発達障害でパニックになるとすぐ泣く…大人なのに恥ずかしい

監修者の石川蓮(公認心理師)先生より

大人になってから涙が出やすくなると、多くの方が「甘えではないか」と自分を責めてしまいます。

でも実際の相談では、その涙が限界のサインだったというケースは少なくありません。

まずは泣いてしまう前後の状況を、責めずに眺めるところから始めてみてください。

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30代女性(会社員)

職場で急に段取りが変わったり、一度仕上げた資料をやり直すよう言われたりすると、頭が真っ白になって涙が出てしまいます。

先日も、上司から予定変更を伝えられた場面で、返事をしようとしたのに声より先に涙がこぼれ、そのまま固まってしまいました。

怒られたわけでもないのに泣いてしまう自分が情けなくて、あとから何度も思い返しては落ち込みます。

ココラボ相談室からの回答

大人になってから、自分でも戸惑うほど涙が出てしまう。
そのことを恥ずかしいと感じている時点で、あなたはもう自分の状態を何とかしようとしているのだと思います。

この記事では、発達特性から涙にたどり着くまでの流れと、泣いたあとに自分を守るための工夫を中心に整理していきます。

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大人なのに泣く恥ずかしさ

泣いたあとに少し休む時間を持つことは、立て直しの一部です。
泣いたあとに少し休む時間を持つことは、立て直しの一部です。

大人になってから、思いがけず涙が出てしまう。その涙そのものより、泣いてしまう自分を恥ずかしいと感じている方は少なくありません。ここでは、その恥ずかしさをいったん脇に置いて、泣くという反応の意味を見直していきます。

泣くのは甘えとは限らない

泣くと、周りから甘えや弱さと受け取られるのではと不安になります。けれど涙は、我慢が限界に届いたときに出る反応でもあります。

強い刺激や急な変化にさらされ、気持ちの処理が追いつかなくなったとき、言葉より先に涙があふれることがあります。これは意志の弱さというより、負荷が一定を超えたサインに近いものです。発達障害の特性がある方の場合、こうした反応が起きやすい傾向も指摘されています。

パニック障害とは別の場合

パニックという言葉から、パニック障害の発作を思い浮かべる方もいます。ただ、発達障害でパニックになると泣く状態は、その発作とは別物として整理されることが多いです。

ここでのパニックは、感情や言動を自分で抑えにくくなった状態を指します。動悸や息苦しさが中心の発作とは、起こり方も背景も異なる場合があります。どちらなのかは自己判断が難しいため、気になるときは専門家に確かめる方が安心です。

人前で泣いた後の自己嫌悪

つらいのは泣いた瞬間よりも、そのあとにやってくることがあります。職場で涙を見せてしまったあと、自分を責め続けてしまう方は多いです。

たとえば会議のあとに一人になり、なぜあの場で泣いたのかと何度も思い返す。この繰り返しが自己肯定感をさらに削り、次に泣くことへの恐れを強めます。泣いた事実と、そのあとの自己嫌悪は、いったん分けて眺めると扱いやすくなります。

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発達特性で涙が出る流れ

大人の発達障害ですぐ泣く背景には、いくつかの流れが重なっています。ここでは、涙にたどり着くまでの道すじを、特性ごとに分けて見ていきます。自分に近いものがあるか、確かめながら読んでみてください。

ASDの感覚過敏と予定変更

予定変更や刺激が重なる流れを知ると、自分の反応を責めにくくなります。
予定変更や刺激が重なる流れを知ると、自分の反応を責めにくくなります。

ASD(自閉スペクトラム症)の特性がある方は、予測できない変化に強い負荷を感じやすいです。突然の予定変更や、曖昧な指示を受けた場面で、頭が真っ白になることがあります。

音や光への感覚過敏も重なると、処理しきれない刺激が一度に押し寄せます。自分なりの段取りやこだわりが崩れたとき、その混乱が涙となって出る場合もあります。本人の中には理由があっても、周りからは見えにくいのが難しいところです。

ADHDの脳内多動と衝動性

ADHD(注意欠如多動症)では、頭の中で考えが次々と湧く脳内多動が知られています。落ち着いて見えても、内側では思考がめまぐるしく動いていることがあります。

嫌なことがあると、不安や焦りがふくらみ、処理の許容量を超えてしまいます。衝動性の強さも重なり、こみ上げた感情を抑えきれずに涙や怒りとして出ることがあります。気持ちの切り替えに時間がかかりやすい点も、背景の一つとして挙げられます。

過剰適応で限界になるとき

特性を隠しながら周りに合わせ続けることを、過剰適応やカモフラージュと呼びます。うまくやれているように見えても、内側では無理が積み重なっています。

この蓄積がある日限界に達すると、小さな一言で涙があふれることがあります。普段きちんとしている人ほど、その落差に自分でも戸惑いやすいものです。溜め込んだ末に出る涙は、あなたが頑張り続けてきた証でもあります。

無理を重ねたあとの涙は、休息が必要なサインとして見直せます。
無理を重ねたあとの涙は、休息が必要なサインとして見直せます。

すぐ泣く前後のサイン

涙は突然に見えて、前後にいくつかのサインを伴うことがあります。ここでは、泣く前と最中、そしてそのあとの状態を分けて整理します。自分の流れが見えると、対処の手がかりもつかみやすくなります。

固まる静かなパニック

パニックというと騒ぐ姿を想像しがちですが、静かに固まる形もあります。注意や予定変更を受けた直後、言葉が出ず、体が動かなくなることがあります。

周りからはぼんやりして見えても、内側では混乱が起きています。このフリーズは、ショックから自分を守ろうとする反応の一つと考えられています。泣く前の段階として、この静かな固まりが起きている方もいます。

涙や怒りがあふれる反応

固まりを越えると、感情が涙や怒りとしてあふれ出ることがあります。しくしくと泣く場合もあれば、抑えきれず声が出たり、苛立ちが癇癪のように噴き出したりする場合もあります。

同じ負荷でも、涙になる人と苛立ちになる人がいて、出方は一様ではありません。発達障害でパニックになると泣く反応も、この感情のあふれの一つの形です。どんな場面で切り替わりやすいかを知っておくと、少し身構えやすくなります。

固まる、涙が出る、疲れるという流れを分けると対処を考えやすくなります。
固まる、涙が出る、疲れるという流れを分けると対処を考えやすくなります。

あとから疲れが出る状態

反応が過ぎたあと、強い疲労感に襲われることがあります。気を張っていた分、涙のあとにどっと消耗が押し寄せる感覚です。

この疲れを無視して動き続けると、翌日以降まで不調が長引きやすくなります。泣いたあとは回復に時間がかかるものだと、あらかじめ見込んでおくと楽です。自分の消耗のパターンを知ることも、大切な自己理解につながります。

泣いた後に自分を守る工夫

涙を完全に止めることは難しくても、そのあとの自分は守れます。ここでは、その場でできる工夫と、周りへの伝え方を整理します。どれも小さな一手ですが、負担を少し軽くする助けになります。

刺激を減らして落ち着く

涙が出そうなときは、まず刺激を減らす方向を試してみてください。人の少ない場所へ移動する、目を閉じる、音を遮るだけでも違います。

イヤーマフやイヤホンで音の量を抑える方法は、感覚過敏がある方に向いています。息をゆっくり長く吐く呼吸を数回繰り返すと、高ぶりが少し落ち着きやすくなります。その場を離れられる場所を、事前に一つ決めておくと安心です。

刺激を減らす工夫は、気持ちを落ち着かせるための現実的な手段です。
刺激を減らす工夫は、気持ちを落ち着かせるための現実的な手段です。

起きたことを短くメモする

落ち着いたあと、何が起きたかを短くメモに残してみてください。きっかけ、そのときの気持ち、体の状態を一言ずつ書くだけで十分です。

  • 何がきっかけだったか
  • どんな気持ちになったか
  • 体はどう反応したか

書き出すと、混ざり合っていた感情を少し客観的に眺められます。同じ場面が続くなら、それがあなたの負荷のパターンを教えてくれます。

周囲に伝える言葉を用意する

その場で説明するのは難しいので、言葉を前もって用意しておくと役立ちます。泣いてしまう背景を、短く伝えられる一文があると心強いです。

たとえば、急な変更が苦手なので早めに教えてもらえると助かります、と伝えておく。落ち着けば戻れるので少し時間をください、という一言も添えられます。配慮を頼むことは、わがままではなく働き続けるための調整です。

起きたことを短く整理しておくと、次に必要な配慮を伝えやすくなります。
起きたことを短く整理しておくと、次に必要な配慮を伝えやすくなります。

ひとりで抱え込まない目安

ここまでの工夫で足りないと感じるときは、相談も選択肢に入ります。ここでは、一人で抱えず専門家を頼る目安を整理します。焦って動く必要はなく、状態を見極める材料として読んでください。

生活や仕事に支障がある

涙やパニックが増え、仕事や生活が回りにくくなっていないかを見てみてください。遅刻や欠勤が続く、業務が手につかないなどは、負荷が高まっているサインです。

自分の工夫だけでは立て直しにくいと感じたら、外の力を借りる段階かもしれません。発達障害者支援センター精神保健福祉センターでは、こうした相談を受けつけています。仕事の悩みが中心なら、就労に関する支援機関に相談する道もあります。

うつや不安が重なるサイン

涙もろさの背景に、別の不調が重なっていることもあります。気分の落ち込みや強い不安が続く場合は、注意して見ておきたい状態です。

眠れない、食欲が落ちる、集中できない状態が二週間以上続くとき。こうした変化が涙と一緒に現れているなら、早めの相談が助けになります。うつ病や適応障害、不安障害などが背景にある場合もあると知っておくと安心です。

専門家に相談したい状態

仕事や生活に支障があるときは、一人で抱えず専門家に相談してよい状態です。
仕事や生活に支障があるときは、一人で抱えず専門家に相談してよい状態です。

発達障害かどうか、パニックの正体が何かは、この記事だけでは判断できません。気になる状態が続くときは、心療内科や精神科で確かめる方が確実です。

カウンセリングでは、泣いてしまう背景や自分の特性を一緒に整理できます。診断を受けることは、自分を責めるためではなく状態を知るための手立てです。一人で結論を出そうとせず、頼れる場所を一つ持っておくだけでも、心の余裕は変わってきます。

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監修者: 石川蓮(公認心理師)

公認心理師、行動心理士。1997年生まれ。北里大学・大学院卒業。その後、公認心理師と行動心理士の資格取得。
在学中は高齢者や生産人口の色覚異常や朝型夜型特性が睡眠に与える効果等の研究を行う。
大学院卒業後、大学病院附属の研究所にてカウンセリングやデータマネジメント担当として勤務。また、都立高校の心理学講師としても勤務。
「心の悩みを持つ方のそばに寄り添う」をモットーに業務遂行しております。

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