非定型うつ病の家族への話し方がわからず、些細な一言で怒らせてしまうのが怖い

監修者の石川蓮(公認心理師)先生より

非定型うつ病の家族にどう話せばいいのか、正解を探すほど言葉に詰まってしまう方は多いです。

実は、怒らせてしまったのは言い方のせいというより、症状としての反応であることが少なくありません。

うまく言おうと気負うより、今日はこの辺で、と切り上げる引き際を持っておくと、気持ちが少し軽くなりますよ。

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40代女性(主婦)

夫が非定型うつ病と言われてから、どう話しかければいいのか分からなくなりました。

今日は顔色がいいねと言っただけなのに、急に不機嫌になって黙り込まれてしまって。

何を言っても地雷を踏む気がして、最近は用件だけ伝えて、目も合わせられずにいます。

ココラボ相談室からの回答

ご相談ありがとうございます。

よかれと思った一言で相手が黙り込むと、自分の言葉が悪かったのかと責めたくなりますよね。毎日それが続けば、話すこと自体が怖くなってくるのも、無理のないことだと思います。

この記事では、非定型うつ病と言われた家族の話し方の変化をどう見分けるか、そして関係を保ちながらどう声をかけるかを、一緒に整理していきます。

些細な一言で怒らせてしまうのが怖いあなたへ

非定型うつ病と言われた家族に、どう話しかければいいのか。何を言っても怒らせてしまう気がして、言葉を選ぶだけで疲れてしまう方は少なくありません。まずは、その戸惑いがどこから来ているのかを見ていきます。

あなたの言い方が悪かったわけではない

声をかけた瞬間に相手の表情が変わると、自分の言葉のどこがまずかったのかと探してしまいますよね。ただ、非定型うつ病では他人からの反応にとても敏感になる拒絶過敏性という状態が起こりやすく、悪意のない一言にも強い反応が返ってくることがあります。

つまり相手が怒ったのは、会話の技術の問題というより、症状としての反応である場合が多いのです。あなたの言葉選びが失敗だったと決めつけなくていい、というところから始めてほしいと思います。

相手の反応には症状の影響もあるため、言葉選びの失敗だと自分だけを責める必要はありません。
相手の反応には症状の影響もあるため、言葉選びの失敗だと自分だけを責める必要はありません。

「非定型うつ病」は正式な診断名ではないという前提

話し方を考える前に、ひとつ知っておいてほしいことがあります。非定型うつ病は日本で広まった呼び方で、正式に確立した診断名というわけではありません。専門家の解説でも、報道などを通じて広がった俗称に近いと説明されることがあります。

診断そのものは医師が行うものです。身近な人を勝手にこの言葉へ当てはめて理解しようとすると、かえって会話がぎこちなくなることもあります。ラベルよりも、目の前の相手の状態を見ていくほうが、話し方は考えやすくなります。

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話し方の変化と怒りやすさを見分ける

ここでは、相手の話し方や様子の変化をどう見分けるかを整理します。怒りやすさも含めて、性格ではなく状態として眺める視点を持てると、次の声かけを考えやすくなります。

「以前からの変化」で見る声や言葉数のサイン

話し方が変わったかを見るとき、手がかりになるのは以前と比べてどうかという一点です。精神科医の解説でも、声やテンポは元々の個人差が大きいため、変化かどうかで見ることが早めの気づきにつながるとされています。

例えば、前より声が小さくなった、言葉数が減った、否定的な言い方が増えた。こうした変化が続いているなら、疲れやすさや気分の落ち込みが背景にあるのかもしれません。今日たまたま無口なだけなのか、ここ数週間の変化なのかを分けて見てみてください。

声の大きさや言葉数、否定的な表現は、その人の普段と比べた変化として見ていきます。
声の大きさや言葉数、否定的な表現は、その人の普段と比べた変化として見ていきます。

気分の反応性と話しかけやすい時間帯

非定型うつ病の特徴のひとつに、気分の反応性があります。楽しいことには気分が持ち上がるのに、つらいことには沈む。週末は元気なのに週明けに落ち込む、といった波が出やすいのです。

この波は、周囲から見ると好きなことだけできるわがままに映りがちです。ただ、本人が態度を選んでいるわけではありません。話しかけるなら、気分が上がっている時間帯を選ぶほうが言葉は届きやすくなります。夕方から夜にかけて不調が出やすい人も多いので、込み入った話はその時間を避けるほうが無難です。

過眠・過食・体の重さが会話に与える影響

非定型うつ病では、いくら寝ても眠い過眠や、甘いものを食べたくなる過食、手足が鉛のように重く感じる鉛様の麻痺と呼ばれる強い倦怠感が出ることがあります。米国精神医学会の診断基準DSM-5でも、気分の反応性に加えてこれらが特徴として挙げられています。

体がぐったりしているとき、会話そのものが負担になります。返事が遅い、話が続かないといったことも、やる気のなさではなく体の重さから来ているのかもしれません。布団から出られない朝に大事な話を持ちかけない。それだけでも、会話のすれ違いは減っていきます。

体が重い時間帯は会話自体が負担になるため、大事な話を急がないことも配慮の一つです。
体が重い時間帯は会話自体が負担になるため、大事な話を急がないことも配慮の一つです。

引き金になりやすい言葉に気づく

拒絶過敏性が強いとき、特に反応を招きやすいのが、評価・比較・要求にあたる言葉です。話しかける前に、いま伝えたいのは事実か、気持ちか、それとも要求かを一度分けてみると、地雷を避けやすくなります。

引き金になりやすい言い回しを、少し整理してみます。

反応を招きやすい言葉言い換えの方向
早く治してね(要求)焦らなくていいよ、と余白を残す
昨日は元気だったのに(比較)今日の様子だけを見て言葉にする
気の持ちようだよ(評価)つらいんだね、と受け止める

こうした言い換えは正解ではなく、あくまで角度の一例です。相手の反応を見ながら、その人に合う距離を探っていくものだと考えてください。

関係を壊さない話し方と怒った時の切り上げ方

ここからは、実際にどう声をかけ、もし怒りが出たときにどう会話を収めるかという実践に入ります。うまくやろうと気負いすぎず、引き際を持っておくくらいの気持ちが役に立ちます。

「頑張れ」は状態で使い分ける

励ましてよいのかは、調べても意見が割れやすいところです。一般的なうつ病では頑張れが負担になりやすいと言われる一方、企業向けの解説では、非定型の場合は軽い後押しが本人のためになることもあると、逆の見方が示されています。

見解が割れるのは、状態によって効き方が変わるからだと考えると整理しやすくなります。気分が上がっているときの軽い声かけと、落ち込んでいるときの励ましは、まったく別物です。怒りが出ているときは、励ましも助言もいったん脇に置く。迷ったときは主治医の方針を優先してください。

励まし方を一つに決めず、落ち着きや気分の状態に合わせて共感や見守りへ切り替えます。
励まし方を一つに決めず、落ち着きや気分の状態に合わせて共感や見守りへ切り替えます。

怒り発作が起きた時の会話の切り上げ方

それでも、何気ない一言で怒りのスイッチが入ってしまうことはあります。そんなつもりじゃないと感情的に返すと、拒絶された感覚をかえって強めてしまうので、まずはこちらが落ち着くことが先です。

順番としては、こんな流れが目安になります。

  • 肯定的な意図を短く伝える(心配だっただけだよ)
  • 責めずに聴く姿勢を見せる(どうしてつらくなったのか教えて)
  • それでも収まらなければ、少し距離を取って一人の時間をつくる

怒りが激しいときは、説得しようとしないことがいちばんの引き際です。多くの場合、そのあとに本人が強い自己嫌悪へ襲われます。落ち着いてから、そっと気持ちを聞けるといいですね。

怒りが高まったら、意図を短く伝えて責めずに聴き、収まらなければ距離を取ります。
怒りが高まったら、意図を短く伝えて責めずに聴き、収まらなければ距離を取ります。

受診は身体症状を入口に勧める

まだ受診していない相手に受診を勧めるのは、最も気をつかう場面です。病気だから病院へ、と正面から言うと、拒絶過敏性を刺激して怒りを招きやすくなります。

入口としておすすめなのは、心の話ではなく体の不調から切り出す言い方です。最近眠りが浅そうだから一度相談してみたら、といった形なら、本人も受け止めやすくなります。難しければ、家族だけで先に医療機関へ相談しておくのも、十分に意味のある一歩です。

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話すあなた自身が疲れきらないために

最後に、話しかける側であるあなた自身のことを扱います。相手の機嫌を保つ役を一人で背負い続けると、いつのまにか自分のほうが消耗してしまいます。

言い方の失敗ではなく症状の反応と切り分ける

よかれと思った一言で怒らせてしまうと、自分の伝え方が悪かったのだと責めたくなります。ただ、拒絶過敏性のある相手では、どれだけ言葉を選んでも反応が起きてしまうことはあります。

大事なのは、それを言い方の失敗ではなく症状の反応として切り分ける視点です。相手の機嫌を良くする責任を、あなたが全部引き受ける必要はありません。会話のたびに動悸がする、機嫌をうかがって自分の生活が回らない。そんな状態が続くなら、あなた自身のケアを後回しにしないでほしいと思います。

支える側も一人で抱えず、早めに相談することが自分の心身と生活を守る備えになります。
支える側も一人で抱えず、早めに相談することが自分の心身と生活を守る備えになります。

暴言・暴力や「消えたい」が出たら専門機関へ

ここまでは話し方の工夫の話でしたが、それだけでは対応しきれない場面もあります。暴言や暴力がある、物を壊す、あるいは消えたい・死にたいという言葉が出たとき。これは会話の工夫でどうにかする範囲を超えています。

そうしたときは、一人で抱えずに医療機関や公的な相談先へつないでください。厚生労働省のまもろうよ こころでは、電話やSNSで使える相談窓口が案内されています。話す側であるあなたが相談してよいのだ、というところも、どうか覚えておいてほしいと思います。

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監修者: 石川蓮(公認心理師)

公認心理師、行動心理士。1997年生まれ。北里大学・大学院卒業。その後、公認心理師と行動心理士の資格取得。
在学中は高齢者や生産人口の色覚異常や朝型夜型特性が睡眠に与える効果等の研究を行う。
大学院卒業後、大学病院附属の研究所にてカウンセリングやデータマネジメント担当として勤務。また、都立高校の心理学講師としても勤務。
「心の悩みを持つ方のそばに寄り添う」をモットーに業務遂行しております。

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