感情鈍麻の症状はどんなもの?うつ病なのか自分の性格か分からない
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監修者の石川蓮(公認心理師)先生より
何も感じない、泣けないという状態は、周りに分かってもらいにくいですよね。
それを怠けや性格のせいだと、私は思いません。
脳や心が少し疲れて、反応を控えめにしているときがあるんです。
名前がつかないままでも、どうか一人で抱えないでくださいね。
30代女性(会社員・公務員)
最近、好きだった音楽を聴いても心が動きません。
友人の結婚式で、おめでとうと言いながら、自分だけガラス越しに眺めているようでした。
これは感情鈍麻の症状なのか、ただの性格なのか、うつ病なのかも分からなくて。
ココラボ相談室からの回答
ご相談ありがとうございます。
好きだったはずのものに触れても、心が動かない。その感覚は、つらいとも言いにくく、誰かに分かってもらいにくいものですよね。
この記事では、感情鈍麻の症状がどんなものなのか、うつ病や自分の性格とどう違うのかを、名前を急いで決めずに一緒に整理していきます。
「何も感じない」感情鈍麻の症状をまず受け止める
好きだったものに触れても、心が動かない。そんな時間が続くと、自分がどこかへ行ってしまった気がしますよね。ここでは、その状態の輪郭からたどります。
感情の振れ幅が小さくなること
感情鈍麻は、感情がまるごと消える状態とは違います。多くは、喜びも悲しみも薄い膜ごしになります。
頭では「うれしいはずだ」と分かる。なのに、体がついてこない。映画の泣ける場面でも、涙が出てこない。
ガラス越しに世界を見ているようだ、という言い方をされる方もいます。感情の機能が失われたわけではありません。いまは振れ幅が小さくなっている、というサインに近いものです。

ここで見落としたくない点があります。感じないこと自体を、つらいと感じている人はたくさんいます。その苦しさに気づけているなら、心のセンサーそのものは、まだちゃんと働いています。
怠けや性格の問題ではない
冷たい人間になったのかもしれない。そう自分を責めてしまう方がいます。でも、これは気持ちの緩みで起きるものとは違います。
脳の働きが一時的に変わると、感情の反応は鈍ります。あなたの努力不足でも、生まれ持った冷たさでもありません。

性格のせいにして片づけると、背景にある不調を見逃しやすくなります。まずは、いまの状態をそのまま眺めるところから始めて大丈夫です。
監修者の石川蓮(公認心理師)先生に相談してみませんか?
似た状態や病気との違い、原因を整理する
「何も感じない」と一口に言っても、中身はいくつかに分かれます。どれに近いかで、向き合い方も変わってきます。まずは見分けの手がかりから並べます。
失感情症・アンヘドニアとの違い
よく似た言葉に、失感情症(アレキシサイミア)があります。これは、感情が動いていないのとは違います。自分の感情に気づき、言葉にするのが苦手な特性です。
失感情症は、感情に気づきにくいという特性を指す言葉です。その度合いを測る研究も重ねられてきました。TAS-20(トロント・アレキシサイミア尺度)という尺度が知られています。20の質問で、感情への気づきにくさをはかります。
もうひとつ、アンヘドニアという状態もあります。こちらは楽しみや喜びだけが薄れ、不安や悲しみは強く残ります。正負をとわず全体が平坦になる感情鈍麻とは、ここが違います。
自分がどれに近いのかは、すぐに決まらなくて構いません。違いを知っておくだけでも、受診のときに話しやすくなります。
見分けの軸はシンプルです。もともとそうだったのか、ある時期から変わったのか。この一点が、大きな手がかりになります。

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統合失調症とうつ病、どちらの話か
感情鈍麻という言葉は、もともと統合失調症の陰性症状を指す専門用語でした。検索すると統合失調症の説明が出てきて、不安になった方もいますよね。
ただ、同じ言葉が、うつ病や抑うつ状態の「何も感じない」にも使われています。言葉は同じでも、指している中身は違います。
うつ病では、悲しみより平坦さが前に出ることもあります。泣くこともできない段階は、軽いのではなく、むしろ重いサインのことがあります。検索結果の疾患名だけを見て、自分を決めつけなくて大丈夫です。
うつや疲れからくる平坦さは、背景が整えば戻っていく余地があります。一方で、ゆっくりした経過をたどるものもあります。どちらなのかは、時間をかけて専門家と確かめていけます。

考えられる背景と脳の働き
感情は、扁桃体が作った反応を前頭前野が受け取ることで生まれます。この回路の働きが変わると、振れ幅は小さくなると考えられています。
背景はひとつに限りません。うつ病や燃え尽き、強いストレスのあとの防御反応が関わることもあります。発達特性や睡眠不足、甲状腺の不調が隠れている場合もあります。
抗うつ薬の影響で平坦になる人もいます。落ち込みは軽くなったのに、喜びだけ戻らない。そんな時は、薬の調整で和らぐ場合があります。
どの経路かによって、向き合い方はまるで変わります。だからこそ、原因の見立てが先に立ちます。
いつから変わったかという判断軸
自分の状態を整理するとき、時間軸が助けになります。次の観点を、受診のときに伝える材料として持っておくと役立ちます。
- いつから変わったか(もともとか、ある時期からか)
- 薬を始めた時期や、大きな出来事と重なっていないか
- 喜びだけが抜けたのか、怒りや不安も含めて全部か
- 休むと戻るのか、休んでも戻らないのか

これは診断テストではありません。それでも、どこから話せばいいか分からない時の、入り口になります。
受診や相談を考えたいタイミング
どのあたりで相談すればいいのか、線引きに迷いますよね。無理に決めなくても、目安になるサインはあります。まず、受診を考えたい状態から見ます。
受診の目安となる具体的なサイン
次のどれかが続いているなら、一度相談を考えてよい頃合いです。
- 何も感じない状態が2週間以上続いている
- 休んでも戻らない、または休むほど薄れていく
- 仕事や家事の判断がうまくできない
- 人と会うのを避けるようになった
- 抗うつ薬を始めた、増やした時期と重なっている
ひとつでも心当たりがあれば、それだけで相談してよい理由です。うまく説明できる状態になるまで待つ必要はありません。

症状が軽いか重いかで測らなくて構いません。生活のどこかが動かしにくいと感じたら、それが相談の合図です。
すぐ相談してほしい緊急のサイン
一方で、早めに動いてほしい場面もあります。「消えてしまってもいい」という考えがよぎる時です。
感情が鈍っていると、危険の実感も同じように鈍ります。だからこそ、周りの力を借りてほしいのです。
眠れない日が続く、お酒の量が急に増えた。そんな変化も、ひとりで抱えないでほしいサインです。公的な窓口として、厚生労働省のまもろうよ こころが相談先をまとめています。命の危険が迫る時は、ためらわず119番を使ってください。
自己判断で薬をやめないこと
薬のせいかも、と思うと、自分でやめたくなりますよね。その気持ちは自然なものです。
ただ、急な中断は、めまいや不安といった中断症状につながります。うつの再発とも見分けがつきにくくなります。
量の調整や薬の変更で和らぐことも多いので、まずは処方医に伝えてみてください。やめる前に一度相談する、それだけで選べる道が増えます。

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一人で抱えずに整えていく毎日の過ごし方
受診を決めきれない日も、待ち時間のあいだも、時間は続いていきます。そのあいだの過ごし方を、いくつか置いておきます。気負わず読んでください。
感じないまま相談していい
うまく言葉にできないから、相談を先延ばしにしてしまう。そういう時期があっても無理はありません。
でも、整った説明は要りません。「うれしいと思えないんです」。その一言から、話は始められます。
名前がつかないまま相談しても、何も問題ありません。分からないまま持っていく形でも、相談は成り立ちます。話すうちに、言葉は少しずつ見つかっていきます。

大きな決断は今しなくていい
感情が鈍っている時期は、自分が何を望んでいるかも見えにくくなります。そんな時の大きな決断は、急がないほうが安心です。
退職、別れ、引っ越し。こうした選択は、少し先に送っても構いません。保留にしておく、という決め方もあります。
家族・パートナーができること
身近な人が、愛情がなくなったのかと聞きたくなるのは、自然なことです。ただ、その問いには、本人も答えられません。答えられないこと自体が、症状だからです。
気持ちを確かめる問いを重ねると、相手を追いつめてしまいます。「今は感じにくい時期なんだね」。そう状態として受けとめ、返事を求めない声かけが助けになってくれます。
励まそうとして、気晴らしや外出を強く勧めたくなる日もあります。ただ、今は反応が返りにくい時期です。本人のペースに合わせて、そっと待つ姿勢のほうが届きます。
家族だけで相談に行くのも、ひとつの方法です。どう声をかけるかを、専門家と一緒に考えてもらえます。

感情が戻るときの小さな兆し
感情は、スイッチのように戻るものではありません。戻るときは、たいてい小さな手応えからです。
音楽がふと響いた。食事の味が分かった。誰かの言葉に、少しだけ反応できた。そんな瞬間が、回復のきざしになります。
兆しの出方は、人によって違います。誰かと同じ順番でなくても、あなたのペースで戻ってくれば十分です。

いま心が動かなくても、あなたの感じる力が消えたわけではありません。焦らず、今日をやり過ごせたなら、それで十分です。