寝るときだけ毛布がないと眠れないのはブランケット症候群?治し方を教えて
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監修者の石川蓮(公認心理師)先生より
寝るときだけ毛布が必要、という方は実はかなりいます。
外では平気なのに夜だけ、という限定がついている時点で、心の使い方としてはうまくいっているほうなんですね。
治し方を探す前に、いま困っているのが自分なのか周りなのかを分けてみてください。
30代女性(会社員)
子どものころから使っているタオルケットが、いまも寝るときだけ手放せません。
先日、彼が泊まりに来る日にあわてて押し入れへ隠しました。
30も過ぎてこれはさすがにおかしいのかなと、洗濯するたびに考えてしまいます。
ココラボ相談室からの回答
ご相談ありがとうございます。
寝るときだけ、という限定がついた習慣は、周りに話しづらいぶん一人で抱え込みやすいものです。
おかしいのかどうかを決める前に、その毛布が何を支えてきたのかを見ておきたいところです。
この記事では、ブランケット症候群と呼ばれる状態が何を指すのか、そして寝るときだけの執着を手放すべきかどうかを見分ける軸を整理していきます。
「大人なのにおかしい?」という不安をまず受け止める
寝るときだけ毛布が手放せない、という状態は、人に話す機会がほとんどありません。だからこそ、自分の感覚が普通なのかどうかを確かめられないまま時間が過ぎていきます。まずは、いま感じている戸惑いのほうから見ていきます。

寝るときだけ毛布が必要な自分に戸惑う気持ち
昼間はまったく気にならないのに、夜になると決まった毛布やタオルケットを探してしまう。そんな自分に、ふと違和感を覚える瞬間があると思います。
年齢を重ねるほど、この習慣は自分の中で説明しづらくなっていきます。子どものころは当たり前だったものが、いつのまにか隠すべきものに変わっていくからです。
ただ、夜だけという限定がついていること自体は、状態を判断するうえで大事な情報です。一日中手放せないのか、眠るときだけなのかで、意味合いはかなり変わってきます。
戸惑いを感じているということは、その習慣を客観的に見ようとしている証でもあります。
恥ずかしくて人に言えないという二次的な苦しさ
実際に苦しいのは、毛布が必要なことそのものより、それを知られたくない気持ちのほうだったりします。
パートナーが泊まりに来る前に片づける。旅行に持っていくかどうかで直前まで迷う。そうした小さな緊張が積み重なると、習慣そのものより疲れが大きくなります。

手放せないことと、手放せない自分を責めることは、別々の苦しさです。この記事では、その二つを分けて考えていきます。
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ブランケット症候群とは何か、病気ではないのか
名前に症候群とついているせいで、診断や治療が必要なものだと受け取られがちです。ここでは、この言葉が実際に何を指しているのかを整理します。判断はそのあとで大丈夫です。
移行対象・ライナスの毛布という考え方
心理学では、子どもが養育者から少しずつ離れていく過程で心の支えにする物を、移行対象と呼びます。イギリスの小児科医で精神分析家のウィニコットが提唱した考え方です。
スヌーピーに出てくるライナスが毛布を離さない姿から、ライナスの毛布や安心毛布という呼び方も広く使われています。
ここで大切なのは、移行対象は養育者とのほどよい関係を土台に生まれるとされている点です。関係が足りなかったから物にすがる、という説明にはなっていません。

正式な診断名ではないという事実
ブランケット症候群は、医学的な診断名ではありません。特定の物を手放しにくい状態を指す通称にあたります。
そのため、この状態そのものに治療が設定されているわけではないのが実情です。日常生活に支障がなければ、必ずしも手放す必要はないと説明する専門家が多く見られます。
一方で、深刻な依存症であるかのように書かれた情報も出回っています。読んだあとに気持ちが重くなる情報に触れたときは、根拠が示されているかを一度確かめてみてください。
大人になっても続く人は少なくない
大人になっても続いている人は、体感よりずっと多いようです。
比治山大学の心理相談センター年報に掲載された大学生を対象とした調査では、85.5%が子どものころに移行対象を持っていたと答え、そのうち15.6%がまだ卒業できていないと回答しています。
英国では、成人の約半数が子どものころからのぬいぐるみを持ち続けているという調査報告もあります。珍しい状態ではなく、単に語られにくい状態というほうが実際に近いのかもしれません。

匂いや肌触りにこだわる心理
洗濯すると落ち着かない、新品では代わりにならない。この感覚には、身体的な理由があります。
嗅覚は、感情や記憶に関わる脳の領域と直接つながっているとされています。慣れた匂いが、考えるより先に安心の合図として働くわけです。
柔らかいものに触れたときの安心感も同じで、求めているのは物そのものより、感覚を通じた鎮まり方だと考えられます。同じ商品を買い直しても納得できないのは、それが理由です。
寝るときだけの執着は手放すべきかを見分ける
手放すべきかどうかは、年齢では決まりません。ここでは、自分の状態を見るための具体的な軸を三つ挙げます。当てはめながら読んでみてください。
時間と場所が限定されているかで見る
一つめは、限定されているかどうかです。
小児科の専門医が、自宅だけか自宅以外でもかを一つの判断材料として挙げています。家では手放せなくても、外では持たずに過ごせるなら、状況に応じて切り替えられている状態です。
寝るときだけ、というのはこの限定がかなりはっきりしている形にあたります。時間と場所を自分でコントロールできているなら、それは生活機能が保たれているサインと考えられます。

ないと生活に支障が出ていないかで見る
二つめは、支障の有無です。線引きの目安として、次の三点を見てみてください。
- 出張や旅行など、持っていけない場面が一切こなせなくなっているか
- 毛布がないことへの不安で、眠れない日が続いているか
- 隠すことへの負担から、人と会う予定そのものを避けているか
どれも当てはまらないのであれば、急いで変える理由は見当たりません。三つめが当てはまる場合は、毛布よりも隠すことのほうが負担になっている可能性があります。
愛情不足や愛着の問題ではない
三つめは、苦痛を感じているのが誰かという点です。周りが気にしているだけなのか、自分が困っているのかで、必要な対応は変わります。
そのうえで、よく検索される疑問にも触れておきます。移行対象を持つことは、親の愛情が足りなかった証拠ではありません。済生会のコラムでも、愛情の量とは無関係と考えてよいと説明されています。
自分の育ちを疑い始めると、話が本題から離れていきます。いま困っていることに焦点を戻して構いません。
ストレスや環境変化で強まる仕組み
大人になってから急に強まった、という人もいます。転職、引っ越し、身近な人との別れ。生活が大きく動いた時期と重なることが少なくありません。
不安が高まると、手持ちの落ち着き方をより多く使うようになります。執着が強まったのは弱さではなく、負荷が上がっているサインと読むほうが役に立ちます。

そう考えると、見直すべきなのは毛布ではなく、いまの生活の負荷のほうかもしれません。
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距離を取りたいときの無理のない進め方
そのままでいい、と言われても距離を取りたい人はいます。ここでは、負担の少ない進め方を扱います。急がないことが前提です。
無理に取り上げないほうがよい理由
一気に捨てる、誰かに処分してもらう。この方法は、強い不安やパニックにつながることが複数の専門家から指摘されています。
安心の手段を突然失うと、心は別の落ち着き方を探し始めます。結果として、以前より強く求めるようになることもあります。
やめることを目標にすると、うまくいかないたびに自分を責める材料が増えていきます。目標は、選択肢を増やすことに置くほうが続きます。
触れる時間を少しずつ減らす方法
進め方としては、なくても過ごせたという経験を小さく積むやり方が知られています。
十五分だけ別の部屋に置いてみる。一泊の外泊で持たずに寝てみる。うまくいかなければ戻していい、という前提があるほうが試しやすくなります。
大きな毛布であれば、ハンカチほどの大きさに仕立て直して持ち歩きやすくする方法もあります。手触りや匂いが引き継がれていれば、サイズが変わっても支えとしては働きます。

大切なのは順番で、心身に余裕がある時期を選ぶことです。転職直後や体調が悪い時期には、そのまま持っていて構いません。
うまくいかなかった回を失敗と数えないでおくと、次を試す気力が残ります。
ひとりで抱えず専門家に頼る目安
最後に、相談を考えたほうがいい場面と、周囲との関わり方を整理します。どれも義務ではなく、選択肢として読んでください。
発達障害や分離不安との切り分け
特定の物へのこだわりから、発達特性との関係を心配する人もいます。ただ、移行対象を持つこと自体は発達の一過程であり、そのまま結びつけて考える必要はありません。
判断の材料になるのは、他にも気になる特性があるかどうか、そして執着が場面を選ばず広がっているかどうかです。
気になる点が他にもあると感じる場合は、自己判断で結論を出さずに専門機関へ。心配を抱えたまま調べ続けるより、確かめたほうが早く落ち着きます。

パートナーや家族への伝え方と境界線
隠し続ける負担が大きいなら、伝えるという選択肢もあります。全部を説明する必要はなく、眠るときに使っているものがある、という程度でも十分です。
そのうえで、ひとつだけ決めておきたいことがあります。からかったり勝手に触ったりしないでほしい、という線を伝えておくことです。
大切にしているものを軽く扱われる経験は、思ったより長く残ります。悪気のないからかいであっても、こちらの受け取り方まで軽くなるわけではありません。
自分の安心を守る境界線は、伝えていい範囲のことです。伝えたうえで相手がどう受け取るかは、また別の話として置いておけます。
公認心理師・医療機関に相談したいサイン
相談を考えていい目安としては、次のような状態が挙げられます。
- 毛布がないと眠れない日が続き、日中の生活に影響が出ている
- 不安や気分の落ち込みが、毛布のこと以外にも広がっている
- 見捨てられる感覚が、いまの人間関係にも重なっていると感じる
こうした場合は、毛布そのものより背景にある不安を扱ったほうが楽になることがあります。カウンセリングや医療機関は、やめさせるための場所ではありません。
寝るときだけ毛布がないと眠れない自分を、無理に変えなくてもいい日もあります。手放すか持ち続けるかを決めるのは、いつでもご自身のタイミングで構いません。
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