場面緘黙症は家族と話せないこともある?親の前だと声が出なくて話せない…

監修者の石川蓮(公認心理師)先生より

家では話せるのが場面緘黙、とよく説明されますよね。
だからこそ家族の前でこそ言葉が出ない自分に戸惑う方は多いです。
声が出ないのは弱さではなく、体がこわばる反応なんです。
どこからきている状態なのか、焦らず一緒に眺めていけたらと思います。

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20代女性(会社員)

職場では普通に雑談できるのに、実家で親と二人になると、急に喉が閉じたみたいに言葉が出ません。

ご飯どうする、と聞かれても頷くだけで、後から自己嫌悪になります。

子どもの頃からで、家族とだけこうなる自分が、わがままなのか甘えなのか分からなくて。

ココラボ相談室からの回答

ご相談ありがとうございます。

家族の前でだけ声が出ない。そのことを、誰にも言えないまま抱えてきた方は多いと思います。検索して出てくる説明の多くは家では話せるという前提で、自分と逆で戸惑ったかもしれません。

この記事では、家族と話せない状態がどう位置づけられるのか、そして自分を責めずに次の一歩を考えるための見方を、いくつか整理していきます。

「家族と話せないのは自分だけ?」と感じているあなたへ

家族の前でだけ言葉が出なくなる。その状態を、うまく説明できないまま過ごしてきた方は少なくありません。

ここでは解決を急がず、まず今の状況を責めない形で見ていきます。

家族と話せない反応を抱える人はほかにもおり、まず自分を責めずに眺めてかまいません。
家族と話せない反応を抱える人はほかにもおり、まず自分を責めずに眺めてかまいません。

一般的な説明とあなたの状況が逆なのはなぜか

場面緘黙症は、多くの記事で家では話せるのに学校や職場では話せない状態と説明されます。この定義だけを読むと、家族とこそ話せない自分は当てはまらないように感じてしまいます。

けれど、家族や親の前でだけ声が出ないという逆の悩みを抱えた人は、確かにいます。実際、知恵袋には「家では話せない、これは場面緘黙に当てはまるのか」という問いが繰り返し投げかけられています。

つまり、あなたの状況が特別におかしいわけではなく、一般的な説明の枠からこぼれやすいだけとも言えます。まずはその食い違いから整理していきます。

話そうとしても声が出ないときは、意思の弱さではなく体の緊張反応が関わっています。
話そうとしても声が出ないときは、意思の弱さではなく体の緊張反応が関わっています。

声が出ないとき体と心に起きていること

話そうとした瞬間に喉が固まる、頭では言葉が浮かんでいるのに音にならない。これは意思の弱さではなく、強い緊張が身体の反応として出ている状態に近いものです。

家族という本来安心できるはずの相手でも、返事の失敗や相手の反応を先に予期して、体がこわばることがあります。「うん」だけを返す形が続くと、それが反応の型として固定していくこともあります。

誰にも言えないまま何年も続くと、これは自分の性格なのだと思い込みやすくなります。けれど、状況によって話せたり話せなかったりするなら、それは固定した性格というより、場面に対する反応と見るほうが近いのかもしれません。

自分でも理由が分からず、後から自己嫌悪に襲われるかもしれません。まずは話せないことそのものを責める前に、体で何が起きているのかを眺めてみてください。

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これは場面緘黙症なのか、それとも別の何か

家族と話せない状態が何にあたるのか、名前を知りたい気持ちは自然なものです。ここでは断定を避けながら、いくつかの見方を並べて置きます。

診断名を急がず、複数の見方をいったん並べて整理することが次の相談につながります。
診断名を急がず、複数の見方をいったん並べて整理することが次の相談につながります。

家族の前でも話せない重症型と全緘黙

場面緘黙には重さの幅があります。済生会の解説では、症状が軽症型・中間型・重症型に分けられ、重症型には家族内でも発話できない場面があると記されています。

さらに、家族を含むすべての場面で話せなくなる状態は全緘黙と呼ばれます。ダイヤモンド・オンラインの取材記事でも、大人になっても家族と話せない当事者の存在が紹介されています。

家族と話せないという状態は、医学的な枠組みの中にも位置づけられる場合がある、ということです。ただし、これは自己診断の材料ではなく、可能性の一つとして知っておく程度にとどめてください。

DSM-5からみた「家庭が話せない場面になるとき」

診断の国際基準であるDSM-5では、場面緘黙は他の状況では話せるのに、特定の社会的状況で一貫して話せない、その状態が1か月以上続き、学業や仕事、対人関係を妨げている、といった観点で捉えられます。

一般には特定の場面イコール学校や職場と想定されがちですが、人によっては家庭がその特定の場面になり得るのか、という問いが残ります。ここは専門家の間でも整理が難しい部分です。

一つに決めつけず、特定の場面・すべての場面・別の背景という見方を並べて考えます。
一つに決めつけず、特定の場面・すべての場面・別の背景という見方を並べて考えます。

だからこそ、当てはまるかどうかを一人で判断しきる必要はありません。名前をつけることより、支援が必要な状態かどうかで考えるほうが現実的です。

場面緘黙以外に考えられる背景

家族の前で話せない背景は、場面緘黙だけとは限りません。家庭内のストレスや関係のこじれ、社交不安が家庭にまで広がっているケースなど、複数の可能性が並びます。

たとえば、家の中で否定される経験が積み重なると、言葉を控えることで自分を守っている場合もあります。これは性格ではなく、身についた反応と見ることもできます。

どれか一つに決めつけず、いくつかの見方を持っておくことが、次に相談するときの助けになります。

「親のせい」でも「わがまま」でもない

家族と話せないと、自分を責めたり、逆に親を責めたりと気持ちが揺れやすくなります。ここでは原因のとらえ方を、落ち着いて見ていきます。

親のせいでもわがままでもない一方で、感じているつらさは大切に扱ってよいものです。
親のせいでもわがままでもない一方で、感じているつらさは大切に扱ってよいものです。

育て方と場面緘黙の因果関係は認められていない

場面緘黙について、親の育て方や愛情不足が直接の原因だとは、現在の研究では認められていません。生まれ持った不安の感じやすさなど、複数の要因が関わると考えられています。

この事実は、自分を責めている当事者にも、親にも知ってほしいところです。ただし、原因が育て方でないことと、家族関係の中で感じてきたつらさは、別の話として扱えます。

原因論と、いま感じているしんどさの正当性は切り分けてかまいません。つらかった記憶を、無理に打ち消す必要はないのです。

親のせいだと責める気持ちも、自分がおかしいと責める気持ちも、どちらも自然に湧いてくるものです。どちらか一方に決めなくても、まずはその揺れごと抱えたままで大丈夫です。

原因を誰かのせいにせず、今あるつらさは別のものとして大切に扱えます。
原因を誰かのせいにせず、今あるつらさは別のものとして大切に扱えます。

親の前だとより話さなくなるという見方(仮説)

海外の緘黙の専門家からは、緘黙のある人は親の前でより話さなくなることがある、という問題提起もされています。親が代わりに話してくれると無意識に学習している、といった見立てが挙げられています。

ただし、これは文献でも十分に扱われていない仮説の段階の見方です。あなたの状態がこれに当てはまる、と決まったわけではありません。

そういう見方もある、という程度に受け取りつつ、自分の感覚と照らし合わせてみてください。

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家族と話すために今日からできる小さな一歩

すぐ話せるようになることを目標にすると、かえって苦しくなりがちです。ここでは、話す以外も含めた小さな進め方を並べます。

声だけを目標にせず、メモやうなずきなど伝わる方法から小さく始められます。
声だけを目標にせず、メモやうなずきなど伝わる方法から小さく始められます。

話す以外で気持ちを伝える方法

声が出ないときは、無理に言葉にこだわらなくてかまいません。筆談やメモ、チャット、うなずきなど、言葉以外の手段でも意思は十分に伝わります。

家族に対しても、口頭が難しければ書いて渡す、メッセージを送るという形があります。いきなり長く話そうとせず、伝わればよいと考えるほうが、体はゆるみやすくなります。

話せる範囲を家庭で少しずつ広げる

支援の現場では、安心できる場面から少しずつ話せる範囲を広げる進め方がとられます。REONカウンセリングなどは、話せる人・場面の境界線を広げるという捉え方を紹介しています。

家庭でも、まず一言の返事から、次に短い会話から、と段階を細かく刻むことがコツです。明日から話すと大きな目標を課すより、小さくできたことを積み重ねるほうが続きます。

書くことや一言の返事から始め、話せる範囲を小さく広げていく方法があります。
書くことや一言の返事から始め、話せる範囲を小さく広げていく方法があります。

大人になってからでも変えられる

子どもの頃から続いていると、もう手遅れではないかと感じるかもしれません。けれど、大人になってからでも話せる場面が広がっていくケースはあります。

大人の場合、職場の電話や会議での発言、面接など、声を出す場面での困りごととして表れやすいです。子どもの頃から持ち越してもう治らないと感じている人でも、環境や関わり方が変わる中で、少しずつ楽になっていくことはあります。

信頼できる関係ができたり、環境が変わったりしたことがきっかけになることもあります。場面緘黙は大人にも残りうる一方で、変えられる余地も残されています

一人で抱えないための相談先と安全の確保

最後に、相談先と、その前に確かめておきたい安全の話をします。焦って動くより、順番のほうが大切です。

口頭が難しいときは、チャットやメッセージを相談の入口にしてかまいません。
口頭が難しいときは、チャットやメッセージを相談の入口にしてかまいません。

安全が脅かされているときは話す練習より先に

もし家庭の中で怒鳴られる、否定され続けるといった状況が今も続いているなら、話す練習より先に、自分の安全を守ることが優先です。安心できない場所で無理に話そうとしても、体はゆるみません。

眠れない、食べられない、消えたい気持ちが浮かんでくるといったサインがあるときは、一人で抱えないでください。こうした状態は、我慢して乗り切るものではありません。

相談できる場所を具体的に知る

相談先には、次のような場所があります。いきなり全部でなく、近いところから一つで十分です。

  • 心療内科・精神科(子どもや学生なら児童精神科)
  • 自治体の保健センター、発達相談窓口
  • 学校のスクールカウンセラー
  • 場面緘黙の当事者・家族の会、かんもくネットなどの情報源

公認心理師の高木潤野氏は、場面緘黙かどうかの見極めよりも、その人に支援が必要かどうかが大事だと述べています。改善の道筋を一緒に考えてくれる専門家を探す、という視点も助けになります。

安全を優先し、合う相談先を選び、書く形からつながってもかまいません。
安全を優先し、合う相談先を選び、書く形からつながってもかまいません。

話すのが難しい人でも使える相談の形

いきなり口頭で相談するのはハードルが高い、と感じる方も多いはずです。今は、チャットやメッセージなど、話さずに使える相談の形も増えています。

家族と話せないことが前提でも、使える入口はあります。声を出すことをゴールにせず、まずは自分の状態を誰かと分け合うところから始めてみてください。

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監修者: 石川蓮(公認心理師)

公認心理師、行動心理士。1997年生まれ。北里大学・大学院卒業。その後、公認心理師と行動心理士の資格取得。
在学中は高齢者や生産人口の色覚異常や朝型夜型特性が睡眠に与える効果等の研究を行う。
大学院卒業後、大学病院附属の研究所にてカウンセリングやデータマネジメント担当として勤務。また、都立高校の心理学講師としても勤務。
「心の悩みを持つ方のそばに寄り添う」をモットーに業務遂行しております。

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