場面緘黙症はわがままですか?家では話すのにと周りに責められてつらいです

監修者の石川蓮(公認心理師)先生より

場面緘黙症をわがままと感じてしまうのは、家で話せる姿を知っているからこそだと思います。

でも、話せる場所と話せない場所がはっきり分かれるのは、この状態の特徴なんですね。

責める前に、本人が誰より話せなさに戸惑っていることを、少しだけ思い出してもらえたら。

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30代女性(主婦)

小学生の娘は家ではよく笑って話すのに、学校では一言も声が出ないみたいで。

授業参観のあと、義母から、あの子はわがままなだけと言われてしまいました。

私の育て方のせいなのかと考えると、夜も気持ちが落ち着きません。

ココラボ相談室からの回答

ご相談ありがとうございます。

家では笑って話す娘さんが、学校では声を出せない。それをわがままと言われ、自分の育て方のせいかと責めてしまうお気持ちは、決して大げさなものではないと思います。

この記事では、場面緘黙症が甘えやわがままとどう違うのか、そしてなぜ周囲には誤解されやすいのかを一緒に整理していきます。今すぐ答えを出さなくても、娘さんの状態を捉え直す手がかりになればと思います。

「わがまま」と責められてつらい気持ちをまず受け止める

家では普通に話すのに、外では声が出ない。その落差を、わがままや甘えという言葉で片づけられると、責められた側は深く傷つきます。この章では、まずその気持ちに向き合うところから始めます。

家では話せるのにと言われて傷ついているあなたへ

家では話せるのに、どうして外では話さないの。その問いかけには、悪気がないことも少なくありません。それでも、言われた本人や家族にとっては、努力を見てもらえていないように感じられます。

話せないことよりも、わかってもらえないことのほうがつらい。もしそう感じているなら、それはとても自然な反応です。まずは、責められて苦しかった事実を、なかったことにしないでください。

声が出ない苦しさは、わがままではなく、責めずに受け止めてほしいサインです。
声が出ない苦しさは、わがままではなく、責めずに受け止めてほしいサインです。

つらいのは話せないことか、誤解されていることか

いま一番しんどいのが何なのかは、人によって違います。声が出せないこと自体なのか、それとも周りに誤解されていることなのか。ここを分けて考えると、次に何を整えればいいかが見えやすくなります。

例えば、話せなさそのものより、わがままと決めつけられた場面がくり返し思い出されるなら、傷ついているのは関係のほうかもしれません。困りごとの中身を切り分けることが、最初の一歩になります。

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場面緘黙症は「話さない」のではなく「話せない」

わがままかどうかを考える前に、この状態が何なのかを知っておくと、見え方が変わります。ここでは、意思ではなく不安が関わっていることを整理します。

意思ではなく不安で声が出なくなる仕組み

場面緘黙症は、話したくないのではなく、話したいのに声が出ない状態です。強い不安が高まると、体がこわばり、のどが詰まったように言葉が出てこなくなります。

授業で指されて、頭では答えが浮かんでいるのに声だけが出ない。そんなもどかしさを、毎回の場面でくり返している人もいます。

これは気持ちの弱さではなく、不安に対する体の反応に近いものです。本人は、話せない自分に一番戸惑っていることが多いと言われています。

不安が高まると体がこわばり、話したいのに声が出ない反応につながります。
不安が高まると体がこわばり、話したいのに声が出ない反応につながります。

不安症の一種という位置づけ(DSM-5・ICD-11)

場面緘黙症は、医学的には不安症のひとつとして整理されています。アメリカ精神医学会のDSM-5でも、世界保健機関のICD-11でも、不安症群に位置づけられている状態です。

発症率は子ども全体の0.2〜0.5%ほどと報告されており、決して珍しいものではありません。性格や育ちの問題ではなく、支援の対象になる状態だと知っておくと、少し肩の力が抜けるかもしれません。ただし実際の診断は医療機関でしか行えないため、ここでの説明は一般的な整理にとどまります。

「人見知り」や「甘え」とはどう違うのか

人見知りは、慣れるにつれて少しずつ話せるようになることが多いものです。一方で場面緘黙症は、同じ環境に長く通っても、特定の場面では一貫して話せない状態が続きます。

答えが分かっていても声が出ないことは、本人の意思や努力だけでは変えにくい反応です。
答えが分かっていても声が出ないことは、本人の意思や努力だけでは変えにくい反応です。

この違いは、外からは見分けにくいところです。慣れれば解決するはず、という前提そのものが誤解の入り口になりやすいと言えます。

同じクラスに一年通っても声が出ないままなら、それは慣れの問題ではないのかもしれない。そう考える視点が、責める気持ちをやわらげてくれます。

なぜ周囲には「わがまま」に見えてしまうのか

わがままではないと分かっても、なぜそう見えてしまうのかが腑に落ちないと、誤解はほどけません。ここでは、その見え方の仕組みを扱います。

家は安心・外は不安というコントラストが生む誤解

家庭は本人にとって安心できる場所で、外は不安の強い場所です。この落差が大きいほど、外から見ると、できるのにやらないように映ってしまいます。

本当は、安心な場所でしか力が出せないというだけなのに、意思で選んでいるように見える。この見え方のズレこそが、わがままという誤解の正体です。

わがままに見える行動を不安反応として読み替える

家では饒舌なのに外では黙る、特定の人にだけ話す、急に固まる。こうした行動は、意地ではなく不安の表れとして読み替えられます。

家と外で話せる量が違うのは、安心と不安の差であり、わがままではありません。
家と外で話せる量が違うのは、安心と不安の差であり、わがままではありません。
わがままに見える行動背景にある不安反応
家では話すのに外では黙る安心できる場面でしか声が出せない
特定の人にしか話さない相手による安心度の差が大きい
急に固まって動けない緊張で体全体にブレーキがかかる

読み替えができると、叱る対象だと思っていた行動が、支える対象に変わっていきます

親の育て方や愛情不足が原因ではない

場面緘黙症は、親の育て方や愛情不足で起こるものではありません。不安を感じやすい生まれ持った気質に、遺伝的な要素や環境の変化が複雑に重なって現れると考えられています。

自分を責め続けると、その緊張は本人にも伝わりやすくなります。原因を探すより、いま安心できる場をどう整えるかに目を向けるほうが、回復には近いとされています。

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誤解を解くために周囲へどう伝えるか

わがままではないと分かったら、次は周りにどう伝えるかです。相手によって、届きやすい言葉は変わってきます。

担任・祖父母・上司へ伝える言葉の例

伝えるときは、話さないのではなく話せない、という一点に絞ると届きやすくなります。相手別に、短く添えられる言葉を挙げます。

  • 担任へ:発表や音読を無理に求めず、うなずきや筆談でも参加とみなしてほしいと頼む
  • 祖父母へ:わがままではなく、緊張で声が出ない状態なんだと、責めない言い方で伝える
  • 上司へ:電話や会議より、メールやチャットのほうが力を出しやすいと具体的に示す
話すことを強制せず、筆談や待つ姿勢も参加の形として認めることが支えになります。
話すことを強制せず、筆談や待つ姿勢も参加の形として認めることが支えになります。

一度で理解してもらえなくても、焦らなくて大丈夫です。相手の理解が追いつく速さは、こちらの納得の速さとは別だと思っておくと、気持ちが少し楽になります。

学校や職場に求められる配慮と手帳の考え方

学校では、発表の代替や少人数での参加、相談室の利用などが配慮の例になります。職場では、電話対応をメールに切り替える、発言を書面で補うといった合理的配慮が考えられます。

症状や生活への影響の程度によっては、精神障害者保健福祉手帳や自立支援医療の対象になることもあります。使える制度があると知っておくだけでも、選択肢は広がります。実際の判断は、医師や自治体の窓口を通すことになります。

つらさが続くときのセルフケアと相談の目安

最後に、誤解が長引いたときの心の守り方と、相談を考える目安を整理します。無理に動く前に、いまの状態を確かめるところからで大丈夫です。

誤解が続くと起きること(自己肯定感の低下・二次障害)

わがままと言われ続けると、話せない自分はだめだという感覚が積み重なっていきます。それが長引くと、自己肯定感の低下や、不登校・出社困難といった二次的な負担につながることもあります。

とくに、家でも口数が減ってきたと感じるときは、安心できる場そのものが揺らいでいるサインかもしれません。

これは脅すための話ではありません。早めに整えれば防ぎやすいからこそ、状態が固まってしまう前に手を打つ意味があります。

責めるよりも、安心して過ごせる方法を本人と一緒に考えることから始められます。
責めるよりも、安心して過ごせる方法を本人と一緒に考えることから始められます。

「わがままだと感じてしまった自分」を責めないために

一方で、家では話せる姿を見て、つい甘えではと感じてしまった側もいます。その気持ちを持ったこと自体を、強く責める必要はありません。

大切なのは、感じ方に気づいた後の関わり方です。わがままかもしれないという見方を、不安反応かもしれないという見方に置き換える。それだけでも、かける言葉は変わっていきます。

自然に治るのか、大人になってからでも変えられるのか

幼い時期の場面緘黙症は、成長とともに落ち着いていくこともあれば、続くこともあります。大人になってからでも、安心できる関係や環境の変化をきっかけに、話せる場面が広がるケースは報告されています。

ただ、必ずこうなると言い切れるものではありません。だからこそ、早く治すことを目標に据えるより、話せない時期をどう安心して過ごすかを一緒に考えるほうが現実的です。

ここで目指したいのは、話せるようになることだけではありません。話せない自分を責めなくなることも、回復のひとつだと考えておくと、焦りがやわらぎます。

相談を考えたい目安と相談先

次のような状態が続くときは、一人で抱え込まないでください。話せない状態が1か月以上続く、生活に支障が出ている、本人が自分を否定する言葉を口にする、登校前や出勤前に腹痛や吐き気が出る。家族自身が眠れない日が続くときも、相談のサインです。

生活への支障や自己否定が続くときは、専門家への相談を考える目安です。
生活への支障や自己否定が続くときは、専門家への相談を考える目安です。

子どもは児童精神科・小児科・スクールカウンセラー、大人は精神科・心療内科・精神保健福祉センターが入口になります。働く人の相談窓口をまとめた厚生労働省のこころの耳のような公的な情報も、最初の一歩として使えます。誤解された関係をほどく作業は、専門家と一緒に進めていいものです。

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監修者: 石川蓮(公認心理師)

公認心理師、行動心理士。1997年生まれ。北里大学・大学院卒業。その後、公認心理師と行動心理士の資格取得。
在学中は高齢者や生産人口の色覚異常や朝型夜型特性が睡眠に与える効果等の研究を行う。
大学院卒業後、大学病院附属の研究所にてカウンセリングやデータマネジメント担当として勤務。また、都立高校の心理学講師としても勤務。
「心の悩みを持つ方のそばに寄り添う」をモットーに業務遂行しております。

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