家族が解離性同一性障害です。どう接して何と言えばいいものですか?

監修者の石川蓮(公認心理師)先生より

ご家族の戸惑いは、それだけ相手を大切に思っている証でもあります。

ただ解離の現れ方や必要な支えは人それぞれで、ご家族だけで抱える必要はありません。

気がかりが続くときは、主治医や地域の相談窓口に状況を整理して伝えてみてください。

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30代女性(会社員)

半年ほど前から、一緒に暮らすパートナーに解離性同一性障害があると分かりました。

先日は仕事から帰ると、話し方や雰囲気がいつもと違っていて、前日に交わした約束も覚えていない様子でした。

つい責めるような口調で、昨日も伝えたはずだと持ち出してしまい、相手が黙り込んだことを今も引きずっています。

ココラボ相談室からの回答

目の前で雰囲気が変わったり、交わしたはずの約束が伝わっていなかったりすると、戸惑うのは自然なことです。とっさに出た言葉を後から悔やんでしまうのも、それだけ相手を大切に思っているからなのだと思います。

この記事では、つい言ってしまいがちな言葉との距離の取り方と、その代わりに渡せる声かけを一緒に整理していきます。

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家族が接し方に迷う場面

解離性同一性障害(解離性同一症、DID)のある家族やパートナーと暮らしていると、これまで通りの関わり方では戸惑う場面が出てきます。ここでは、特に接し方に迷いやすい二つの場面を取り上げます。正しい対応を一つに決める前に、まず何が起きているのかを整理してみましょう。

急な変化に迷うときは、まず何が起きているのかを落ち着いて整理します。
急な変化に迷うときは、まず何が起きているのかを落ち着いて整理します。

人格交代に驚いたとき

話し方や表情、好みが急に変わると、別の人と向き合っているような感覚になり、言葉に詰まってしまうことがあります。交代人格は本人の意思で出し入れできるものではなく、つらい体験から心を守るために働いてきた一部だと考えられています。

驚いてうろたえても、それは関心の薄さではなく、相手を大事に思う気持ちの裏返しでもあります。声を荒げず、いつもと同じトーンで一呼吸おくだけでも、その場の張りつめた空気はやわらぎます。

記憶が抜けているとき

昨日交わした約束を相手が覚えていないと、はぐらかされたように感じて問い詰めたくなるかもしれません。けれど記憶の空白は本人にも制御できない症状で、嘘や言い逃れとは性質が違います。

本当に覚えていないのかと念を押すより、その件はこうだったよと事実を静かに補うほうが、相手の混乱は小さくなります。覚えていないことを前提に置くと、家族の側もやり取りが楽になります。

まず避けたい言葉や態度

良かれと思った一言が、結果として相手を追い詰めてしまうことがあります。ここでは、解離性同一性障害のある人に向けて避けたい言葉や態度を整理します。どれも特別なものではなく、つい口から出やすいものばかりです。

演技や甘えと決めない

症状が理解しにくいぶん、演技ではないか、甘えているのではという疑いは浮かびやすいものです。けれど詐病と疑われる体験は、当事者が最も傷つく場面の一つで、症状の悪化や周囲への不信につながります。

本人の中では確かに起きている現実として受け止める。その姿勢が、相手が安心して症状を打ち明けられる土台になります。

別人格を責めない

特定の人格だけを邪険に扱ったり、あの人格のせいだと責めたりするのは避けたい関わりです。交代人格はそれぞれ役割を担ってきた本人の一部で、責められると人格同士の対立や自傷につながることもあります。

いま目の前にいない人格も、どこかでそのやり取りを聞いていると考えておくと、言葉の選び方は自然と落ち着きます。

過去を聞き出さない

どんなつらいことがあったのか、原因を知りたくなる気持ちは自然なものです。けれど興味本位で過去のトラウマや、人格の名前・年齢を聞き出そうとすると、かえって症状を強め、本人の不安を大きくします。

知ろうとするより、本人が話したくなったときにそばで聞ける状態でいる。それだけで十分に支えになります。

疑う、責める、聞き出す関わりは、相手の不安を強めやすいものです。
疑う、責める、聞き出す関わりは、相手の不安を強めやすいものです。

安心につながる声かけ

では、解離性同一性障害のある家族には何と言えばいいのか。ここでは、かける言葉に迷ったときの考え方を整理します。完璧な正解を探すより、安心が伝わる関わりを軸にしてみてください。

そばにいると伝える

気の利いた言葉が見つからなくても、ここにいるよ、急がなくていいよ、という姿勢は十分に伝わります。むしろ毎日のトーンが一定であることのほうが、どんな言葉よりも安心につながることがあります。

声かけを正解探しにしてしまうと、家族の側が先に疲れてしまいます。何を言うかと同じくらい、態度が日によってぶれないことを大事にしてみてください。

一定した穏やかな態度は、言葉以上に安心を伝えることがあります。
一定した穏やかな態度は、言葉以上に安心を伝えることがあります。

わかるよ以外の言葉

共感を込めて、わかるよ、と返したくなる場面は多いものです。けれど同じ体験をしていない人からのその一言は、本当に分かるはずがないという反発を生むこともあります。

代わりに、同じ経験はしていないけれど理解したいと思っている、というように、分からなさを残したまま寄り添う言い方のほうが届きやすいです。よく耐えてきたね、と今までを労う言葉も支えになります。

休んでいいを伝える

学校や仕事に行けない、調子が出ないと訴えるとき、励ますより、今は休む時間なんだと受け取るほうが回復を助けます。怠けと見なさず、立ち止まることを許す姿勢が大切です。

頑張ってと背中を押すより、ここでは頑張らなくて大丈夫、という余白のほうが、張りつめた心をゆるめてくれます。迷ったときは、次のような置き換えが目安になります。

つい言ってしまう言葉代わりに渡せる言葉
演技じゃないの/甘えでしょつらかったんだね、ここにいるよ
その気持ち、わかるよ同じ経験はしていないけど、理解したいと思ってる
頑張って/しっかりして今は休んでいい、頑張らなくて大丈夫

日常でできる家族の支え

特別な技術がなくても、日々の暮らしの中でできる支えがあります。ここでは、解離性同一症のある人と暮らすうえで取り入れやすい工夫を挙げます。どれも完璧にこなす必要はなく、できる範囲で構いません。

約束を見える形にする

記憶の空白があると、口約束は行き違いのもとになりがちです。そこで、決めごとや予定を見える形に残しておくと、お互いに確認でき、責めずに済みます。

共有のメモやカレンダーに書いておく、写真に撮っておくなど、後から二人で見返せる形にしておくと安心です。誰が悪いという話にならずに済みます。

トリガーを一緒に減らす

解離の症状は、特定の音や場所、状況が引き金(トリガー)になって強まることがあります。何の前後で不調が出やすいかを、本人と一緒にゆるやかに見つけていけると、避けやすくなります。

無理に原因を特定しようとせず、これがあると落ち着かないみたい、という気づきを共有するくらいの距離感が続けやすいです。

平穏な環境を整える

安心して過ごせる平穏な日々は、解離性同一性障害の回復を後押しすると言われています。刺激の少ない生活リズムや、急かされない時間を整えることが、家族にできる大きな支えです。

精神科医による解説でも、安全な環境では解離の症状が次第に和らいでいく傾向があるとされています(日本精神神経学会)。いまの穏やかな関わりには、それだけの意味があります。

日常の支えは、小さな工夫を無理なく続けることから始められます。
日常の支えは、小さな工夫を無理なく続けることから始められます。

家族だけで抱えない線引き

支える側にも限界があり、抱え込みすぎると共倒れになりかねません。ここでは、家族や友人が自分を守るための線引きを考えます。これは冷たさではなく、関係を続けるための土台です。

支える側の疲れを見る

すべての場面に全力で応じようとすると、心も体もすり減ってしまいます。眠れない、気持ちが沈む、相手に優しくできない、といった変化は、休息と相談が必要なサインです。

支える人が元気でいることは、本人の安定にもつながります。自分の状態にも、ときどき目を向けてあげてください。

怖さを感じたとき

激しい人格交代や攻撃的な言動に、恐怖を感じる場面もあるかもしれません。怖いと感じること自体は自然な反応で、無理に受け止め続ける必要はありません。

まず自分と相手の安全を確保し、距離を取ってよいのです。そのうえで、抱えきれない部分は次に挙げる相談先に委ねる選択肢があります。

専門家に相談したいサイン

家族の関わりだけでは支えきれない局面もあります。ここでは、解離性同一性障害のある家族について、専門家へ相談したいサインを整理します。早めに頼ることは、決して負けではありません。

安全や家族の限界に関わるサインがあるときは、早めに専門家へつなぎます。
安全や家族の限界に関わるサインがあるときは、早めに専門家へつなぎます。

自傷や希死念慮がある

自分を傷つける言動や、消えてしまいたいといった言葉が見られるときは、家族だけで抱えず、できるだけ早く専門家につなぐ場面です。否定も過剰な反応もせず、つらさを受け止めながら、主治医や相談窓口に状況を伝えてください。

もう大丈夫と自己判断せず専門家と一緒に見守る体制をつくることが、安全につながります

激しい混乱や暴力がある

場所を選ばない激しい混乱や、暴力的な言動が続くときも、相談のタイミングです。まず安全を確保し、落ち着いた声で接しつつ、対応が難しいと感じたら無理を続けないでください。

環境を変えることが回復のきっかけになる場合もあり、入院や専門的なケアが選択肢になることもあります。

医療機関と相談窓口

解離性同一症の治療は、精神療法を中心に、必要に応じて薬物療法や環境調整を組み合わせて進むのが一般的です。薬は症状そのものより、不安や気分の落ち込みなど併存する状態を和らげる目的で使われることが多いとされています。

まずは精神科や心療内科のほか、地域の精神保健福祉センターや保健所でも相談できます。どの人格の対応に困っているか、生活にどんな支障が出ているかを整理して伝えると、より実際的な助言が得られます。困ったときに頼れる先があるという安心は、本人にも家族にも、静かな支えになります。

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監修者: 石川蓮(公認心理師)

公認心理師、行動心理士。1997年生まれ。北里大学・大学院卒業。その後、公認心理師と行動心理士の資格取得。
在学中は高齢者や生産人口の色覚異常や朝型夜型特性が睡眠に与える効果等の研究を行う。
大学院卒業後、大学病院附属の研究所にてカウンセリングやデータマネジメント担当として勤務。また、都立高校の心理学講師としても勤務。
「心の悩みを持つ方のそばに寄り添う」をモットーに業務遂行しております。

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