認知の歪みは親の育て方のせいですか?自分でも原因がわからず苦しいです
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監修者の石川蓮(公認心理師)先生より
認知の歪みと親の育て方を結びつけて考えるのは、自然な流れだと思います。
ただ、原因を一つに絞りきろうとするほど、かえって苦しくなることもあるんですね。
育ちの影響はゼロではないけれど、それだけでもない。
その曖昧さは、無理に片づけなくていいんですよ。
30代女性(会社員・公務員)
職場で少し注意されただけで、頭の中が真っ黒になって、その日の帰り道はずっと自分を責めてしまいます。
こういう受け取り方の癖は、親の育て方のせいなのかな、と考え始めると止まりません。
でも親を責める自分も嫌で、結局どこに答えを置けばいいのかわからないんです。
ココラボ相談室からの回答
ご相談ありがとうございます。
自分の考え方の癖の出どころを、親との関係にたどってしまう。責める気持ちと申し訳なさの間で、立ち止まってしまう。その苦しさは、答えを一つに決めきれないままだからこそ続くのだと思います。
この記事では、認知の歪みの原因に親の育て方がどこまで関わるのかを整理します。原因がわかった後の気持ちとの向き合い方まで、一緒に見ていきます。
認知の歪みの原因は親なのかと苦しいあなたへ
自分の受け取り方の癖をたどっていくと、どうしても親との関係に行き着いてしまう。その考えが止まらなくなると、原因を探しているはずが変わっていきます。いつのまにか、自分を追い込む時間になっていく。ここではまず、答えを一つに決められないまま揺れている状態から始めます。その揺れは、無理に消さなくていいものです。
原因がわからないまま考え続けてしまうとき
認知の歪みという言葉を知ると、自分の思考の癖に名前がついたように感じます。少しほっとする人もいます。その一方で、ではなぜ自分はこうなったのか、と原因を探し始める。今度はその問いが、頭から離れなくなります。
親の育て方のせいなのか、それとも自分の性格なのか。考えても確かめようがないことを、何度も行き来してしまうのはつらいものです。
原因を完全に突き止めること。それと、今の苦しさが軽くなることは、必ずしも重なりません。原因探しが、そのまま自分を責める材料になっていないか。一度そこで立ち止まってもかまいません。

親への怒りと罪悪感が同時に湧くのは自然なこと
親が関わっていたのかもしれない、と思った瞬間、怒りがこみ上げる人もいます。そんなふうに考える自分を責める人もいます。この二つが同時に起きることは、よくあります。
育ててくれた相手を疑うような気持ちは、多くの人にとって落ち着かないものです。だからこそ、どちらの感情も抑え込まなくて大丈夫です。まずは、両方あるものとして置いておくだけで十分です。
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認知の歪みとよくある思考のクセ
まずは、認知の歪みそのものがどういう状態を指すのかを整理します。ここを押さえておくと、自分の考え方のどこが引っかかりやすいのかが見えてきます。原因の話に入る前の、共通の土台として読んでみてください。
認知の歪み(非合理的な認知)とはどんな状態か
認知の歪みとは、出来事そのものよりも受け取り方が偏ってしまう思考の癖です。現実からずれた意味づけをしてしまう状態を指します。病気のような響きを避けて、非合理的な認知という呼び方もされます。
返信が少し遅いだけで嫌われたと感じてしまう。そんなふうに、事実と解釈の間に余計な決めつけが入り込むのが特徴です。単に気分が沈むこととは少し違います。出来事の意味づけの段階で、ネガティブな方向へ強く傾いてしまうのです。

誰にでも多少はあるもので、あること自体が異常なわけではありません。問題になりやすいのは、その癖が強く固定されて、自分を追い詰め続けるときです。
白黒思考や過度の一般化などの代表パターン
認知の歪みには、いくつかの代表的なパターンがあります。自分がどれに当てはまりやすいかを知っておく。それが、揺れたときに気づく手がかりになります。
- 白黒思考:物事を成功か失敗かの両極端で判断してしまう
- 過度の一般化:一度の出来事を、いつもそうだと広げてしまう
- 心のフィルター:良い面を見落とし、悪い面ばかりに目がいく
- すべき思考:こうあるべきという基準で自分を強く縛る
- 個人化:関係のないことまで自分のせいだと感じる

これらは、認知療法を広めた精神科医アーロン・ベックらの考え方が土台です。心理の分野では、広く知られた枠組みとして整理されてきました。
自動思考とスキーマが作られる仕組み
こうした受け取り方の多くは、考えようとする前に反射のように浮かびます。これを自動思考と呼びます。
その奥には、スキーマと呼ばれるものがあります。自分や世界についての、深い思い込みだと考えられています。幼い頃からの経験が、このスキーマの材料になりやすいとされています。ここが、親との関係が話題になる理由でもあります。ただし、材料になることと、それだけが原因であることは別の話です。
親の育て方だけが原因とは限らない
生育環境が関わることは確かにあります。とはいえ、それを唯一の原因と決めてしまうと、かえって身動きが取りづらくなります。ここは決めつけずに、幅を持って眺めていきます。
生育環境が関わる範囲と、気質や今の環境の影響
親との関わり方が、思考の癖の一部に影響することはあります。褒められた経験が少なかったり、失敗を強く責められて育った。その場合、自分に厳しい基準が残りやすいのは確かです。

ただ、認知の癖を作る要素は生育環境だけに限りません。生まれ持った気質、学校や職場での経験。今抱えているストレスの大きさも重なり合っています。同じ家庭で育ったきょうだいでも、受け取り方が違うことは珍しくありません。親の関わりだけでは説明しきれません。
原因は一本の線ではありません。いくつもの要素が編み込まれたものだと考えるほうが、実際の姿に近いはずです。親を一つの要因として見ておく。それは、親を免罪することとも、自分を責めることとも違います。
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毒親・アダルトチルドレンという言葉との付き合い方
原因を探すうちに、毒親やアダルトチルドレンといった言葉に出会うことがあります。これらは、自分の状態を言葉にする助けになります。ただし、医学的な診断名ではありません。
言葉が当てはまると、一時的に整理がついた気がします。ただ、そのラベルに自分を丸ごと預けてしまう。今度はそこから動けなくなることもあります。説明の道具として使い、決めつけの枠にはしない。その距離感が役に立ちます。

原因探しをどこでやめるか
原因を辿る作業には、区切りをつけにくいという難しさがあります。考えれば考えるほど、もっと深い理由がある気がしてくるからです。
一つの目安は、その振り返りが理解につながっているか。それとも、自分を責める反芻に変わっているかです。同じ場面を何度も思い返して、落ち込むだけになっている。そこはやめどきのサインかもしれません。
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原因がわかった後の気持ちの扱い方
原因らしきものが見えてきても、残るのはすっきりした気持ちだけとは限りません。むしろ、行き場のない感情が動き出すことのほうが多いものです。その扱い方を一緒に考えていきます。
怒り・罪悪感・喪失感をなかったことにしない
親の関わりに思い当たったとき、なぜあのとき、という怒りがわくことがあります。同時に、育ててもらったのに、という後ろめたさも湧きます。あったはずの安心を得られなかった、という喪失感も混じります。
これらは矛盾しているようで、実は同時に存在してかまわない感情です。どれか一つに整理しようとしなくて大丈夫です。そういう気持ちがあると認めるだけでも、心の圧は少し下がります。
自分も同じことをするのではという連鎖の不安
親から受け取った癖を、自分も誰かに渡してしまうのではないか。特に子育て中の人や、これから家庭を持つ人が抱きやすい不安です。

けれど、その不安を感じている時点で、あなたはすでに立ち止まって考えています。気づいて距離を取ろうとする姿勢。それ自体が、同じことを繰り返さないための入り口になります。連鎖は、あらかじめ決められた運命ではありません。
親と自分の価値観を分ける境界線の引き方
親から受け取った考え方の中には、今の自分にはもう合わないものもあります。ここで役に立つのが、境界線という視点です。
これは、親を切り捨てる作業とは違います。親の価値観と自分の価値観を、別のものとして並べて置く作業です。完璧でなければ認められない。その基準が親のものだったと気づけば、引き継ぐかどうかをあらためて選び直せます。
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自分でできることと専門家に頼る目安
最後に、日々の中でできる工夫と、その限界を整理します。誰かの手を借りたほうがいい場面にも触れます。焦って変えようとするより、自分の状態を測る目盛りを持つほうが助けになります。
書き出しや別の見方を試すセルフワークと限界
自分の思考の癖に気づく方法として、書き出しはよく勧められます。強く落ち込んだ場面と、そのとき頭に浮かんだ言葉を、一つだけ紙に書いてみる。それだけでも、考えと自分の間に少し隙間ができます。

書いたあとに、本当にそうだろうか、別の見方はないか、と問い直してみます。ただし、セルフワークで扱えるのは、比較的おだやかなときの思考までです。気持ちが大きく揺れている最中に、無理に分析しようとしない。かえって苦しくなることもあります。
認知行動療法・カウンセリングでできること
考え方の癖に働きかける方法として、認知行動療法が知られています。専門家と一緒に、具体的な場面を振り返っていきます。思考と感情と行動のつながりを整理していく取り組みです。
知っておきたいのは、認知の歪みは、薬で直接消すものではない、という点です。眠れない、気分の落ち込みが強い。そうした症状が重なるときは、医療で体調を整えるのが先です。並行して考え方に取り組むほうが、進みやすい場合もあります。
「一生このままなのか」という不安の受けとめ方
このまま変われないのではないか、という不安は、多くの人が抱きます。長く付き合ってきた癖ほど、変化が見えにくいのは自然なことです。
ただ、思考の癖は固定されたものではありません。気づいて扱う練習を重ねると、反応の仕方は少しずつ変わっていくと考えられています。すぐに消すのではなく、扱いやすくしていく。そのくらいの見取り図のほうが、現実に沿っています。

眠れない・食欲が落ちるときに知ってほしい相談ライン
考えることがつらくなり、生活に支障が出てきたときは、一人で抱え込まないでほしい場面です。眠れない、食欲が落ちた、涙が止まらない。仕事や学業が回らない、自分を傷つけたい気持ちが出てきた。そうしたときは、早めに専門家や医療機関に相談する目安と考えてください。

どこに連絡すればいいか迷うときもあります。各地域の精神保健福祉センターや、厚生労働省のこころの耳といった窓口も選べます。相談することは、弱さではなく、自分の状態を守るための現実的な一手です。