ADHDで人間関係がうまくいかないのはなぜ?嫌われるのがつらい
プロモーション
監修者の石川蓮(公認心理師)先生より
ADHDの特性があると、人との距離を測り損ねて落ち込む場面が出てきます。
返信が少し遅いだけで、嫌われたと考え込む人もいるでしょう。
起きた出来事と頭の中の解釈を分けると、見え方は変わってきます。
どこでずれたのか、一緒に探していけたらと思います。
20代女性(会社員・公務員)
去年、ADHDと診断されました。職場の同期とは最初すぐ打ち解けたのに、最近はランチに誘われなくなっています。
会議で先輩の話を遮ってしまった日から、目を合わせてもらえない気がするんです。
また嫌われたのかなと思うと、自分から話しかけるのも怖くなってしまって。
ココラボ相談室からの回答
ご相談ありがとうございます。
最初は打ち解けられた相手と、少しずつ距離ができていく。理由がはっきりしないぶん、自分のどこが悪かったのかと考え続けてしまいますよね。
この記事では、ADHDの人間関係でずれが起きやすい理由と、嫌われたと感じたときの受け止め方を整理します。そのうえで、関係ごとにちょうどいい距離の作り方も見ていきます。
ADHDの人間関係が崩れやすいのは特性のズレが原因
人間関係がうまくいかない理由を、自分の性格の悪さだと結論づけていませんか。ADHDの特性が、どの場面で相手とのずれを生むのかを順に見ていきます。ずれの位置が分かれば、手の打ちどころも絞れます。
衝動性と不注意が信頼の低下につながる流れ
ADHDには、思いついたことがすぐ口に出る衝動性があります。注意が続きにくい不注意も、代表的な特性です。どちらも、本人の意図とは別のところで動くものです。
会議で、相手の話が終わる前に意見を言ってしまう。頼まれた用事を、席に戻るまでに忘れてしまう。
一つひとつは小さな出来事でも、相手の記憶には同じことの繰り返しとして残ります。信頼が下がるのは、一度の大きな失敗より、小さなずれの回数による場合が多いと言えます。

約束を忘れた回数や、話を遮った回数。それが相手の中で、いつの間にか人柄の評価へすり替わっていくわけです。
最初は仲良くなれるのに続かないのはなぜか
ADHDのある人には、初対面でも物おじせず話しかけられる人がいます。好奇心が強く反応も早いので、出会ってすぐの場は盛り上がる傾向です。
ところが関係が長くなるほど、相手が求めるものは変わります。連絡をこまめに返す、前に聞いた話を覚えておく、約束の時間を守る、といったことです。
こうした地味な積み重ねは、不注意の特性がいちばん出やすい部分です。最初の印象がよかったぶん、相手は期待との差を大きく感じます。
続かない理由を、自分の魅力が薄れたせいだと考える必要はありません。関係の段階によって、求められる力の種類が変わると考えるほうが実態に近いでしょう。

話が飛ぶ・聞き漏らすなど会話の特徴
ADHDのコミュニケーションでは、会話の途中で話題が別の方向へ飛ぶことがあります。頭の中では一本の線でつながっていても、聞き手からは脈絡が見えにくいものです。
複数人の雑談や長い説明の途中で、内容を聞き漏らす人もいます。相手からは、話を聞いていないように映りやすい場面です。
好きな話題になると、相手の反応を待たずに話し続けてしまうこともあります。悪気がないぶん、本人はあとで相手の表情を思い出して落ち込みがちです。

▼合わせて読みたい
自己開示しすぎるのはなぜ?話した後いつもうざい・嫌われた気がする…
ご相談ありがとうございます。 話したあとに押し寄せる後悔は、それだけ相手との関係を大切に思っているからこそ生まれます。無理に消そうとしなくて大丈夫です。 この記…
URL:https://kokolaboratory.com/qa-4248/
ASDとの違いと併存の可能性
対人関係のつまずきは、ASD(自閉スペクトラム症)でも起こります。ただ、その背景は同じとは言えません。
ASDでは、相手の気持ちや場の空気を直感的に読み取るのが難しい場合があります。一方のADHDは、相手の気持ちは分かっている場合が多いとされます。それでも衝動性が先に動き、言葉が出てしまうわけです。
二つの特性を併せ持つ人もいるため、自分だけで線を引くのは難しいところです。どちらに近いかは、医療機関で一緒に整理してもらえます。
監修者の石川蓮(公認心理師)先生に相談してみませんか?
ADHDの人間関係で嫌われたと感じる気持ちの正体
嫌われたと感じた出来事を思い返すと、胸がぎゅっと縮む人もいるでしょう。そのつらさが、実際に起きたことと同じ大きさとは限りません。受け取り方の側にどんな仕組みがあるのかを確かめていきます。
拒絶への過敏さ(RSD)は診断名ではない
ADHDのある人の一部には、批判や拒否にとても敏感な傾向が見られます。米国の精神科医ウィリアム・ドットソンは、この反応をRSDと呼びました。
日本語では、拒絶過敏などと訳されることが多い言葉です。医学的な診断名とは違い、ADHDに伴いやすい反応を説明するための呼び方にあたります。
同僚の短い返信や一度断られた誘いが、自分の存在ごと否定されたように響く。そんな感覚に覚えがあるなら、この反応が関わっているかもしれません。
公的な情報でも、この点は触れられています。国立精神・神経医療研究センターのこころの情報サイトは、大人のADHDに感情の扱いにくさを挙げています。不安や気分の落ち込みを伴う場合がある、という説明もあります。

嫌われた事実と受け取り方を切り分ける
嫌われたと感じたとき、頭の中では三つのことが一度に起きています。起きたこと、感じたこと、そこから考えたことです。
ご相談の場面に当てはめると、次のように分けられます。
- 起きたこと:ランチに二回続けて誘われなかった
- 感じたこと:寂しい、置いていかれた気がする
- 考えたこと:みんなに嫌われている
並べてみると、事実として確かなのは一行目だけだと分かります。誘われなかった理由が、相手の予定や席の都合だった可能性も残っています。
考えたことは、その時点での一つの仮説として扱ってみてください。仮説であれば、確かめる方法も自分で選べます。

自己否定と見捨てられ不安の悪循環
ずれを指摘される経験が重なると、ある思い込みが育ちます。自分は人をいらだたせる存在だ、という思い込みです。この思い込みは、関係が深まりそうな場面ほど強く顔を出します。
離れていかれる前に、自分から距離を取る人がいます。反対に、嫌われないよう相手に合わせ続けて疲れ切る人もいます。
どちらも、これ以上傷つかないための守り方です。ただ続けるほど本音を出せる相手が減り、孤立感が深まっていきます。
この循環を止める入り口は、自分の受け取り方に一度気づくことです。相手を変えるより、手を付けやすい場所でもあります。前の項目で分けた三つの行は、ここでもそのまま使えます。

▼関連記事
ADHDで怒られるのが怖い…大人なのにすぐ泣いてしまうのはおかしい?
ご相談ありがとうございます。怒られるのが怖い、涙を止められない、話がうまくまとまらない。そうした悩みがいくつも重なると、自分のどこに原因があるのか分からなくなっ…
URL:https://kokolaboratory.com/qa-2099/
ADHDの人間関係を続ける距離感の作り方
人間関係をすべて同じ深さで保とうとすると、特性による負担はそのぶん増えます。関係ごとに目標を変えてよい、というのがこの章の軸です。職場、友人、家族やパートナーの順に、ちょうどいい距離を考えます。
職場は役割として関わると楽になる
職場の人間関係では、仲良くなることをゴールに置かなくて構いません。仕事を一緒に回せていれば、まずは十分です。
雑談が苦手なら、聞き役に回って相づちを打つだけでも会話に加われます。話しかけるときは相手の名前を呼び、今いいかを確かめてから用件に入ります。
頼まれごとは、その場でスマホやメモに書き残します。口頭の指示を後からチャットで送ってもらえないか、上司に相談するのも一つの手です。
職場で求められるのは好かれることより、約束と報告が途切れないことです。そこが安定すると、雑談の得意不得意はあまり問われなくなります。

友人は隣のクラスの距離感でいい
毎日のように会う関係は、遅刻や返信忘れが重なり、ずれが表に出やすくなります。学校で言えば同じクラスより、隣のクラスくらいの距離のほうが保ちやすい人もいます。
会う頻度は月に一度ほどにして、約束の前日にはリマインダーを入れておきます。返せていない連絡があれば、短い一言でも先に返します。
その中で価値観やペースが近い人がいたら、少しだけ距離を縮めてみる。合わないと感じたら、元の距離に戻れば済む話です。
関係を一気に切るか、一気に詰めるかの二択にしないことが、友人関係を長持ちさせます。

▼関連する記事
人間関係リセット症候群で友達がいない…後悔ばかりで苦しく原因を知りたい
ご相談ありがとうございます。 連絡を絶ってきた相手のことを思い出しては、もう戻せないのかもしれないと感じる夜があるかもしれません。まずはその後悔を、自分を責める…
URL:https://kokolaboratory.com/qa-5635/
家族・パートナーとは仕組みで補い合う
一緒に暮らす相手とは、ずれが毎日の生活の中で起きます。気持ちだけで乗り切ろうとすると、相手の我慢が先に限界を迎えがちです。
家事やお金の管理は、得意な人が得意な部分を受け持つ形に分け直します。忘れやすい用事は、共有カレンダーや冷蔵庫のホワイトボードに書き出します。目に入る場所にあるだけで、言い合いの回数は減ります。
話し合いは、どちらかが感情的になっている時間を避けて行います。相手の話を聞いたら要点を言葉にして返すと、聞き漏らしに早く気づけます。
責める側と責められる側に分かれると、関係は親子のような形に傾きます。ADHDの特性を二人の共通の課題として扱うと、話し合いの空気が変わります。

起きたこと・感じたことを分けて振り返る
人間関係で落ち込んだ日は、寝る前に三行だけ書き出してみます。起きたこと、感じたこと、考えたことの三つです。
一週間ほど続けると、自分がつまずく場面の傾向が見えてきます。約束の前後なのか、会話の最中なのか、疲れている日なのかが分かってきます。
傾向が分かれば、対策をそこへ集中できます。全部を直そうとするより、崩れやすい場面を一つに絞るほうが続けやすいでしょう。

振り返りは、反省会にしないことがコツです。うまくいった場面も一行添えると、自分を見る目の偏りが少し戻ります。
監修者の石川蓮(公認心理師)先生に相談してみませんか?
ADHDの人間関係に疲れたときの相談先とセルフケア
工夫を重ねても、人と会うこと自体がしんどくなる時期はあります。そんなときに頼れる相談先と、抱え込まないための目安をまとめました。診断の有無にかかわらず使える窓口も含めています。
一人で抱えないほうがよいサインの目安
次のような状態が続くときは、自分の工夫だけで乗り切ろうとしないでください。
- 眠れない、食欲がない状態が2週間以上続いている
- 人と会うのが怖くて、出勤や外出ができない日がある
- 自分には価値がないと感じる日が続いている
- 職場や学校で、孤立した状態が長引いている
人間関係のつまずきが続くと、うつや不安といった二次的な不調が重なる場合もあります。早めに相談するほど、選べる対処の幅は広がります。
死にたい気持ちが強いときは、迷わず医療機関や救急に連絡してください。自分を傷つけてしまいそうなときも同じです。

精神科・発達障害者支援センターなど相談先
ADHDの診断や治療は、精神科や心療内科で受けられます。特性による困りごとと気分の落ち込みのどちらが中心なのかも、整理してもらえます。
発達障害者支援センターは、都道府県や政令指定都市ごとに置かれている相談窓口です。所在地は、国立障害者リハビリテーションセンターの一覧で確認できます。
暮らしや仕事での困りごとについて、本人に加えて家族からの相談にも応じています。カウンセリングでは、人間関係の振り返りを専門家と一緒に進められます。

診断を受けていなくても相談してよい
ADHDかどうか分からない段階でも、相談の窓口は開いています。センターによって対応は異なりますが、診断前の相談に応じているところもあります。
自己診断で結論を出す必要はありません。困っている場面を具体的に話せれば、それが相談の材料になります。
先に書き出した三行のメモを持っていけば、伝えたいことを整理する手間も省けます。最初の一回で答えが出なくても構いません。何に困っているかが言葉になれば、次の打ち手を一緒に考えられます。