先延ばし癖でストレス増えるのはなぜ?何度直そうとしても治りません

監修者の石川蓮(公認心理師)先生より

先延ばしが続くと、自分を責める気持ちばかり増えますよね。でも動けないのは意志の弱さではなく、疲れやストレスで脳がひと休みしているサインのこともあります。直し方を探すより先に、今の消耗具合をそっと見てあげてくださいね。

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30代女性(会社員・公務員)

提出期限のある書類を、いつも直前まで開けません。

やらなきゃと思うほど手が止まって、気づくと部屋の掃除を始めています。

終わったあとは自己嫌悪でぐったり。何度も直そうと決めたのに、また同じことを繰り返す自分に疲れてきました。

ココラボ相談室からの回答

ご相談ありがとうございます。

やらなきゃと思うのに動けない。そのたびに自分を責めてしまう気持ち、とてもつらいですよね。

先延ばし癖とストレスは、どちらか一方が原因というより、お互いを強め合ってしまうことがあります。この記事では、その悪循環がなぜ起きるのかと、今の自分に合う一歩の選び方を一緒に整理していきます。

先延ばし癖でストレスが増える悪循環に気づく

先延ばし癖とストレスは、どこでどう絡み合っているのか。まずは今の状態を、責めずにそのまま眺めるところから始めます。

ストレスと先延ばしがお互いを強め合う仕組み

先延ばしは、ストレスの結果であり、原因でもあります。強いストレスがあると、脳は目の前の不安を片づけるほうを優先します。すると、期限の遠いタスクは後回しになりやすいのです。

一方で、後回しにした事実そのものが、新しいストレスを生みます。残った作業の圧、迫る締切、そして「またやってしまった」という罪悪感。この重さが、次の一歩をさらに遠ざけます。

たとえば、提出物を開けないまま夜になり、自己嫌悪でぐったりする。翌朝はその疲れが残り、また手がつかない。こうした一日の積み重ねが、抜け出しにくさをつくります。

ストレスが先延ばしを呼び、先延ばしが次のストレスを積み増す。この往復のどこに今いるかが見えると、打つ手も選びやすくなります。原因探しに疲れたら、まずループを止める視点に切り替えてみるのも一つです。

ストレスと先延ばしは、自分を責める気持ちや締切の焦りを通して循環しやすくなります。
ストレスと先延ばしは、自分を責める気持ちや締切の焦りを通して循環しやすくなります。

それは意志の弱さのせいではない

「自分は怠けている」と感じる方は多いです。けれど先延ばしは、意志の強さとは別の仕組みで起きています。

心理学には、先延ばしを時間管理ではなく感情調節の問題として捉える見方があります(Pychyl & Flett, 2012)。やるべきことに向き合うとき、退屈や不安といった不快な感情がわきます。脳はその感情を避けようとして、今はやらないという選択をするのです。

とくに疲れているときは、感情を司る扁桃体が優位になりやすいと言われます。理性的な判断を担う前頭前野の力が落ちると、目先の楽なほうへ流れます。動けないのは、そのときのコンディションの影響も大きいのです。

疲れて動けないときは、意志ではなくそのときのコンディションにも目を向けてみます。
疲れて動けないときは、意志ではなくそのときのコンディションにも目を向けてみます。

だから、気合いが足りないわけではありません。まず、その前提を置き直してみてください。

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先延ばしを引き起こす心のクセとは

ここでは、先延ばしの背景にある心の動きを整理します。原因が分かると、自分のパターンにも気づけます。

目先の安心を優先してしまう理由

人の脳は、遠い未来の報酬より、今すぐの快を大きく見積もります。行動経済学で現在バイアスと呼ばれる働きです。

「今やれば後で楽になる」と分かっていても、ついスマホを開いてしまう。これは仕組みであって、性格の欠陥ではありません。締切が近づいて初めて動けるのも、同じ理由からです。

目先の安心を選びたくなる仕組みを知ると、行動を性格だけの問題にせずにすみます。
目先の安心を選びたくなる仕組みを知ると、行動を性格だけの問題にせずにすみます。

完璧主義と「全か無か」の思考

完璧にやらなければ、と力む人ほど、最初の一歩が重くなります。始めれば、うまくできないかもという恐れと向き合うことになるからです。

やらないことで、その不安から一時的に距離を取っている。完璧主義による先延ばしは、怠けではなく失敗への恐れに近いものです。100点か0点かで測る癖に気づけると、少し肩の力が抜けます。

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締切前に別のことを始めたくなる心理

提出前になると、急に机の掃除や別の作業を始めたくなる。心当たりのある人もいるはずです。

完璧でなくても下書きから始めてよいと考えると、最初の一歩の怖さを小さくできます。
完璧でなくても下書きから始めてよいと考えると、最初の一歩の怖さを小さくできます。

これは、本命のタスクへの不安から距離を取るための行動でもあります。心理学ではセルフ・ハンディキャッピングとも呼ばれます。先に別のことで手一杯にすれば、できなかった理由を用意できるからです。

ここで一度、避けている対象を見てみましょう。避けているのは、作業そのものか、評価される場面か、それとも決められない状態か。どれを避けているかで、次に打つ手は変わります。この切り分けだけでも、漠然としたやる気のなさが少し輪郭を持ちます。

今は直す時期か、休む時期かを考える

直そうと焦る前に、確かめておきたい視点があります。今の消耗度によって、選ぶべき一手は変わってくるからです。

厳しすぎるマイルールに気づく

「全部きちんとやるべき」「休むのは甘え」。こんなルールを自分に課している人は、先延ばしのたびに強く自分を責めがちです。

厳しいルールは、着手のハードルを上げます。できない自分を責めるほど、次の一歩はさらに遠のく。そのルールが今の自分に本当に必要か、一度見直してみる価値があります。

周りの期待に応えようと頑張りすぎる状態は、過剰適応とも呼ばれます。人の分まで抱え込んでいると、そもそも手が回りません。他人から渡されたタスクと、自分が本当にやりたいことを、一度分けてみてください。抱えている量の見え方が変わります。

自分への厳しいルールに気づくことは、責める循環をゆるめるための入り口になります。
自分への厳しいルールに気づくことは、責める循環をゆるめるための入り口になります。

消耗しているときのサイン

眠っても疲れが抜けない。何を見ても気が重い。食欲や集中が続かない。こんなときは、動けないのではなく、動く力そのものが一時的に落ちているのかもしれません。

そういう時期は、タスクを増やすより休息が先です。休むことを、先延ばしの言い訳と混同しないでほしいと思います。回復してからのほうが、結局は動きやすくなります。

それに、今のペースで生活に大きな支障がないなら、無理に直さなくてもよい場合もあります。先延ばしを減らしたいのか、責める気持ちを手放したいのか。ここを分けて考えると、力を入れる場所が見えてきます。

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今日からできる、小さな一歩の選び方

ここからは、実際に試せる工夫を紹介します。ただ、一度に全部やろうとしないことが何より大事です。

タスクを1〜2分サイズに分ける

「資料を作る」は大きすぎて、脳が身構えます。まずはファイルを開くだけ、というところまで小さくしてみましょう。

2分だけやってみて、続かなければやめていい。そう決めると、始める怖さが現実的なサイズに縮みます。動き出すと脳が乗ってくることもあり、これは作業興奮と呼ばれます。

作業を小さく分け、続けるかは後で選ぶと決めると、着手の負担を下げられます。
作業を小さく分け、続けるかは後で選ぶと決めると、着手の負担を下げられます。

このとき、完璧に仕上げようとしないのがコツです。下書きでいい、7割でいい。そう自分に許可を出すと、失敗への恐れがゆるみ、最初の一歩が踏み出しやすくなります。

手が止まったら、頭の中の感情に短く名前をつけてみるのも助けになります。これは怖い、これは面倒だ、と言葉にするだけで、漠然とした重さが扱えるサイズに変わります。避けたいものが具体的になると、対処の糸口もつかめます。

締切ではなく「始める時刻」を決める

いつやるかを、締切ではなく開始時刻で決めるのがコツです。水曜の14時に最初の1ページだけ書く、といった具合に。

心理学では実施意図(if-thenプランニング)と呼ばれ、行動の開始率が上がると知られています。何を、いつ、どこでやるかを具体的にするほど、体が動き出します。

締切だけでなく始める時刻を決めると、最初の一歩を具体的にしやすくなります。
締切だけでなく始める時刻を決めると、最初の一歩を具体的にしやすくなります。

環境を先に整えておく

意志の力に頼らず、環境で行動を変える手もあります。スマホを別の部屋に置く、通知を切る、机の上を片づけておく。

誘惑に触れる回数が減るだけで、集中は保たれます。逆に、始める手数を減らす工夫も効きます。前の晩に資料を開いておくと、翌朝の一歩が軽くなります。

スマホを離し、始める手数を減らす環境づくりも、集中を支える工夫になります。
スマホを離し、始める手数を減らす環境づくりも、集中を支える工夫になります。

ここまで挙げた工夫は、どれも一度に抱え込まなくて大丈夫です。今日はどれか一つ、いちばん軽そうなものだけを選ぶ。手法を増やすほど「またできなかった」という記録も増えてしまうからです。まず一つ、そこからで十分です。

できなかった日も自分を責めない

先延ばした自分を責めるほど、罪悪感が積もり、次も動けなくなります。ここが悪循環の入口です。

先延ばしの後に自分を許した学生ほど、その後の先延ばしが減った。そんな研究報告があります(Wohl et al., 2010)。責めるより、今からできる一つに戻る。その切り替えが、長い目で助けになります。

受診や相談を考えてもいいタイミング

最後に、一人で抱えなくていい場面について触れます。工夫だけでは追いつかないときの、選択肢としてお読みください。

ADHDやうつが隠れていることも

子どもの頃からずっと、始めることに強い困難がある。そんな場合は、ADHDなどの特性が関わっていることもあります。

気分の落ち込みや強い不安が続いているなら、背景にうつなどの不調が隠れている可能性も考えられます。先延ばしを病気ではと不安に思って調べる人もいますが、この段階で自分を診断する必要はありません。あくまで手がかりの一つとして、頭の隅に置いておくだけで十分です。

困りごとの背景を一人で決めつけず、相談という選択肢を持っていてかまいません。
困りごとの背景を一人で決めつけず、相談という選択肢を持っていてかまいません。

相談していいと思えるサイン

次のような状態が続くときは、専門家に相談する選択肢を持ってほしいと思います。

  • 仕事や生活に、繰り返し支障が出ている
  • 自分を責める言葉が止まらない
  • 眠れない、気分の落ち込みが続いている
生活への支障や自責、睡眠のつらさが続くときは、相談先を使う目安の一つになります。
生活への支障や自責、睡眠のつらさが続くときは、相談先を使う目安の一つになります。

産業医や学校のカウンセラー、精神科や心療内科など、話せる先はいくつもあります。最近はオンラインで相談できる窓口も増えました。今日すぐ動かなくてもかまいません。先延ばし癖とストレスに、一人で向き合い続けてきたのかもしれません。そのしんどさを言葉にする場は、あっていいはずです。頼れる選択肢があることを、心の隅に残しておいてください。

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監修者: 石川蓮(公認心理師)

公認心理師、行動心理士。1997年生まれ。北里大学・大学院卒業。その後、公認心理師と行動心理士の資格取得。
在学中は高齢者や生産人口の色覚異常や朝型夜型特性が睡眠に与える効果等の研究を行う。
大学院卒業後、大学病院附属の研究所にてカウンセリングやデータマネジメント担当として勤務。また、都立高校の心理学講師としても勤務。
「心の悩みを持つ方のそばに寄り添う」をモットーに業務遂行しております。

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