧主義だけでなく疲労や落ち込みも含めて見ていきます。

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やり方を増やす前に、状態そのものを見てあげる。そのほうが、遠回りに見えて近道になります。

責めずに動くための具体的な工夫

続いては、実際に手を動かすためのささやかな工夫を並べます。どれも気合いではなく、始めるハードルを下げるためのものです。全部やろうとせず、今できそうなものを一つだけ選んでみてください。

2〜3分だけ手をつけてみる

やる気が出てから始めようとすると、その瞬間はなかなか訪れません。やる気は、動き出したあとから追いついてくることが多いからです。

おすすめは、2〜3分だけと決めて触ってみることです。資料なら、ファイルを開いてタイトルを一行打つ。メールなら、宛先だけ入れる。

小さく手を動かすと、脳が少しずつ乗ってきて、続きに進みやすくなります。作業興奮と呼ばれる働きです。

ファイルを開いて一行だけ書き、続けるかは後で選ぶと着手の重さを下げられます。
ファイルを開いて一行だけ書き、続けるかは後で選ぶと着手の重さを下げられます。

それ以上できなくてもかまいません。小さすぎるくらいの一歩が、止まっていた手を動かすきっかけになります。

「7割で出す」が怖いときの考え方

完璧主義の人にとって、七割で出すのは想像以上に勇気がいります。中途半端なものを見せたら、評価が下がるのではと感じるからです。

そこで、提出の前に今日のOKラインを先に決めておくとラクになります。見出しを三つと箇条書きを三行まで、と量で区切ってみる。

すると、どこまでやれば終わりかがはっきりします。終わりが見えると、抱えていた重さが少しほどけます。

七割は手抜きではありません。いったん人に見せて、そこから直していくための土台です。

締め切りを自分の中で早めに区切っておく

本当の締め切りだけを見ていると、直前まで緊張が高まりません。そこで、自分用の締め切りを二日ほど前に置いてみます。

手帳やカレンダーに、その日付を書き込んでおく。水曜の午後に最初の三ページ、というところまで決めておくと動きやすいです。

これは実施意図(if-thenプランニング)と呼ばれる工夫です。心理学者ゴルウィツァーの研究で、行動の始めやすさを高めると報告されています。

早めの期日と実行する時間を先に決めると、締切間際の焦りだけに頼らず動きやすくなります。
早めの期日と実行する時間を先に決めると、締切間際の焦りだけに頼らず動きやすくなります。

間に合わないと早めに伝える

どうしても間に合わないと感じたら、抱え込まずに早めに伝えるほうが結果的に楽です。ぎりぎりまで粘られるより、一週間前に相談されるほうが、相手も段取りを組みやすいはずです。

「ここまでは出せます、この部分だけ日をもらえませんか」と、交渉のつもりで話してみる。甘えのように聞こえるとしても、これは自分と相手の間に線を引く技術です。

一人で全部を背負い込まない。その選択が、次の先延ばしを減らしてくれます。

現状とできる範囲を共有して早めに相談することは、一人で抱え込まないための技術です。
現状とできる範囲を共有して早めに相談することは、一人で抱え込まないための技術です。

動けなかった自分を責めない

先延ばしをした後、「またやってしまった」と自分を責める。その自責が、次に動けなくなる燃料になってしまいます。

ある研究では、先延ばしをした自分を許した学生ほど、その後の先延ばしが減ったと報告されています。責めることと、繰り返さないことは、別のものです。

できなかった日も、今からひとつやれた日も、同じ自分の歩みとして置いておく。そのくらいの距離感が、長い目で見ると支えになります。

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先延ばし癖と完璧主義を一人で抱えず相談してもよいサイン

最後に、自分だけで見なくてよい場面について触れておきます。工夫を重ねても苦しさが続くなら、それは弱さではなくサインです。

気分の落ち込みや不眠が続いているとき

工夫をいくつか試しても、手がまったく動かない日が続く。そんなときは、少し立ち止まってほしいです。

眠れない、食欲が変わった、気分の落ち込みが二週間以上続いている。こうしたサインが重なるなら、先延ばしの背景に別の要因が隠れている場合もあります。

無理に原因を突き止めようとしなくて大丈夫です。まずは、疲れている自分を休ませることを優先してください。それでも重さが続くなら、専門家と一緒に見てみる価値があります。

苦しさが続くときは、まず休み、信頼できる人や専門家と一緒に状態を見てかまいません。
苦しさが続くときは、まず休み、信頼できる人や専門家と一緒に状態を見てかまいません。

誰かと一緒に見るという選択肢

テクニックを何度試しても動けないなら、必要なのは新しいやり方ではなさそうです。ひとりで見るには、荷物が重くなりすぎているだけのこともあります。

公的な相談先として、厚生労働省のこころの耳では、働く人の悩みの相談窓口を案内しています。カウンセリングのような場で、誰かと一緒に整理していく方法もあります。

相談したら失望されると感じて動けないなら、その気持ち自体が、評価への不安の表れかもしれません。一人で判断しなくていいと思える相手を見つけることも、立派な一歩です。

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監修者: 石川蓮(公認心理師)

公認心理師、行動心理士。1997年生まれ。北里大学・大学院卒業。その後、公認心理師と行動心理士の資格取得。
在学中は高齢者や生産人口の色覚異常や朝型夜型特性が睡眠に与える効果等の研究を行う。
大学院卒業後、大学病院附属の研究所にてカウンセリングやデータマネジメント担当として勤務。また、都立高校の心理学講師としても勤務。
「心の悩みを持つ方のそばに寄り添う」をモットーに業務遂行しております。

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