仮面うつ病とうつ病って何が違うの?検査では異常なしなのに体の不調が続いてつらい

監修者の石川蓮(公認心理師)先生より

検査では異常がないのに、頭痛やだるさなどの不調が長く続く。そんなとき、原因が分からないこと自体が心の大きな負担になっていきます。

体の症状が前面に出るうつ病は、ご本人も周囲も気づきにくいものです。この記事が、ご自身の状態を落ち着いて整理し、必要な相談につながるきっかけになれば幸いです。

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40代女性(パート・アルバイト)

半年ほど前から頭痛と強いだるさが続いています。内科で検査を受けても異常はないと言われ、胃腸科や整形外科も回りましたが原因が分かりません。

最近はパートを休む日も増え、家族には疲れているだけと言われます。調べるうちに仮面うつ病という言葉を見つけましたが、うつ病と何が違うのでしょうか。気分の落ち込みは、あまり感じていません。

ココラボ相談室からの回答

ご相談ありがとうございます。

検査では異常がないのに、体のつらさだけが続いていく。その状態が周りに伝わらないことも、大きな負担になってきたのではないでしょうか。

この記事では、仮面うつ病とうつ病の違いを整理しながら、続く体の不調とどう向き合い、どこに相談できるのかを一緒に考えていきます。

検査で異常なしでも続くつらさは気のせいではない

検査の数値に表れなくても、続いているつらさは現実のものです。
検査の数値に表れなくても、続いているつらさは現実のものです。

まずお伝えしたいのは、検査に表れないつらさも現実の不調だということです。この章では、原因の分からない体調不良が続くとき、何が起きている可能性があるのかを整理します。

頭痛やだるさが実際に続いているのに、検査の数値には何も出ない。この経過をたどる人は決して珍しくなく、気のせいと片づけてよいものでもありません。

医療の現場では、こうした状態の背景に心の不調が隠れている場合があることが古くから知られています。その代表的な呼び名のひとつが、仮面うつ病です。

体の不調をきっかけにいくつもの科を回り、時間をかけてようやく心の可能性にたどり着く人は少なくありません。検査で異常がないことは、つらさが存在しないことを意味しないのです。

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仮面うつ病とうつ病は何が違うのか

この章では、仮面うつ病という言葉の意味と、うつ病との関係を整理します。自律神経失調症や似た名前の言葉との違いにも触れながら、混乱しやすいところをほどいていきます。

身体症状が「仮面」になる仕組み

仮面うつ病とは、気分の落ち込みなどの精神症状よりも、頭痛や倦怠感といった身体症状が前面に出ているうつ病を指す呼び名です。体の症状がまるで仮面のように心の不調を覆い隠して見えなくすることから、この名前がつきました。

心の変化より先に、頭痛やだるさなど体の不調が目立つことがあります。
心の変化より先に、頭痛やだるさなど体の不調が目立つことがあります。

1950年代から使われてきた古い概念で、心理学事典にも項目があるほど、専門家の間では以前から知られてきた状態です。

心のエネルギーが落ちているとき、その変化が必ずしも気分として自覚されるとは限りません。感情よりも先に、体のほうが悲鳴を上げることがあるのです。

正式な診断名ではない通称

仮面うつ病は、現在の診断基準であるDSMに載っている正式な病名ではありません。あくまで症状の現れ方を表す通称として、主に日本で使われてきた言葉です。

そのため、病院で仮面うつ病という診断名がつくというより、診察の結果うつ病と診断され、その現れ方が身体症状中心だったという整理になります。別の病気ではなく、うつ病のひとつの現れ方と考えると分かりやすいはずです。

うつ病との違いは症状の現れ方

一般的なうつ病では、気分の落ち込みや、何をしても楽しめない感覚といった精神症状が中心に自覚されます。一方、仮面うつ病と呼ばれる状態では精神症状の自覚が乏しく、体の不調の訴えが先に立ちます。

つまり両者は別々の病気ではなく、同じうつ病の症状がどちらの面から強く見えているかという違いです。うつ病の初期には身体症状のほうが先に目立つことも多いとされ、仮面うつ病はうつ病の入り口の姿である場合もあります。

仮面うつ病は別の病気ではなく、うつ病が体の症状を中心に表れた状態です。
仮面うつ病は別の病気ではなく、うつ病が体の症状を中心に表れた状態です。

だからこそ、気分の落ち込みを感じていないから自分はうつ病ではない、と結論づけてしまうのは早いのです。

自律神経失調症や疲れとの見分け方

体の不調が続くとき、候補としてよく挙がるのが自律神経失調症や単なる疲れです。自己判断で確定することはできませんが、目安になる違いはあります。

状態特徴の目安
うつ病落ち込みや楽しめなさが2週間以上続き、生活に支障が出る
仮面うつ病頭痛やだるさなど体の症状が前面に出て、気分の変化は自覚しにくい
自律神経失調症気分や体調の波が大きく、イライラなど上下の変動が出やすい
一時的な疲れ休息や睡眠でおおむね回復し、楽しめることは楽しめる

ここで大切なのは、休んでも回復しない不調がどれくらい続いているかという視点です。数日で戻る波ではなく、数週間単位で続く変化かどうかを目安にしてみてください。

微笑みうつ病など似た言葉との混同

うつ病の周辺には、微笑みうつ病や非定型うつ病など、似た言葉がいくつもあります。微笑みうつ病は人前で明るく振る舞うことで内面のつらさが隠れる状態を指し、体の症状の陰に心の不調が隠れる仮面うつ病とは、隠れ方が異なります。

名前の違いに迷うより、今のつらさが心と体のどこに出ているかを整理します。
名前の違いに迷うより、今のつらさが心と体のどこに出ているかを整理します。

ネット上ではこれらの言葉が混同されて説明されていることもあります。名前の分類に迷うよりも、自分のつらさがどこに出ているかへ目を向けることが、状態を理解する近道です。

こんな体の不調やサインが続いていませんか

この章では、仮面うつ病で現れやすいと言われる症状やサインを整理します。ご自身の最近の状態と照らしながら、当てはまるものがないか確かめてみてください。

頭痛やだるさなど現れやすい身体症状

仮面うつ病で訴えられやすいのは、次のような身体症状です。

  • 頭痛、肩こり、首や背中のこわばり
  • 強いだるさや疲れやすさ
  • 胃の不快感、食欲不振、下痢や便秘
  • 動悸、息苦しさ、めまい
  • 寝つけない、眠りが浅いなどの不眠

こうした症状は、同時にいくつも重なったり、場所を変えながら続いたりすることがあります。複数の臓器が一度に悪くなることは多くないため、あちこちの不調が移り変わりながら長く続く場合は、心の疲れも視野に入れる価値があります。

痛み、だるさ、不眠が重なって長く続くときは、心の疲れも視野に入れます。
痛み、だるさ、不眠が重なって長く続くときは、心の疲れも視野に入れます。

朝がつらい・楽しめない気づきのサイン

うつ病には、朝方に調子が悪く、午後から夕方にかけて少し楽になる日内変動が見られることがあります。朝だけ極端に起きられない、午前中の不調が重いという場合は、ひとつのサインです。

また、以前は楽しめていた趣味や人との会話が、楽しいと感じられなくなっていないでしょうか。体の症状に気を取られていると見落としやすいのですが、この変化は心のエネルギーの低下を示す大事な手がかりです。

不調が始まった時期に、仕事や家庭のストレスが重なっていなかったかを振り返ってみることも、状態の整理につながります。

なりやすいと言われる性格の傾向

仮面うつ病になりやすいとされるのは、真面目で我慢強く、完璧主義的な傾向のある人だと言われています。自分に厳しい人ほど、気分の不調を気のせいや疲れのせいと解釈して、後回しにしやすいのです。

心理学では、自分の感情に気づいて言葉にすることが苦手な傾向を失感情症(アレキシサイミア)と呼び、心身の不調との関連が指摘されています。感情が言葉にならない分、体が代わりに訴えていると考えると、身体症状の意味が少し違って見えてきます。

我慢強い人ほど、日常を続けながら自分の消耗を後回しにしがちです。
我慢強い人ほど、日常を続けながら自分の消耗を後回しにしがちです。

つらさを認めることは弱さではありません。むしろ、体からのサインを受け取れることのほうが、回復に向かう力になります。

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つらさを我慢せず相談へつなぐために

ここからは、実際にどう動けばよいかを順番に整理します。受診の流れと伝え方が分かるだけでも、相談への心理的なハードルは下がるものです。

まず身体の検査、次に心の可能性

最初に大切なのは、体の病気が隠れていないかを内科などで確認することです。甲状腺の病気や貧血など、身体の疾患でも似た症状が出ることがあるためです。

そのうえで、検査に異常がないのに不調が2週間以上続いているなら、心療内科や精神科への相談を選択肢に入れてみてください。体の検査を受けることと、心の可能性を考えることは対立せず、並行して進めてよいのです。

すでにいくつもの科を回っている場合は、その経過自体が大切な情報になります。これまでの検査結果が分かるものがあれば、持参すると診察がスムーズです。

体の病気を確認しつつ心の可能性も相談し、これまでの経過を伝えます。
体の病気を確認しつつ心の可能性も相談し、これまでの経過を伝えます。

病院でどう伝えれば届くか

心療内科や精神科では、症状を時系列で伝えると状態が届きやすくなります。いつから、どんな不調が、どの時間帯に強く、生活にどんな支障が出ているかを、簡単なメモにして持っていく方法がおすすめです。

気分の落ち込みを自覚していなくても構いません。検査では異常がないのに体の不調が続いている、という事実をそのまま伝えることが、適切な見立てへの入り口になります。

治療はうつ病と同じ休養・薬・対話

仮面うつ病と呼ばれる状態への治療は、基本的にうつ病と同じです。十分な休養を土台に、必要に応じた薬物療法、カウンセリングなどの精神療法を組み合わせて進めていきます。

どの方法をどう組み合わせるかは状態によって異なり、主治医との相談のなかで決まっていきます。早めに相談するほど負担の少ない治療で済みやすいとも言われており、我慢を重ねることに利点はありません。

休養を土台に、必要に応じて薬や対話を組み合わせて回復を支えます。
休養を土台に、必要に応じて薬や対話を組み合わせて回復を支えます。

無理を続ける考え方のクセそのものを、カウンセリングで見つめ直していくことが、再発を防ぐ支えになる場合もあります。

家族や周りの人ができる支え方

最後に、身近な人が体の不調を訴え続けているときの関わり方を整理します。周囲の受け止め方は、本人が相談へ踏み出せるかどうかを左右します。

「気のせい」と言わず受診を後押しする

検査で異常がなかったと聞くと、周囲はつい、気のせいではないかと言いたくなります。しかし本人にとって不調は紛れもない現実であり、その一言が、誰にも分かってもらえないという孤立感を深めてしまいます。

つらさをそのまま受け止めたうえで、一緒に受診先を探す、通院に付き添うといった具体的な後押しが支えになります。説得しようとするより、心配していることが伝わるほうが先です。

一人で抱えないための相談先

一人で抱えず、身近な人や専門家と一緒に状態を整理していければ十分です。
一人で抱えず、身近な人や専門家と一緒に状態を整理していければ十分です。

厚生労働省の患者調査では、うつ病を含む気分障害で医療機関にかかっている人は170万人を超えると報告されています。心の不調は特別なことではなく、そのぶん相談の窓口も各地に整えられています。

いきなり受診に踏み切れない場合は、厚生労働省の相談窓口案内であるまもろうよ こころや、各都道府県の精神保健福祉センターなど、公的な相談先から始める方法もあります。

検査で異常なしと言われ続けたつらさは、数字に表れなくても確かにそこにあります。仮面うつ病という言葉は、そのつらさに名前と道筋を与えてくれるひとつの手がかりです。

体の声は、心の状態を映す鏡でもあります。一人で確かめきろうとせず、信頼できる人や専門家と一緒に、少しずつ整理していければ十分です。

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監修者: 石川蓮(公認心理師)

公認心理師、行動心理士。1997年生まれ。北里大学・大学院卒業。その後、公認心理師と行動心理士の資格取得。
在学中は高齢者や生産人口の色覚異常や朝型夜型特性が睡眠に与える効果等の研究を行う。
大学院卒業後、大学病院附属の研究所にてカウンセリングやデータマネジメント担当として勤務。また、都立高校の心理学講師としても勤務。
「心の悩みを持つ方のそばに寄り添う」をモットーに業務遂行しております。

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