パニック障害の人にかける言葉は?言ってはいけない言葉を知りたい

監修者の石川蓮(公認心理師)先生より

パニックの場面では、発作そのものが本人の意志でコントロールできない身体反応であるため、励ましやアドバイスが負担として伝わってしまうことがあります。

そのため、「何を言うか」だけでなく、「どういう姿勢で関わるか」という視点がとても重要になります。

この記事では、言ってはいけない言葉と安心につながりやすい関わり方をまとめているので是非読んでみてください。

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20代男性(会社員)付き合っている彼女がパニック障害と診断されてから、一緒に出かけるたびに何を話せばいいのかわからなくなりました。

電車の中で彼女の表情が曇ったとき、大丈夫?と聞くのも、黙っているのも、どちらが正解なのか自信が持てません。
励ましたつもりの一言で傷つけてしまった気もして、最近は会話そのものが怖くなっています。

ココラボ相談室からの回答

ご相談ありがとうございます。
言葉ひとつで相手を傷つけてしまうかもしれない、その感覚を抱えながら隣にいるのは、それだけで消耗することだと思います。

この記事では、なぜ何気ない一言が相手の負担になりやすいのか、その背景を整理したうえで、迷ったときに立ち返れる声のかけ方の軸を一緒に考えていきます。

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パニック障害の人にかける言葉で迷ったときに、まず大切にしたいこと

何を言えばいいのか分からない、という状態そのものは、相手のことを真剣に考えている証でもあります。まずは、正解の一言を探すよりも、自分の関わり方の軸を整える視点から始めていきます。

パニック障害の人にかける言葉に迷うとき、多くの方は良いことを言わなければ、という方向で頭を働かせています。けれど実際に届きやすいのは、励ましの強さではなく、相手の今の状態を否定しない姿勢です。

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過去にかけた言葉で相手が傷ついたかもしれないと感じている場合も、無理に取り消そうとしなくて構いません。

気になっているのなら、あのとき言った言葉、もしかしてしんどかった?と短く確認するだけでも、関係は十分に立て直せます。完璧な対応より、修正できる関係のほうが、本人にとっては安心材料になりやすいのです。

パニック障害の人に言ってはいけない言葉

ここでは、励ましのつもりでも本人の負担になりやすい言葉を整理します。なぜその言葉が届きにくいのか、背景にある心理を一緒に見ていきます。

代表的なNGワードを一覧で示します。

NGワード受け取られ方
気の持ちよう/考えすぎ体験している身体反応そのものを否定された感覚になる
頑張って/普通はできるすでに頑張っている自分への要求が一段重くなる
すぐ治るよ/わかるよ苦しさを相手の理解の範囲に縮められた響きになる
また発作?/こんなところで発作=迷惑というメッセージとして自責が強まる
そんなの甘え/誰でも辛い助けを求めること自体をためらうようになる

気の持ちよう、考えすぎなど症状を否定する言葉

気の持ちようだよ、考えすぎじゃない?といった言葉は、軽くしてあげたいという善意から出ることが多いものです。けれど受け取る側にとっては、自分が体験している身体反応そのものを存在しないことにされたように感じやすい言葉でもあります。

パニック発作は、本人の意志でコントロールできる範囲を超えた自律神経の急激な反応です。気のせいや思い込みという表現は、その実感とのずれが大きく、本人がさらに自分を責める方向に働いてしまいます。
まじめで気を遣いやすい人ほど、自分が大げさなのかも、と引き受けてしまいがちです。

頑張って、普通はできるなど追い込む言葉

頑張って、普通はできるよ、こんなこともできないの、といった表現は、本人がすでに毎日かけている自分への要求に、もう一段プレッシャーを重ねてしまいます。

パニック障害の人は、できなくなった日常を一番よく知っているのは自分自身です。
例えば電車に乗れなかった日、その帰り道で何度も頑張りが足りないと自分を追い込んでいることもあります。

そこに外側から普通はできるという基準を持ち込むと、回復に必要な休息よりも、無理を続ける方向に背中を押してしまうことになります。

すぐ治るよ、わかるよなど苦しさを小さくする言葉

すぐ治るよ、わかるよ、私も同じ経験があるから、といった言葉は、共感したい気持ちが強いほど出やすい表現です。けれど相手の苦しさをこちらの理解の範囲に収めようとする響きを伴いやすい表現でもあります。

パニック障害の回復には個人差が大きく、すぐという見通しが現実とずれていると、治らない自分を責める材料に変わってしまいます。共感を伝えたいときほど、わかると言い切らずに、私には全部はわからないけれど、しんどいのは伝わってくる、といった余白のある言い方のほうが届きやすくなります。

代わりに伝えたい、安心につながりやすい言葉

ここからは、否定や評価を含まずに本人の負担を増やしにくい伝え方を紹介します。言葉そのものより、その背景にある姿勢を意識すると、自分の言葉でも応用できるようになります。

つらさをそのまま受け止める言葉

つらかったね、怖かったね、しんどいね、といった言葉は、状況を解決しようとせず、ただそこにある感覚を一度認める働きを持ちます。本人が一番ほしいのは、評価でも分析でもなく、いま自分が感じているものを否定されない時間です。

うまい言葉が見つからないときは、無理にひねり出さなくて構いません。何も言えないけど、近くにいるね、で十分役割を果たします。沈黙が気まずく感じても、本人にとっては考えなくていい時間として機能していることが多いものです。

迷惑ではないと伝える言葉

パニック障害の人は、迷惑をかけたくないという気持ちを強く抱えています。予定を変えてもらったり、途中で帰ったりした日ほど、その夜に自責が強まりやすい傾向があります。

迷惑じゃないよ、変更しても大丈夫だよ、と短く言葉にして伝えることは、その夜の自責を少し軽くする働きをします。気を遣わせない、ではなく、気を遣ってもらってもこちらは大丈夫、というメッセージにすると、本人が安心して頼りやすくなります。

本人に選んでもらう言葉

どうしたい?今いちばん楽な選択はどれ?と尋ねるかたちは、本人にコントロール感覚を戻す働きがあります。パニック障害は予測できない発作によって、自分で自分の状態を選べない感覚が強まる状態です。だからこそ、選択肢を相手に渡す問いかけが、安心の足場になります。

質問が重荷になりそうな場面では、ここに座る、外に出る、水を飲む、のどれが楽そう?というように、選択肢を絞ってあげると、本人が答えやすくなります。

何気ない一言が負担になりやすい理由

ここでは、悪意のない言葉がなぜ予想以上に深く届いてしまうのか、その背景を整理します。仕組みが分かると、言葉選びの軸も自然と見えてきます。

パニック発作は気持ちだけで止められるものではない

パニック発作は、脳と自律神経が急激に過剰反応している状態で、心拍上昇や呼吸の速さは本人の意志ではすぐに止められません。厚生労働省のこころの病気を知るページでも、パニック障害は脳機能の変化が関わる疾患として説明されています(厚生労働省 こころの情報サイト)。

つまり気持ちの強さや弱さの話ではなく、身体側の反応として起きているということです。落ち着いて、と言われても落ち着けないのは、意志が弱いからではなく、神経系が一時的に通常運転に戻れない状態だからです。この前提が共有されているだけで、かける言葉の角度は変わってきます。

予期不安があると、励ましもプレッシャーになることがある

パニック障害には、また発作が起きるかもしれないという予期不安が伴いやすく、これが日常の選択肢を狭める大きな要因になります。

予期不安が続くと、発作が起きそうな場所や状況を避ける広場恐怖につながることもあり、行動範囲が少しずつ縮んでいきます。

次は大丈夫だよ、という励ましは、本人の中では次に大丈夫でなければいけないという宿題に変換されてしまいます。そのため、未来を保証する言葉よりも、今この瞬間に焦点を戻す言葉のほうが負担になりにくいのです。今は無理しなくていい、という限定された範囲の安心が、結果的に本人を支えます。

発作が起きているときの声のかけ方

発作の最中は、平時とは違う関わり方が必要になります。長く話しかけるよりも、短く、静かに、安全を確保することが優先されます。

短く、静かに、安全を伝える

発作のピークは数分から長くて30分程度で、本人は強い恐怖と身体症状の中にいます。このときに長い説明や複数の質問を重ねると、処理しきれずさらに苦しくなる方向に働きます。

ここにいるよ、座ろう、ゆっくりでいい、といった短い言葉を、低めの落ち着いた声で繰り返すほうが届きます。慌てた声で大丈夫?を連発するより、静かにそばにいることのほうが、安全のサインとして伝わります。

呼吸や移動は本人のペースに合わせる

呼吸を整えよう、と促すときも、相手のペースより早くカウントしないようにしてください。すでに早くなっている呼吸に、こちらの落ち着かせたい気持ちが重なると、結果的に追い立てる声かけになってしまいます。

座れる場所への移動、水を一口、人の少ない場所への退避といった選択肢は、本人に決めてもらうのが基本です。動けそう?それともここで少し待つ?と聞いて、相手の頷きを確認してから動くだけで、本人はコントロール感覚を取り戻しやすくなります。

普段から安心につながる関わり方

平時の関わり方は、発作時の関わり方と同じくらい重要です。距離感は関係性によって変わるので、立場ごとに整理していきます。

家族や恋人として近くにいるとき

家族や恋人など、近い距離にいる人は、特別扱いと普段通りのバランスに迷いやすい立場です。腫れ物に触るような接し方は、本人にとって自分は重荷だという感覚を強めてしまいます。

基本は今まで通りで、必要な場面だけそっと配慮する形が負担になりにくい関わり方です。一方で、感情の波に巻き込まれそうなときは、責めずに今日は私も一度落ち着く時間がほしい、と伝えていい関係であることも、長く支え合うための土台になります。

友人や職場の人として距離を保つとき

友人や職場では、踏み込みすぎないことが信頼につながります。診断名や症状を本人の許可なく他の人に共有しないこと、業務の配慮はやりすぎず、困ったら言ってね、という余白を残すことが基本姿勢です。

予定を立てるときは、混雑する時間帯や密閉空間、急な変更が重なる計画を避けると、本人が断る回数を減らせます。カフェインの強い飲み物が苦手な日もあるので、選ぶ場所も柔らかく相談できると安心につながります。無理なら遠慮なく言ってね、を本気のトーンで伝えておくと、本人が選択しやすくなります。

支えようとして苦しくなったときに考えたいこと

最後に、支える側自身の心の状態にも触れておきます。あなたが消耗してしまうことは、相手のためにもならない、という視点を持つことが、長く関係を続けるうえで欠かせません。

近くで支え続けると、相手の不安が自分の中にも染み込んでくるような疲れが出てきます。これは共感疲労と呼ばれる現象で、優しい人ほど起こりやすいものとされています。

自分の時間を確保すること、別の友人や家族と話すこと、必要なら主治医や心理カウンセラーに自分自身が相談することは、決して見捨てる行為ではありません。

何も言わずそばにいる、という選択肢があるように、いったん距離を取る、という選択肢もあります。完璧に支え続けることを目標にすると、関係そのものが続かなくなります。あなたが穏やかでいられる時間を持つことは、相手にとっての安心の土台でもあります。

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監修者: 石川蓮(公認心理師)

公認心理師、行動心理士。1997年生まれ。北里大学・大学院卒業。その後、公認心理師と行動心理士の資格取得。
在学中は高齢者や生産人口の色覚異常や朝型夜型特性が睡眠に与える効果等の研究を行う。
大学院卒業後、大学病院附属の研究所にてカウンセリングやデータマネジメント担当として勤務。また、都立高校の心理学講師としても勤務。
「心の悩みを持つ方のそばに寄り添う」をモットーに業務遂行しております。

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