日本のカウンセリングはなぜ敷居が高いのか、海外との違いを知りたいです

監修者の石川蓮(公認心理師)先生より

日本では、つらさを誰かに相談することに、まだためらいを感じる方が少なくありません。相談の場でも、「このくらいで頼っていいのか」と迷いながら来られる方がいます。

けれど、カウンセリングは限界になってから受けるものだけではありません。心のことを一人で抱え込まないための選択肢として、もっと自然に捉えてよいものだと私は思います。

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30代男性(自営業・フリーランス)

海外のドラマなどを見ていると、カウンセリングを受けるのが当たり前のようになっていますが、日本ではまだまだ浸透していない印象があります。
私は普段、仕事や人間関係でストレスを感じても、カウンセリングを利用したことが全くありません。なんだか利用することに抵抗があり、「自分が弱いと思われるのでは?」と不安になります。

アメリカやヨーロッパではカウンセリングのようなメンタルケアがもっと身近だと聞きますが、日本ではなぜ普及しないのでしょうか。背景や理由があれば教えてください。

ココラボ相談室からの回答

ご質問いただきありがとうございます。
海外ではカウンセリングが日常的に使われています。一方で日本では、カウンセリングを特別なことと捉える文化が根強くあります。

日本には「弱さを見せてはいけない」という価値観があります。「悩みは自分で解決するべき」という考えも根強く残っています。
そのため、メンタルケアへの抵抗感が生まれやすくなります。学校教育や企業の制度でも、欧米ほど心の健康を学ぶ機会は多くありません。カウンセリングがまだ身近に感じにくいのも、その差が理由のひとつです。

日本は「心の健康」で世界最下位?

アクサ生命保険株式会社が調査結果を発表しています。2025年5月30日公表の「マインドヘルスに関する調査 2025」です。
その調査では、日本のメンタルヘルスへの意識や行動が各国で最も低い結果でした。前向きに心のケアへ向かう姿勢が、まだ弱いことがうかがえます。

参照:アクサ生命保険株式会社

実際、日本では「つらくても我慢する」という空気が残っています。「弱音を見せない」という価値観も、まだ根強いものです。
そのため、相談する行為そのものが弱さの象徴と誤解されやすくなります。これは個人の性格ではなく、文化的な背景が影響しています。

「自分が弱いと思われるのでは」という不安を感じる方は多くいます。
それはあなた個人の問題ではありません。社会全体がそう感じやすい構造になっているからです。

ここからは、社会構造の話から少し視点を変えます。メンタルヘルスの状況を、日本と海外で比べていきます。

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【日本と海外比較!】メンタルヘルス業界

①【日本vs海外】カウンセラー数

カウンセラー総数(最新推定)
日本約10〜12万人
アメリカ約50〜60万人
中国約3〜5万人
フランス約8万人
スイス約6千〜1.2万人
タイ約1千人
イギリス約8〜9万人
※実働ベースで人数算出しています。(自社調べ)

②【日本vs海外】カウンセリングルーム数

カウンセリング施設の総数
日本約1,135施設
アメリカ合衆国約12,275施設
中国約2,936施設
フランス約3,690施設
スイス約207施設
タイ約1,179施設
※調査可能な最新年データ(自社調べ)

③【日本vs海外】利用者数

年間利用者数 (総人口あたり%)
日本約615万人(約6%)
アメリカ合衆国約6千万人(約50%)
中国5600万人(約4%)
フランス約1200万人(約18%)
スイス約250万人(約30%)
タイ約71万人(1%)
イギリス (主にイングランド)約350万人(約35%)
※調査可能な最新年データ(自社調べ)

このデータを見ると、日本の利用者数はなぜ低いのかと感じるかもしれません。
ここからは、その疑問を順番に解説していきます。

【疑問①】日本は心理カウンセラーが多いの?

数のうえでは、日本は海外より比較的多く見えます。
ただ、心理職を目指すハードルは高く、働く場も限られています。そのため実際に業務しているカウンセラーが少ないという問題があります。

その理由は主に以下です。

カウンセラーの収入が低い

日本のカウンセラー、特に民間の心理職の平均収入は約430万〜460万円程度です。ほかの専門職と比べて高くはありません。(日本の平均年収は458万)

多くが非常勤や契約職という働き方です。フルタイムで安定して働ける職場が少ないことも影響しています。

公認心理師という国家資格はできました。それでも資格手当が十分に整っていない企業や自治体は多くあります。
「生活が成り立ちにくい」という不安から、心理職を志す人が減る傾向も見られます。

働ける職場が限られている

日本では、そもそもカウンセラーの働く場所が限られていることも大きな課題です。

  • 医療機関(精神科・心療内科)
  • 学校(スクールカウンセラー)
  • 行政(児童相談所など)

これらは今も枠が少ない状態です。民間のカウンセリングルームも、地域によってはほとんどありません。

そのため、働きたくてもポジションが見つからないことがあります。結果として、心理職のキャリアが広がりにくいのです。

資格取得までの道のりが長い

カウンセラーとして独り立ちするには、高い専門性が求められます。

  • 大学・大学院での専門教育
  • 実習やケース経験
  • 資格取得(公認心理師など)
  • 就職後の継続的な学習

と、長期的な学びが欠かせません。

日本では「カウンセリング技法」や「心理療法」を体系的に学べる場がまだ少ない状況です。海外のように気軽に心理職を目指せる環境は、十分に整っていません。
海外では心理職が公的な資格として早くから確立してきました。専門職として社会に位置づけられている点も、日本との違いのひとつです。

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【疑問②】日本人は心の病気にならない?

「日本人はメンタルが強い」と言われることがあります。ですが、これは誤解です。
うつ病や不安障害などの不調は、むしろ増えています。

そう見えにくいのは、日本に「つらくても我慢する」文化があるためです。
弱さを見せたくない気持ちから、悩みを抱え込みやすくなります。表に出にくいだけで、つらさが消えたわけではありません。相談先の情報が少なかったり、予約が取りづらかったりと、専門家にアクセスしにくい環境も影響しています。

つまり、日本人が心の病気になりにくいわけではありません。症状が表に出づらい社会構造になっているというのが実情です。

【疑問③】海外ではメンタルヘルス教育があるのか?

海外では、子どもの頃から感情の扱い方やストレス対処を学ぶ機会が多くあります。助けの求め方も、学校で学びます。
そのため「困ったら相談する」ことが自然な文化として根づいています。カウンセリングは特別なものではなく、生活の延長として気軽に利用されます。

一方、日本ではメンタルヘルス教育が十分とは言えません。
「相談していいのかわからない」「カウンセリングは敷居が高い」と感じる人が多いのが現状です。

つまり日本は、海外と比べると心のメンテナンスを教わる文化がまだ発展途上なのです。

海外では、カウンセリングを不調になってから受けるものとは考えません。調子を保つために早めに使う人も多くいます。
肩こりで整体に通ったり、歯の検診を受けたりする感覚に近いものです。心のメンテナンスとして利用される場面が目立ちます。

相談のきっかけも、日常の悩みが中心です。夫婦や親子の関係、子育ての迷い、仕事での行き詰まりなどが挙げられます。
「病気かどうか」を線引きせずに話せる空気があります。この差が、日本との利用しやすさの違いにつながっていると考えられます。

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【疑問④】日本のカウンセリングは高いの?

日本でカウンセリングが広まりにくい理由として、費用面を挙げる人は少なくありません。
背景には、保険の扱いの違いがあります。

カウンセリングは保険適用外

精神科や心療内科での診察には保険が使えます。
一方、公認心理師などによるカウンセリングは原則として保険適用外です。

1回あたりの相場は5,000円から15,000円程度とされています。続けて利用すると、負担は軽くありません。
この費用面のハードルが、相談をためらわせる要因になっています。

海外は保険でまかなえる国も

アメリカには、カウンセリングをカバーする民間保険が多くあります。
イギリスでは、国民保健サービスで無料で受けられます。

日本でも、費用を抑えて相談できる場は増えつつあります。自治体の相談窓口や、職場のEAPなどが挙げられます。

敷居が高いと感じたときにできること

「ではどうすればいいのか」と感じた方へ。
相談先の種類と、費用を抑える方法を知っておくだけでも、最初の一歩は踏み出しやすくなります。

相談先がわからないときの探し方

相談先がどこにあるかわからない、という声は多くあります。これも利用が広がりにくい理由のひとつです。
自治体の精神保健福祉センターや保健所、医療機関があります。民間のカウンセリングルームやオンラインカウンセリングも選択肢です。「病気かどうか」で迷う必要はなく、幅広いテーマで相談してかまいません。

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費用を抑えて相談する方法

費用が気になる場合も、負担を抑える方法はあります。
医師の治療の一環なら、自立支援医療で負担が軽くなることがあります。自治体の窓口では、無料で話せる場もあります。勤務先にEAP(従業員支援プログラム)があれば、無料や割引で相談できることもあります。対面より安いオンラインカウンセリングも、選びやすい方法です。

今後の日本のカウンセリングへの挑戦

日本でカウンセリングが広まりにくいのは、社会構造にも理由があります。
ココラボ相談室では、「心理カウンセラーの年収を上げる」「カウンセリングを普及させる」ことに、今後も力を入れていきたいと考えています!

どんな方でも、心の不調はかかることがあります。その前に対処できる世の中になるように、少しずつ取り組んでいきます!

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監修者: 石川蓮(公認心理師)

公認心理師、行動心理士。1997年生まれ。北里大学・大学院卒業。その後、公認心理師と行動心理士の資格取得。
在学中は高齢者や生産人口の色覚異常や朝型夜型特性が睡眠に与える効果等の研究を行う。
大学院卒業後、大学病院附属の研究所にてカウンセリングやデータマネジメント担当として勤務。また、都立高校の心理学講師としても勤務。
「心の悩みを持つ方のそばに寄り添う」をモットーに業務遂行しております。

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