ブランケット症候群って大人の場合どんな心理ですか?寝るときだけ毛布が手放せません

監修者の石川蓮(公認心理師)先生より

大人になっても毛布やぬいぐるみが手放せないことを、ひそかに気にしている方は少なくありません。

それは心理学では、安心を保つための自然なはたらきと考えられており、決して恥ずかしいことではないのです。

この記事では、手放せない心理の背景と、無理のない付き合い方を一緒に整理していきます。

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20代女性(会社員)

子どもの頃から使っているタオルケットがあり、寝るときだけどうしても手放せません。

一人暮らしの今も、それがないと眠れる気がしないんです。

先日、友人との旅行に持っていけず、ほとんど眠れませんでした。

大人なのにおかしいのかなと思うと、誰にも言えずにいます。

ココラボ相談室からの回答

ご相談ありがとうございます。

大切にしてきたものが手放せないことを、誰にも言えないまま抱えてこられたのですね。

ブランケット症候群と呼ばれる状態は大人にも見られるもので、決してめずらしくありません。

この記事では、毛布が手放せない心理的な背景と、無理にやめようとしない付き合い方を一緒に整理していきます。

大人になってもブランケットが手放せないのは変じゃない

まずは、毛布が手放せない自分をどう受け止めればよいのかから整理します。解決を急ぐ前に、この悩みの輪郭を一緒に眺めてみましょう。

「人に言えない」恥ずかしさの正体

寝るときだけ毛布やタオルケットがないと落ち着かないこと自体は、生活に大きな支障を生むものではありません。それなのにつらさを感じるのは、大人なのに恥ずかしいという気持ちを、誰にも話せないまま抱えているからではないでしょうか。

実際、当事者の体験談では、手放せないことよりも、そのことを隠し続ける苦しさの方が重かったと語られることがあります。困りごとの中心は毛布ではなく、言えない秘密になっていることにある場合が少なくないのです。

同じ大人の当事者は少なくない

検索してみると、同じ悩みを持つ大人の相談や体験談は数多く見つかります。恋人に隠している、旅行に持っていくか毎回迷う、といった声はごく普通にあるものです。

周りに同じ人がいないように見えるのは、いないのではなく、みんな話していないだけという面があります。睡眠の専門医からも、出張先にお気に入りのぬいぐるみを持っていく中高年の事例が報告されており、年齢を重ねてから続いている人も現実にいます。

同じ習慣を持つ大人は珍しくなく、幼さや心の弱さを示すものではありません。
同じ習慣を持つ大人は珍しくなく、幼さや心の弱さを示すものではありません。

あなたが特別に幼いわけでも、心が弱いわけでもありません。

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ブランケット症候群が大人まで続く心理的な理由

この章では、ブランケット症候群と呼ばれる状態の心理的な背景を整理します。大人まで続くのはなぜか、原因をどう考えればよいかを順に見ていきましょう。

安心毛布と呼ばれる移行対象のはたらき

特定の毛布やぬいぐるみに愛着を持ち、それがあると安心できる状態は、心理学では移行対象という概念で説明されてきました。イギリスの小児科医で精神分析家のウィニコットが提唱したもので、安心毛布やライナスの毛布とも呼ばれます。

移行対象は、幼い子どもが養育者から少しずつ自立していく過程で、不安をやわらげるために生まれる心の支えです。つまり発達の中で自然に生まれる健全なはたらきであって、異常な執着ではありません。

安心の対象は、少しずつ離れながら自分で心を整える力を支えてきました。
安心の対象は、少しずつ離れながら自分で心を整える力を支えてきました。

国内の研究では、幼児期に移行対象を持つ割合は女児で43.9パーセント、男児で32.8パーセントと報告されており、そもそもめずらしい現象ではないことが分かります。

病気でも正式な診断名でもない

ブランケット症候群やライナス症候群という名前は、正式な診断名ではなく俗称です。症候群という響きから病気を連想しやすいのですが、医学的な治療の対象として定義されているものではありません。

大人になっても続いているからといって、それだけで病気や障害と判断されることはない、という点は安心材料として持っておいてよい事実です。

インターネット上には、精神疾患と言い切ったり、当てはまると危険と不安をあおったりする記事も見られます。けれど心理学の定説では移行対象は健全な発達の産物とされており、不安をあおる情報から距離を取ることも自分を守る手段のひとつです。

毛布と穏やかに暮らせているなら、病気と決めつけて急いで手放す必要はありません。
毛布と穏やかに暮らせているなら、病気と決めつけて急いで手放す必要はありません。

愛情不足が原因とはいえない理由

ブランケット症候群は愛情不足のサインではないか、という説明を目にして不安になった方もいるかもしれません。しかし、済生会の小児科医が監修した解説でも、親の愛情不足との関連性は一概に説明できないとされています。

むしろウィニコットは、移行対象はほどよい関わりの中でこそ生まれると述べています。育ちに問題があった証拠ではなく、安心の土台が育っていた証と捉える方が、心理学の定説には近いのです。

ストレスや環境変化で強まることもある

一度は手放したのに、大人になってから執着が戻ってきたという場合もあります。引っ越しや転職、人間関係の緊張など、心理的な負荷が高まった時期に再び強まるのはよくある経過です。

環境の変化で心の負荷が高まると、慣れた安心を求める気持ちが強くなることがあります。
環境の変化で心の負荷が高まると、慣れた安心を求める気持ちが強くなることがあります。

これは子ども返りではなく、自分で自分をなだめる自己調整のはたらきと考えられます。ストレスの高い時期ほど毛布が必要になるのは、心が安心を確保しようとしている自然な反応なのです。

寝るときだけ手放せないのは依存なのかの見極め方

ここからは、寝るときだけ手放せない状態をどう評価すればよいかを整理します。依存という言葉に振り回されないための判断軸を持っておきましょう。

入眠儀式としての役割と睡眠への影響

寝るときだけ毛布が必要という形は、大人の当事者に最も多いパターンです。毎晩同じ感触に包まれて眠ることは入眠の合図となる儀式として機能し、寝つきを助けている面があります。

安心できるアイテムがそばにあると心が落ち着き、リラックスした状態で眠りに入りやすくなるとも言われます。つまり毛布は、睡眠の質を支える道具として働いている場合があるのです。

一方で、旅行や出張で手元にないと眠りにくくなることはあります。そんなときは小さく畳めるサイズのものを持参するなど、眠りの支えとして現実的に扱う方が、無理に断つよりも睡眠の質を守れます。

慣れた毛布は寝る前の合図になり、心を落ち着かせて眠りへつなぐ役割を持ちます。
慣れた毛布は寝る前の合図になり、心を落ち着かせて眠りへつなぐ役割を持ちます。

匂いや肌触りにこだわる感覚のしくみ

洗濯したくない、この匂いでないと落ち着かない、というこだわりにも理由があります。嗅覚は五感の中で唯一、感情や記憶を扱う脳の部位に直接届く感覚で、慣れた匂いは理屈を介さずに安心を呼び起こします。

また、柔らかいものに触れる刺激が副交感神経を優位にし、心拍を落ち着かせることを示した海外の研究もあります。毛布に触れると眠くなるのは気のせいではなく、体の仕組みに沿った自然な鎮静なのです。

発達障害や分離不安との違い

特定の物へのこだわりというと、発達障害の特性や分離不安を心配する方もいます。ただ、移行対象への愛着は発達の一過程で生まれるものであり、発達障害に見られるこだわりとは別のものと考えられています。

見分けの目安のひとつは、こだわりが自宅の中だけに収まっているかどうかです。医師監修の解説でも、自宅では手放せなくても人前では持たずに過ごせるなら、正常な範囲と考えてよいとされています。

  • 自宅や寝るときだけ必要で、外では持たなくても過ごせる
  • ないと落ち着かないが、生活が回らなくなるほどではない
  • 仕事や人間関係を毛布のために避け続けてはいない
自宅では毛布が必要でも、外で日常生活を送れているなら生活への支障は小さいと考えられます。
自宅では毛布が必要でも、外で日常生活を送れているなら生活への支障は小さいと考えられます。

このような状態であれば生活への支障は小さく、対処を急ぐ必要性は低いと考えられます。逆に、ないと強い不安で行動範囲が狭まっている場合は、後述する相談も選択肢になります。

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手放すことをゴールにしない付き合い方

最後に、これからの付き合い方を考えます。やめるかやめないかの二択ではなく、安心を保ったまま選べる道を並べてみます。

周囲が無理に取り上げてはいけない理由

安心の対象を突然取り上げたり処分したりすると、不安が急に強まり、かえってつらくなることが知られています。これは子どもだけでなく大人でも同じです。

家族の毛布やぬいぐるみを勝手に捨てることは、その人の心の安全地帯を奪う行為になり得ます。自分に対しても同じで、恥ずかしいからと衝動的に処分するのはおすすめできません。

パートナーや家族への伝え方

同棲や結婚を前に、打ち明けるかどうか迷う方は多いものです。伝えるなら、寝るときの習慣として昔から続いていて、あると眠りやすい、と事実を淡々と共有する形が負担の少ない伝え方です。

からかわれたり否定されたりしたときに傷つくのは自然なことです。安心の対象を尊重してもらえるかどうかは、その関係に安心していられるかを測るひとつの材料にもなります。すべてを分かってもらえなくても、大切なものとして扱ってもらえるなら、それで十分な場合も多いのです。

大切な習慣として事実を落ち着いて伝え、尊重してほしいことを共有してみましょう。
大切な習慣として事実を落ち着いて伝え、尊重してほしいことを共有してみましょう。

やめたいときの段階的な進め方

生活上の必要から手放したい場合は、急がず段階を踏むのが基本です。触れない時間を15分から少しずつ延ばす、置く場所を決める、小さいサイズに替えるなど、なくても大丈夫だったという経験を積み重ねていきます。

衛生面が気になるときは、同じものを二つ用意して交互に使う方法もあります。匂いや感触が急に変わらないよう、少しずつ慣らしていくのがコツです。

大切なのは、毛布から離れることと並行して、安心できるものごとを増やすことです。入浴や運動、人と過ごす時間など、心が落ち着く選択肢が増えるほど、毛布の役割は自然に小さくなっていきます。

手放したいときも急に捨てず、離れる時間と安心できる選択肢を少しずつ増やします。
手放したいときも急に捨てず、離れる時間と安心できる選択肢を少しずつ増やします。

つらさが続くときの相談の目安

毛布があっても眠れない日が続く、不安の強さで外泊や人付き合いを避け続けている、背景に強い孤独感や気分の落ち込みがある。そんなときは、毛布そのものというより、心の負荷が高まっているサインかもしれません。

その場合は、カウンセリングや医療機関で話してみることも選択肢のひとつです。毛布をやめるための相談ではなく、安心を増やすための相談として使ってよい場所です。一人で抱えたまま頑張り続ける必要はありません。

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監修者: 石川蓮(公認心理師)

公認心理師、行動心理士。1997年生まれ。北里大学・大学院卒業。その後、公認心理師と行動心理士の資格取得。
在学中は高齢者や生産人口の色覚異常や朝型夜型特性が睡眠に与える効果等の研究を行う。
大学院卒業後、大学病院附属の研究所にてカウンセリングやデータマネジメント担当として勤務。また、都立高校の心理学講師としても勤務。
「心の悩みを持つ方のそばに寄り添う」をモットーに業務遂行しております。

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