自傷行為をカウンセリングで相談したら、やめなさいと言われそうで怖いです

監修者の石川蓮(公認心理師)先生より

自傷について調べていること自体、すでに自分を守ろうとする力が働いている証だと感じます。

カウンセリングは、やめなさいと迫る場ではありません。

やめられない理由ごと、まず話してみられる場所です。

怖さがあって当然なので、その気持ちも含めて持ってきてくださいね。

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20代女性(会社員)

仕事で気持ちがいっぱいになると、つい自分の腕を傷つけてしまいます。

カウンセリングを受けた方がいいのかなと思うのに、行ったらやめなさいと叱られる気がして、予約の画面で手が止まってしまうんです。

やめたいのは本当なのに、その方法を探すことさえ、なんだか後ろめたくて。

こんな相談でも、聞いてもらえるのでしょうか。

ココラボ相談室からの回答

ご相談ありがとうございます。

やめたいのにやめられなくて、そのうえ相談すること自体もこわい。

その板挟みのなかで、この記事を開いてくださったのだと思います。

ここでは、カウンセリングで実際に何を話すのか、そして多くの人がためらう、叱られるのではという心配が実際にはどう扱われるのかを、一緒に整理していきます。

「やめなさい」と言われそうで相談が怖いあなたへ

自傷について相談したい気持ちと、知られたくない気持ち。その両方が同時にあること自体、めずらしいことではありません。まずはこの章で、相談をためらわせているものの正体を、いくつかに分けて見ていきます。

相談前によぎる4つの不安

カウンセリングを考えたとき、多くの人が似たようなところで足を止めます。頭のなかで一番大きくなりやすいのは、次のような心配ではないでしょうか。

  • やめなさいと叱られて、責められるのではないか
  • 傷を見せなければいけないのではないか
  • 無理やり入院や通院をさせられるのではないか
  • 親や学校、職場に伝わってしまうのではないか

これらは、相談してはいけない理由ではなく、あなたが自分を守ろうとしているサインです。 どれも後の章で具体的に触れていくので、今はそう感じて当然とだけ受け取ってもらえたらと思います。

叱られる、知られる、うまく話せないという不安は、相談をためらう自然な気持ちです。
叱られる、知られる、うまく話せないという不安は、相談をためらう自然な気持ちです。

自傷はアピールではなく感情を鎮める対処

自傷には、かまってほしいアピールだという誤解がつきまといます。けれど自傷の臨床に長く携わってきた精神科医の松本俊彦氏の監修資料では、自傷の約96%は誰にも見せず、一人のときに行われていたと報告されています。

つまり多くの場合、自傷は人に見せるためではなく、自分ではどうにもできない怒りや空虚感を、その場でしのぐための孤独な対処になっています。やめたいのにやめられないのは、それだけ抱えている苦しさが大きいからだと考えられています。

また、自傷は特別な人だけのものではありません。厚生労働省研究班が監修する女性の健康推進室ヘルスケアラボでは、中高生のおよそ10人に1人が自傷を経験していると紹介されています。数のうえでも、あなたと同じところで立ち止まっている人は少なくないのです。

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繰り返してしまうのは意志が弱いからではない

自分を責める気持ちが強い人ほど、繰り返す自分を意志が弱いと感じがちです。この章では、なぜやめにくいのかという仕組みと、背景に重なりやすい状態を整理します。

効くから続くという仕組み

自傷には、つらい感情を一時的にやわらげる作用が実際にあるとされています。直後に脳内で痛みをやわらげる物質が出るという研究もあり、効くからこそ手放しにくくなります。

ただしその効果は長くは続きません。根っこの問題は残ったままなので、つらさは戻ってきます。

つらさが一時的に和らいでもまた戻る循環は、意志の弱さではなく対処の仕組みとして整理できます。
つらさが一時的に和らいでもまた戻る循環は、意志の弱さではなく対処の仕組みとして整理できます。

繰り返すうちに慣れが生じ、以前ならしのげた小さなストレスでも手が出やすくなる。この悪循環は、依存の成り立ちとよく似ています。

だからこそ、やめられないのはあなたの弱さではなく、苦しさをしのぐ手立てがまだ他に育っていないからだと考えるほうが、実際に近いといえます。カウンセリングは、その他の手立てを一緒に増やしていく場でもあります。

自傷と自殺は違うが放置はしない

自傷の多くは、死ぬための行為ではありません。むしろ、つらい状況をなんとか生き延びるために続けられていることが多いとされています。

とはいえ、放っておいてよいわけでもありません。自傷を経験した人は、その後の自殺のリスクが高まることも知られています。方法が変わったり増えたりしたときは、危険度が一段上がったサインと考え、早めに専門家へつなぐことがすすめられます。

カウンセリングは、自傷だけを止めるのではなく、背景のつらさを一緒に整理する場でもあります。
カウンセリングは、自傷だけを止めるのではなく、背景のつらさを一緒に整理する場でもあります。

背景に重なりやすい心の状態

自傷があるからといって、必ず特定の病気だとは限りません。ただ、うつや不安、発達の特性、解離、摂食の問題などが関わっていることはあります。

こうした背景は、自分や家族だけで見極めるのが難しい部分です。診断は診察のうえで医師が行うものであり、カウンセリングや受診は、その手前で状態を一緒に整理する場になります。

カウンセリングで実際に話すことと聞かれること

一番知りたいのに、意外と語られないのがこの部分だと思います。この章では、初回の流れやゴールの考え方、守秘の範囲を具体的に見ていきます。

初回に聞かれることと話さなくてよいこと

初回は多くの場合、どんなときに衝動が強まるか、自傷を通じて何を得ているか、これまでどう対処してきたかを、ゆっくり聞かれるところから始まります。いきなり傷そのものを問い詰められるわけではなく、まずは今の状態を一緒に眺めるところからです。

その後の数回で、衝動の引き金になりやすい場面を整理し、自傷の代わりにできることを少しずつ一緒に探していく、という流れが一般的です。何回で終わりと決まっているものではなく、状態に合わせて間隔や回数を調整していきます。

話す内容も傷を見せるかどうかも、安心できる範囲から自分で決めてかまいません。
話す内容も傷を見せるかどうかも、安心できる範囲から自分で決めてかまいません。

話したくないことは、無理に話さなくて構いません。 傷を必ず見せる必要もありません。どこまで話すかを自分で決められることも、相談の大切な前提になります。

ゴールは自傷ゼロではない

カウンセリングと聞くと、自傷を今すぐゼロにさせられる場だと身構えるかもしれません。けれど専門家は、自傷のあるなしだけで回復を測ることに慎重です。

目指すのは、感情と行動のコントロールを少しずつ取り戻していくことだとされています。再発しても、支えとのつながりを切らさないことのほうが大切とされ、やめられない日があっても、そこで終わりにはなりません。

守秘義務と家族・学校への連絡の範囲

カウンセリングや医療機関には、話した内容を守る守秘義務があります。あなたの同意なく、家族や学校、職場へ勝手に伝えられるのが基本ではありません。

守秘の範囲や安全上の例外は、相談の最初に自分から確認してよい大切なテーマです。
守秘の範囲や安全上の例外は、相談の最初に自分から確認してよい大切なテーマです。

ただし、命に関わる強い危険があると判断される場合などは、安全を優先して例外的に連携をとることがあります。未成年の場合の家族への関わり方も含め、気になる点は最初に確認しておくと、安心して話しやすくなります。

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どこに相談するか迷ったときの選び方

相談したい気持ちが動いても、どこへ行けばいいか分からず止まってしまう人は少なくありません。ここでは、今すぐ話せる窓口から継続して通う場所まで、状態に合わせた選び方を整理します。

今すぐ話したいときの無料・匿名の窓口

まず誰かに話したいだけなら、匿名で使える公的な窓口があります。電話やSNSで、費用をかけずに相談できます。

これらは予約もいらず、名乗る必要もありません。まず話してみる場所として、いちばんハードルが低い入り口になります。

精神科・カウンセリング・公的窓口の違い

相談先は、目的によってゆるやかに役割が分かれます。迷ったときの見取り図として、下の整理を参考にしてください。

相談先向いている状態特徴
無料・匿名の電話/SNS窓口今すぐ気持ちを話したい予約不要・匿名。継続的な治療は行わない
精神科・心療内科背景の病気や薬も含めて診てほしい診断・治療ができる。受診の記録が残る
カウンセリングルーム背景や感情をじっくり整理したい時間をかけて対話。医療とは別の場

学生ならスクールカウンセラー、地域なら精神保健福祉センターも選べます。入り口はどこからでもよく、合わなければ変えてよいことも覚えておいてください。

今すぐ話す窓口、継続的なカウンセリング、診察のどこから始めても、必要な支えへつながれます。
今すぐ話す窓口、継続的なカウンセリング、診察のどこから始めても、必要な支えへつながれます。

相談を急いだ方がよいサイン

次のような変化があるときは、自分の工夫だけで抱えず、早めに相談することがすすめられます。

自傷の頻度が増えている、傷が深くなっている、薬の過量服薬や食事の問題が加わってきた、死にたい気持ちが繰り返し浮かぶ。こうしたときは、眠れない・食べられない状態が続いていないかもあわせて見てみてください。

こうしたサインは、あなたを急かすためのものではありません。ひとつでも思い当たるなら、まずは無料の窓口に電話してみる、通っている医療機関があれば次の受診で伝えてみる、といった小さな一歩からで構わないのです。

傷の手当てと自分でできる工夫

最後に、相談までのあいだを少しでも安全に過ごすための具体策に触れます。体の安全、衝動への対処、周りの人の関わり方の順に見ていきます。

出血が止まらないときは救急を使う

まず優先されるのは、体の安全です。出血が止まらない、傷が深いなど身体の危険があるときは、ためらわずに救急(119)を利用してください。

自傷してしまった日は、自分を責めるより、ていねいに傷を手当てして休むことが先です。通院している人は、落ち着いてから主治医に状況を伝えておくと安心です。

自傷してしまったときは責めるより先に、体の安全を確かめて水分と休息をとってください。
自傷してしまったときは責めるより先に、体の安全を確かめて水分と休息をとってください。

衝動が来たときの置き換えと限界

衝動が強いときの一時しのぎとして、氷を強く握る、輪ゴムをはじく、紙を破る、といった置き換えの方法が紹介されています。深呼吸をゆっくり続けたり、湧いた気持ちを書き出したりする方法もあります。

ただし、これらはあくまで一時的な手立てで、根っこの苦しさを消すものではありません。穏やかなときに試しておくと、いざというときに使いやすくなります。

家族が打ち明けられたときの関わり方

もし身近な人が自傷を打ち明けてくれたら、それは信頼が残っているサインだと受け取れます。頭ごなしに叱ったり、二度としないと約束させたりすると、かえって隠れて続くようになりがちです。

よく話してくれたねと、打ち明けたこと自体をねぎらうことが、次の一歩につながります。本人の代わりに決めてしまわず、落ち着いて背景の苦しさに耳を傾ける関わりが支えになります。

打ち明けられた家族は、責めたり約束を迫ったりせず、背景の苦しさを聴くことから始められます。
打ち明けられた家族は、責めたり約束を迫ったりせず、背景の苦しさを聴くことから始められます。

死にたいと打ち明けられると、うろたえて言葉に詰まってしまうかもしれません。ただ、心配して尋ねることが本人を追い詰めるわけではないとされています。避けずに、何がそんなにつらいのかを一緒に整理する姿勢のほうが、本人の安心につながります。

一人で抱えきれないと感じたときに、話せる場所がひとつでもあること。それがこの記事から持ち帰ってもらえたら、なによりの安心材料になります。急いで答えを出す必要はありません。今日は、行き先の候補をひとつ知れた、それだけで十分だと思います。

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監修者: 石川蓮(公認心理師)

公認心理師、行動心理士。1997年生まれ。北里大学・大学院卒業。その後、公認心理師と行動心理士の資格取得。
在学中は高齢者や生産人口の色覚異常や朝型夜型特性が睡眠に与える効果等の研究を行う。
大学院卒業後、大学病院附属の研究所にてカウンセリングやデータマネジメント担当として勤務。また、都立高校の心理学講師としても勤務。
「心の悩みを持つ方のそばに寄り添う」をモットーに業務遂行しております。

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