非定型うつ病の家族が急に攻撃的になり、どう受け止めればいいのか分かりません
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監修者の石川蓮(公認心理師)先生より
身近な人が急に声を荒げると、こちらの心もじわじわ削られていきますよね。
非定型うつ病の怒りは、性格というより症状として出ていることが多いんです。
とはいえ、何を言われても受け止め続ける必要はありません。
まず自分の安全を確かめる。その一線は持っていてほしいと思います。
40代女性(パート)
夫が非定型うつ病と診断されてから、些細なことで急に怒鳴るようになりました。
昨日は夕食の献立を尋ねただけなのに、物を投げられて体がすくみました。
顔色ばかりうかがう自分が情けなくて、私の接し方が悪いのかと考え込んでしまいます。
ココラボ相談室からの回答
ご相談ありがとうございます。
急に人が変わったように怒り出す家族を前にすると、どう受け止めればいいのか分からなくなりますよね。
この記事では、その攻撃性が非定型うつ病の症状としてどう起きているのかを整理します。
そのうえで、受け止めるものと、受け止めなくていいものの線引きを、一緒に考えていきます。
急に攻撃的になる家族に戸惑い、傷ついているあなたへ
穏やかだった人が、あるときから別人のように声を荒げる。
その場に立ちすくんでしまう感覚は、我慢が足りないからではありません。
まずは、あなたの側で起きていることから見ていきます。

怒鳴られた後に自分を責めていないか
怒りをぶつけられた直後、頭に浮かぶのが相手への怒りではなく、自分への問いだという人は少なくありません。
あの一言がいけなかったのか、機嫌を損ねる言い方をしたのか、と何度も巻き戻してしまう。
けれど、引き金になった出来事の小ささと、返ってきた反応の大きさは、多くの場合つり合っていません。
献立を尋ねただけ、予定を確認しただけ。
そのくらいのことで感情が爆発するとき、原因はあなたの言葉そのものではないことが多いのです。
自分を責める癖がついていないか、一度立ち止まってみてください。

我慢が足りないのではという思い込み
家族なんだから支えなければ、という気持ちは自然なものです。
ただ、その責任感が強いほど、怖いと感じる自分を否定しやすくなります。
大声や物に当たる音に体がすくむのは、危険を察知したときの当たり前の反応です。
びくびくしてしまう自分を、心が弱いと決めつける必要はありません。
消耗している事実にまず気づくことが、この先を考える出発点になります。
監修者の石川蓮(公認心理師)先生に相談してみませんか?
攻撃性は拒絶過敏性と怒り発作から起きる症状
ここでは、なぜ急に怒り出すのかを整理します。
性格が変わったのではなく、症状として起きていることが多いという視点です。
ただし、すべてを病気に当てはめて自己診断に走らないことも大切です。
拒絶過敏性が引き起こす反応と会話例
非定型うつ病の中核にあるとされるのが、拒絶過敏性です。
これは、相手から否定された、見捨てられたと感じ取るセンサーが過剰に働く状態を指します。
たとえば、今日は元気そうだね、という何気ない言葉が、いつもは調子が悪いと思われている、という非難に聞こえてしまう。
仕事のミスを軽く指摘されただけで、自分の存在すべてを否定されたように受け取ってしまう。
そうした受け取りのズレから、落ち込みだけでなく、逆ギレのような攻撃が出ることがあります。
怒っているように見えて、その内側は拒絶された痛みでいっぱいだ、という理解が糸口になります。

怒り発作の特徴と発作のあとの自己嫌悪
拒絶過敏性が爆発的な怒りとして噴き出したものは、怒り発作と呼ばれます。
大声を上げる、物を壊す、手がつけられなくなる、といった形で現れます。
特徴的なのは、発作が収まったあとです。
多くの場合、本人は悪いことをしたと激しい自己嫌悪に陥り、うつがさらに深まります。
キレたのは本来の自分ではない、という感覚を抱えていることも少なくありません。
怒りの最中の姿と、我に返ったあとの姿は、同じ人の中で大きく揺れているのです。
定型うつ病との違いと甘えという誤解
一般にイメージされるうつ病は、何をしても気分が晴れない状態が続きます。
一方で非定型うつ病は、楽しいことがあると一時的に気分が上向く、気分反応性が見られます。
休日は出かけられるのに平日は動けない。
この落差から、甘えや怠け、新型うつではと誤解されがちです。
気分反応性は症状の一つで、本人が意思で切り替えているわけではありません。
過眠や過食、夕方以降に悪化しやすいといった違いも、攻撃性を理解する背景になります。

攻撃性が他の病気や薬の影響のこともある
急に攻撃的になる背景は、非定型うつ病だけとは限りません。
気分の波が大きい場合は、双極性障害が隠れていることもあります。
見落とされやすいのが、薬の影響です。
抗うつ薬を飲みはじめた直後や増量した直後に、かえって落ち着かなくなり苛立ちが強まることがあり、賦活症候群と呼ばれます。
この場合、自己判断で薬をやめず、まず主治医に相談することが安全です。
睡眠時無呼吸症候群や甲状腺の不調など、体の病気が関わることもあります。
だからこそ、家庭で診断名を当てはめるのではなく、医療機関に委ねる姿勢が要ります。
症状として受け止めるものと受け止めなくてよいもの
攻撃性が症状だと分かっても、すべてを飲み込む必要はありません。
ここでは、受け止めるものと、そうでないものの線引きを考えます。
これは、あなた自身を守るための視点でもあります。
痛みの表現と自分への評価を切り分ける
怒りの言葉には、二つの層が混ざっています。
一つは、拒絶された痛みがあふれ出したもの。
もう一つは、あなた自身への具体的な評価や人格の否定です。
前者は症状として距離を置いて眺められます。
後者まで真に受けると、あなたの自己像が少しずつ削られていきます。
言われた言葉のうち、どこまでが痛みの叫びで、どこからが受け取らなくていい中身かを、頭の中で仕分けしてみてください。

暴力や物損を病気で正当化しない線引き
症状の理解と、行為の許容は別のことです。
たとえ病気が背景にあっても、殴る、物を壊す、執拗に人格を否定し続けるといった行為が、あなたが受け入れるべきものになるわけではありません。
身の危険を感じる場面では、理解より先に安全を優先してかまいません。
その場を離れる、別室に移る、必要なら人を呼ぶ。
それは冷たさではなく、二人を守るための行動です。
関係を続けるかは消耗しきる前に決めない
離れるべきか、支え続けるべきか。
その問いは、疲れ果てた状態で答えを出さないほうがいいものです。
眠れない、食欲がない、一日の予定を相手の機嫌で組んでいる。
そんなときの判断は、どうしても極端に振れます。
関係を続けるかどうかは、この記事が決めることではありません。
まず安全と休息を確保し、少し余力が戻ってから考える、という順番だけをお伝えします。
監修者の石川蓮(公認心理師)先生に相談してみませんか?
発作の最中・直後・平時で変える接し方
対応は、いつも同じではうまくいきません。
発作の最中、収まった直後、落ち着いている平時で、できることが変わります。
時間帯で分けて見ていきます。
発作の最中は対等に渡り合わない
怒りが噴き出している最中に、理屈で言い返すのは逆効果になりやすいです。
反論するほど、否定されたという感覚が強まり、火に油を注ぎます。

この時間帯にすべきなのは、説得ではありません。
声のトーンを上げず、いったんその場の距離を取ることが、いちばんの対応になることがあります。
一人になって自分で鎮まるのを待つ、という関わり方です。

落ち着いた直後の関わり方
発作が収まった直後、本人は強い自己嫌悪の中にいることが多いです。
ここで責め立てると、うつがさらに深まってしまいます。
長い説教ではなく、そっと話を聴く姿勢を見せるだけで十分なことがあります。
さっきは驚いたけれど、あなたも苦しかったんだね、と気持ちに触れる程度で。
正しさを説くより、痛みを置いていける空気をつくるほうが、次の発作の間隔を空けやすくします。
平時に受診をどう切り出すか
穏やかな時間は、受診の話を持ち出す数少ないチャンスです。
とはいえ、病気だから病院へ、と正面から言うと拒絶されやすい。
そこで入口になるのが、体の不調です。
最近眠りが浅そうだから一度相談してみない、といった形で、眠れなさや倦怠感など目に見える症状を糸口にすると、本人も受け入れやすくなります。

必要なら、家族が先に受診して主治医に状況を伝えておく方法もあります。
あなたと本人が共倒れしないための備えと相談先
最後に、支える側が倒れないための備えを整理します。
あわせて、怒ってしまう本人側の読者にも一節を残します。
相談先は、医療・公的・民間の三つの層で示します。
周囲の安全確保と共倒れを防ぐ視点
支える人の心身が崩れると、支えること自体が続かなくなります。
だから、あなた自身のケアは後回しにするものではありません。
好きなことをする時間を、罪悪感なく持つ。
この状況を、誰か一人にでも話しておく。
相手の回復と同じくらい、あなたの睡眠と食事が保たれているかを気にかけてください。
子どもが同居していて、その場面を見ているなら、子どもの安全もあわせて考える必要があります。

怒ってしまう自分を責める本人へ
もしあなたが、怒りを止められない側としてこの記事を読んでいるなら。
発作のあとに自分を責め続けているとしたら、その苦しさも症状の一部です。
キレたのは本来の自分ではない、という感覚は、多くの人が抱えています。
自分を丸ごと否定するより、怒りの直前に何を拒絶と受け取ったのかを、後から振り返るほうが回復につながります。
それは一人で抱えず、診察の場で少しずつ言葉にしていけるものです。
医療・公的・民間の相談先
相談先は一つではありません。
状況に応じて、複数の層を組み合わせて使えます。
- 医療:精神科・心療内科。診断と治療、薬の調整はここが担います
- 公的:お住まいの地域の精神保健福祉センターや保健所。本人が受診していなくても家族が相談できます
- 電話:厚生労働省のこころの健康相談統一ダイヤル。すぐ話したいときの入口になります
- 民間:公認心理師などによるカウンセリング。周囲の側の消耗を整理する場にも使えます

非定型うつ病は、うつ病の中でも決して珍しいものではなく、うつ病患者のうち一定の割合を占めるとされています。
一人で抱える状況ではありません。
どこから触れるかは、あなたが選んでいい範囲です。