まず「すみません」と言う。悪くないのに謝り癖はどうしたら治る?

監修者の石川蓮(公認心理師)先生より

謝り癖のある方は、それだけ周りの空気を読みながら過ごしてきた人でもあります。

すみませんが出るたびに自分を責めていたら、心はなかなか休まりませんよね。

いきなりやめようとせず、一日一回だけありがとうに言い換える。

そのくらいの小さな練習から始めてみてほしいと思います。

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20代女性(会社員・公務員)

先輩に仕事を教わるたびに、お礼より先に「すみません」が出てしまいます。

この前は「謝らなくていいのに」と苦笑いされ、その場でまた謝ってしまいました。

悪くないのに頭を下げる自分が、帰り道になるとすごく嫌になるんです。

ココラボ相談室からの回答

ご相談ありがとうございます。

教わるたびに出てしまうすみませんを、帰り道にひとりで思い返してしまう。その繰り返しは、じわじわと心を削っていきますよね。

この記事では、謝り癖がどこから来るのかと、今日から試せる言い換えの練習を、公認心理師監修のもとで整理していきます。

謝り癖は自分を守るために身についた反応

謝り癖に悩んでいても、謝りたくて謝っているわけではないはずです。気づいたら口から出ている、というのが実感に近いでしょう。

結論から言うと、謝り癖は性格の弱さというより、身を守るために覚えてきた反応です。叱られたくない、嫌われたくない。そんな場面で、謝る言葉が何度も役に立ってきたのでしょう。

役に立った言葉ほど、体は早く覚えます。だから頭で考える前に、すみませんが先に出てしまうわけです。

謝り癖は、過去に身を守ってくれた反応として身につくことがあります。
謝り癖は、過去に身を守ってくれた反応として身につくことがあります。

悪くないのにすみませんが出てしまう心理は、最近SNSでも話題になりました。公認心理師の栗林あや氏が、親切を迷惑と感じてしまう心の癖として紹介したものです。

治し方の入り口は、反応を責めるより先に、いつ出ているかに気づくことにあります。心理の背景を知り、謝る場面を見分け、言い換えを練習する。ここから先は、その順番で整理していきます。

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すぐ謝ってしまう心理と謝り癖の原因

すぐ謝ってしまう背景には、いくつかの気持ちが重なっています。自分に近いものがどれか、確かめながら読んでみてください。

怒られる前に先回りして謝ってしまう

相手の表情が少し曇っただけで、反射的に謝ってしまう人がいます。怒られる前に謝っておけば、それ以上責められずに済むからです。

これは、傷つく場面を先に小さくしておく心の予防線のような働きです。言われる前に自分で言うほうが、痛みは少なく感じられます。

ただ、先回りの謝罪が続くと、相手が怒っていない場面でも緊張が抜けなくなります。謝ったのに気持ちが落ち着かない理由は、ここにあります。

先回りの謝罪は、相手の気持ちを自分の責任として抱え込む動きでもあります。相手の機嫌は、本来その人自身のものです。

相手の機嫌や負担を自分の責任に感じると、先回りの謝罪が出やすくなります。
相手の機嫌や負担を自分の責任に感じると、先回りの謝罪が出やすくなります。

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嬉しさより申し訳なさが先に立つ

親切にしてもらったとき、嬉しいより先に申し訳ないが来る。そんな感覚に心当たりはないでしょうか。

上智大学の研究チームは、感情心理学研究で報告した実験でこの感覚を扱っています。相手の得は誰かの損だと考える、ゼロサム信念に注目したものです。

実験で信念を強められた参加者は、感謝を謝罪の形で伝える言い方を選びがちでした。しかも、感謝の気持ちの強さ自体は変わっていませんでした。

すみませんが出るのは、感謝が足りないからとは限らないということ。相手に負担をかけたと感じる受け止め方が、言葉を選ばせているわけです。

親切を受け取ってはいけない気がする人ほど、この申し訳なさは強く出ます。自分を後回しにする習慣が長いと、なおさらです。

親切を受け取る場面では、申し訳なさより感謝を言葉にできます。
親切を受け取る場面では、申し訳なさより感謝を言葉にできます。

迷惑をかけるなと言われて育った影響

子どもの頃に「人に迷惑をかけてはいけない」と強く言われてきた人もいます。そうした人は、少しの手間でも迷惑に数えがちです。叱られたときに謝ると場が収まった経験も、謝る癖を強めます。

これは、親の育て方が悪かったという話とは限りません。当時の環境で身を守るには、謝ることが一番早い方法だったのでしょう。

当時の方法は、今の環境や自分に合わせて更新できます。
当時の方法は、今の環境や自分に合わせて更新できます。

大人になった今は、周りの状況も、使える方法も増えています。あの頃の方法を、今の自分に合わせて更新していくことはできます。

謝らなくていい場面と謝ったほうがいい場面

謝り癖を治すといっても、謝ること自体をやめる必要はありません。謝る場面と、別の言葉にできる場面を分けるところから始めます。

相手に実際の迷惑をかけたかで分ける

見分ける目安はシンプルで、相手に実際の損や迷惑が生じたかどうかです。約束に遅れた、頼まれたことを忘れたといった場面では、謝る言葉が役に立ちます。

一方で、教えてもらった、手伝ってもらったという場面もあります。こちらは、相手の好意を受け取った場面です。ここで要るのは謝罪より、受け取ったことを伝える言葉でしょう。

場面謝る必要言い換えの例
仕事を教わったなし教えてくださってありがとうございます
物を拾ってもらったなしありがとうございます、助かりました
少し待たせてしまった軽く一言待っていてくれてありがとう
頼まれたことを忘れたあり申し訳ありません、今日中に対応します
相手の機嫌が悪そう事実を確かめてから何かありましたか

迷ったときは、謝る前に一呼吸おいて、自分は何をしたのかを確かめてみてください。何もしていないと分かれば、謝る言葉はしまっておけます。

謝りすぎで起きやすい人間関係のずれ

謝る言葉が多いと、相手は責めたつもりがないのに気を遣う側に回ります。

謝罪が日常の言葉になると、本当に謝りたい場面で重みが伝わりにくくなります。職場によっては、何でも引き受けてくれる人と見られてしまう場合もあります。

何度も謝ると、相手も気を遣う側に回ることがあります。
何度も謝ると、相手も気を遣う側に回ることがあります。

ただ、これは謝る人を責める理由にはなりません。謝り癖は、優しさの向け方が自分にだけ厳しすぎる状態とも言えます。

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謝り癖の治し方は言い換えから始める

謝り癖の治し方として、よく挙げられるのが言葉の置き換えです。気づく、言い換える、受け取る、責めないの四つを順に扱います。

謝った場面を振り返って気づく

癖は、出ている瞬間に気づくのが一番難しいものです。そこで一日の終わりに、今日すみませんと言った場面を二つか三つ思い出してみます。

誰に、どんな場面で言ったのかを書き出すと、自分の謝り方の傾向が見えてきます。目上の人の前だけ、疲れている日だけ、という偏りに気づく人もいます。

スマートフォンのメモに、正の字で回数をつけるだけでもかまいません。

振り返りは反省会というより、観察の時間です。数を減らそうとせず、見つけられたことを一つの成果として扱います。

場面を記録して振り返ることが、反応に気づくきっかけになります。
場面を記録して振り返ることが、反応に気づくきっかけになります。

すみませんをありがとうに言い換える

気づけるようになったら、次は言葉を置き換えます。好意を受け取った場面のすみませんを、ありがとうに変える練習です。待たせてごめんねは、待っていてくれてありがとうに言い換えられます。

最初は、言いかけてから言い直す形でもかまいません。すみ、まで出たところで、ありがとうございますに切り替える人もいます。

相手を尊重しながら、自分の気持ちも場に合った形で伝える。厚生労働省のこころの耳は、この姿勢をアサーションと紹介しています。

謝る代わりに感謝を伝えるのも、その小さな実践のひとつです。

謝る代わりに感謝を伝える練習は、身近な会話から試せます。
謝る代わりに感謝を伝える練習は、身近な会話から試せます。

嬉しいと伝えることは相手への贈り物

ありがとうに慣れてきたら、嬉しかった、助かったという気持ちを一言添えてみます。自分の気持ちを言葉にすると、受け取ってもいいという感覚が少しずつ育っていきます。

親切にした側にとっても、申し訳なさそうな顔より、嬉しそうな顔のほうが報われます。受け取ることは、相手に何かを返すことでもあるわけです。

受け取るのが苦手な人は、人に頼ることにも同じ抵抗を抱えている場合があります。頼るときの罪悪感については、こちらも参考になります。

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とっさに謝った自分を責めない

練習を始めても、すみませんが先に出る日はあります。長く身を守ってくれた反応なので、すぐに消えなくて当然です。

言ったあとに「また謝った」と落ち込むと、謝り癖に自己嫌悪が重なります。言い直せたらそれで十分で、言い直せなくても次の場面があります。

謝った回数より、ありがとうと言えた回数を数える。それくらいの見方のほうが、練習は長続きします。

とっさに謝っても、気づけたことを次の場面に生かせます。
とっさに謝っても、気づけたことを次の場面に生かせます。

謝り癖がつらいときに相談したいサイン

言い換えの練習で、謝り癖が少しずつ和らいでいく人もいます。ただ、つらさの強さによっては、人の手を借りたほうが楽な場合もあります。

謝り癖は病気なのかと不安なとき

謝り癖そのものは病名ではなく、誰にでも起こりうる言葉の癖です。ただ、次のような状態が続くときは、別の要因が関わっている可能性もあります。

  • 謝らないと不安で、同じことを何度も謝ってしまう
  • 気分の落ち込みや眠れない日が二週間以上続いている
  • 自分を責める気持ちで、仕事や学校に行けない日がある
  • 人の目が怖くて、外に出るのがつらくなっている

当てはまるものがあっても、それだけで何かが決まるわけではありません。状態を確かめる意味で、心療内科や精神科、カウンセラーに相談する選択肢があります。

気になる状態が続くときは、生活への影響も相談の目安になります。
気になる状態が続くときは、生活への影響も相談の目安になります。

謝らないと落ち着かない状態が続くなら

言い換えを練習しても、謝らないと胸がざわつく感覚が強く残る人もいます。その場合は、謝る言葉の奥にある不安そのものを扱うほうが近道です。

カウンセリングでは、謝りたくなる場面で何を感じているのかを探ります。それを、相談者と一緒に言葉にしていく時間です。育ってきた環境や、今の人間関係で繰り返される形が見えてくることもあります。

形が見えると、自分を責める声も少し静かになります。謝る理由が分かることは、謝らなくていい場面を増やす手がかりになります。

対面で話すことに抵抗がある人もいるでしょう。厚生労働省のまもろうよ こころでは、電話やSNSの相談窓口を探せます。

安心して話せる場所がひとつあるだけで、心の緊張は変わります。そこから、謝る言葉に頼る場面が減っていく人もいます。

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監修者: 石川蓮(公認心理師)

公認心理師、行動心理士。1997年生まれ。北里大学・大学院卒業。その後、公認心理師と行動心理士の資格取得。
在学中は高齢者や生産人口の色覚異常や朝型夜型特性が睡眠に与える効果等の研究を行う。
大学院卒業後、大学病院附属の研究所にてカウンセリングやデータマネジメント担当として勤務。また、都立高校の心理学講師としても勤務。
「心の悩みを持つ方のそばに寄り添う」をモットーに業務遂行しております。

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