抗うつ剤を飲みたくないのは甘えですか?副作用や依存が怖くて飲めずにいます

監修者の石川蓮(公認心理師)先生より

抗うつ剤を前に手が止まってしまう方は、診察の場でも本当に多いんです。

怖いと感じるのは、それだけご自身の体を大切に考えている証だと思います。

飲むかどうかを急いで決める前に、まずその不安の中身を一緒に見ていきましょう。

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30代女性(会社員)

30代の会社員です。

眠れない日が続いて心療内科を受診したら、うつ状態と言われて抗うつ剤を処方されました。

でも副作用や依存が怖くて、薬袋を開けられないまま一週間が経っています。

飲めない自分は、甘えているんでしょうか。

ココラボ相談室からの回答

ご相談ありがとうございます。

処方された抗うつ剤を飲みたくないと感じたまま、誰にも言えずにいる方は少なくありません。

飲めない自分を責める気持ちも、あるのではないかと思います。

この記事では、抗うつ剤を飲みたくないと感じる心理の背景を整理しながら、その気持ちを医師にどう伝えるかまで一緒に考えていきます。

抗うつ剤を飲みたくないのは甘えではありません

処方された薬をどうしても飲む気になれない。まずは、そのためらいをどう受け止めるかから整理していきます。

処方された薬を前に手が止まってしまう

心療内科や精神科で抗うつ剤を処方されたものの、飲めないまま日数だけが過ぎていく。そんな状態で自分を責めている方は少なくありません。

診察室では言い出せなかったけれど、本当は飲みたくない。その気持ちを抱えたまま通院を続けている方もいます。

飲めていないことを医師に言えず、飲んだふりのようになってしまう。そんな後ろめたさが積み重なると、通院そのものが苦しくなっていきます。

薬を飲めないことと、治したい気持ちがないことは別の話です。飲めずに迷っている時点で、あなたは自分の治療に真剣に向き合っています。

薬を前に迷うことと、治したい気持ちがあることは両立します。
薬を前に迷うことと、治したい気持ちがあることは両立します。

飲みたくないと感じるのは自然な反応

抗うつ剤を飲みたくないと感じるのは、決して甘えではありません。自分の体に入れるものを慎重に選びたいというのは、自分を守ろうとする心の働きでもあります。

うつ状態のときは、判断すること自体に大きな力が要ります。飲むかどうかを決めきれないのは、意志が弱いからではなく、いま心が消耗しているからでもあります。

実際、薬への不安は受診をためらう大きな理由のひとつとして医療機関でも頻繁に挙げられており、多くの人が同じ場所で立ち止まっています。

ためらいは甘えではなく、自分の体を慎重に守ろうとする反応でもあります。
ためらいは甘えではなく、自分の体を慎重に守ろうとする反応でもあります。

大切なのは、飲む・飲まないを一人で急いで決めることではなく、そのためらいの中身を少しずつ言葉にしていくことです。

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「飲みたくない」の理由は人によって違う

ひとくちに飲みたくないと言っても、背景にある気持ちは人それぞれです。ここでは、抵抗感の正体をいくつかのタイプに分けて整理します。

副作用や依存が怖いという不安

もっとも多いのは、体への影響に対する不安です。

  • 吐き気や眠気などの副作用が怖い
  • 依存してやめられなくなりそうで怖い
  • 一生飲み続けることになりそうで怖い
  • 感情がなくなってしまいそうで怖い

こうした不安は、薬についての情報が足りないことで大きく膨らんでいる場合があります。不安の対象がはっきりすると、確かめるべきことも見えてきます。次の章で、それぞれの実際を整理します。

副作用、依存、服薬期間のどれが不安なのかを分けると、確かめることが見えてきます。
副作用、依存、服薬期間のどれが不安なのかを分けると、確かめることが見えてきます。

病気と認めたくない・自力で治したい気持ち

薬を飲んだら、自分がうつ病だと認めることになってしまう。そんな感覚から手が止まる方もいます。

これまで努力で乗り越えてきた人ほど、薬に頼ることが負けのように感じられることがあります。自力で何とかしたいという気持ちは、それ自体が責められるものではありません。

ただ、うつ状態は気力や考える力そのものが下がる状態です。意志の力だけで持ち直そうとすることが、かえって回復を遠ざけてしまう場合もあります。

周囲に知られたくないという抵抗感

家族や職場に知られたくない、薬を飲む人だと思われたくないという気持ちが、服薬への抵抗になっていることもあります。

心の不調への偏見は今も残っていて、知られることへの怖さは自然な感覚です。誰に、どこまで伝えるかは、治療とは別に自分で選べることです。飲むかどうかの判断と、周囲への開示の問題は分けて考えると、少し整理しやすくなります。

服薬の判断と、家族や職場へどこまで伝えるかは分けて考えられます。
服薬の判断と、家族や職場へどこまで伝えるかは分けて考えられます。

また、薬で気持ちを変えられてしまう気がする、自分の感情を自分でコントロールできなくなりそうという感覚が、抵抗のもとになっている場合もあります。

自分の飲みたくなさがどのタイプに近いのか。それが見えてくると、次に必要なのは知識なのか、気持ちの整理なのかが分かれてきます。

抗うつ剤への不安の正体を整理する

ここからは、飲みたくない理由として多い不安について、現在一般的に知られていることを整理します。飲むかどうかを考えるための材料として読んでみてください。

副作用はいつまで続くのか

抗うつ剤の副作用は、吐き気や眠気など、飲み始めの時期に出やすいことが知られています。

一方で、その多くは1〜2週間ほどで体が慣れて軽くなっていくとされています。つらい副作用が続く場合は、我慢せず医師に伝えることで、量の調整や薬の変更といった対応がとれます。

副作用が出たら終わり、ではなく、出たら調整していくもの。そう知っておくだけでも、構えが少し変わるかもしれません。

副作用に気づいたら、一人で我慢せず医師へ伝え、調整を相談できます。
副作用に気づいたら、一人で我慢せず医師へ伝え、調整を相談できます。

抗うつ薬に依存性はあるのか

抗うつ薬には、一部の睡眠薬や抗不安薬にみられるような依存性は基本的にないとされています。

やめられなくなるのではという心配は、抗うつ薬と他の薬のイメージが混ざって生まれていることが多いようです。不安な場合は、処方された薬がどの種類なのかを医師や薬剤師に確認してみてください。

ネット上の体験談は強い言葉ほど目に入りやすいものです。個人の体験は参考のひとつにとどめて、自分の薬のことは処方した医師に確かめる方が、不安の膨らみを抑えられます。

自己判断でやめない・一生飲むわけではない

抗うつ剤は、一生飲み続ける薬ではありません。多くの場合、症状が安定してから一定期間服薬を続け、医師と相談しながら少しずつ減らしていきます。

一方で、飲み始めた薬を自己判断で急にやめると、めまいや吐き気などの離脱症状が出たり、症状がぶり返したりすることがあります。やめたいと感じたときこそ、その気持ちを医師に伝えることが安全につながります。

これは、まだ飲めずにいる段階でも同じです。飲まないまま放置するのではなく、飲めていないという事実を診察で共有することが次の一歩になります。

依存への不安と、自己判断で急にやめないことは切り分けて考えます。
依存への不安と、自己判断で急にやめないことは切り分けて考えます。

効果が出るまでの2〜4週間

抗うつ剤は、飲んですぐ効く薬ではありません。効果を実感できるまでには2〜4週間ほどかかるとされています。

先に副作用が出て、あとから効果が来る。この時間差を知らないままだと、効かないのに体だけつらい薬だと感じて、続ける意味を見失いやすくなります。

始めるかどうか迷っている段階で、この時間差を知っておくことには意味があります。

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薬を使わない治療法と重症度の関係

薬に頼らない方法はないのか、という疑問にも触れておきます。選択肢そのものと、その選択肢が使える条件をセットで見ることが大切です。

認知行動療法やカウンセリング・休養

うつの治療は薬だけではありません。考え方のパターンに働きかける認知行動療法などの精神療法、カウンセリング、そして十分な休養や環境調整は、いずれも治療の柱とされています。

認知行動療法は、つらさを強めている考え方のクセに気づき、少しずつ現実に沿った見方へ整えていく心理療法で、うつの治療法として広く用いられています。

なかでも休養をとり、ストレスの元から距離を置くことは、薬を使うかどうかにかかわらず回復の土台になります。薬を飲まないなら、その分こうした土台を丁寧に整えることが欠かせません。

精神療法やカウンセリング、休養も回復を支える大切な選択肢です。
精神療法やカウンセリング、休養も回復を支える大切な選択肢です。

軽症と中等度以上で変わる薬の位置づけ

ただし、薬を使わずに対応できるかどうかは、症状の程度によって変わるとされています。

症状の程度薬の一般的な位置づけ
軽症休養・環境調整・精神療法が中心になることも多い
中等度以上薬物療法を組み合わせることが推奨されやすい

中等度以上では、考える力や気力そのものが下がっているため、精神療法だけでは治療が進みにくいことがあります。自分がどの段階にあるかは自己判断が難しいからこそ、医師の見立てを聞く価値があります。

また、薬が必要とされる状態のまま治療を先送りにすると、症状が長引きやすくなることも指摘されています。怖がらせるための話ではなく、迷っている時間ごと医師に相談してよいという意味です。

飲まない選択をするにしても、医師と相談したうえでの選択にすること。それが遠回りに見えて、いちばん安全な道です。

飲みたくない気持ちを医師に伝えるには

最後に、いちばん言いにくいことを診察でどう伝えるかを整理します。飲みたくない気持ちは、隠すものではなく治療の材料になります。

診察で伝える言葉の準備

医師に飲みたくないと言ったら、怒られたり呆れられたりするのではないか。そう感じて言えずにいる方は多いです。

けれど、服薬への不安を共有することは治療の一部です。たとえば、次のような伝え方があります。

  • 副作用が怖くて、まだ飲めていません
  • 依存しないかが不安です
  • いつまで飲むのか、見通しを知りたいです
  • できれば薬以外の方法から試したいです
話しにくい不安はメモにして見せるだけでも、治療を一緒に考える材料になります。
話しにくい不安はメモにして見せるだけでも、治療を一緒に考える材料になります。

うまく話せる自信がなければ、メモに書いて渡すだけでも十分です。言葉にして渡せた時点で、医師はあなたの不安に合わせた説明や提案を返しやすくなります。

ここで、役割の線引きを知っておくと少し楽になります。薬を飲むかどうかを一緒に決めるのは医師の領域で、飲みたくない気持ちを整理していくのは、公認心理師などの心理職と一緒に取り組める領域です。

それでも言いづらさが消えないときは、飲みたくない気持ちの整理そのものを、カウンセリングの場で扱うこともできます。気持ちが言葉になるだけで、診察での話しやすさが変わることは珍しくありません。

つらいサインがあるときの相談先

一方で、立ち止まったままでいない方がよい状態もあります。

眠れない日が続く、食事がとれない、死にたい気持ちがよぎる。こうしたサインがあるときは、飲む・飲まないの結論を出すことよりも、早めに主治医や医療機関へ伝えることを優先してください。

主治医に話す前に誰かに聞いてほしいときは、厚生労働省の相談窓口案内(まもろうよこころ)のように、電話やSNSで話せる公的な窓口もあります。

抗うつ剤を飲みたくないという気持ちは、今日すぐに結論を出さなければいけないものではありません。その気持ちを言葉にして、誰かと一緒に考えられる状態になること。それがすでに、回復に向かう一歩です。

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監修者: 石川蓮(公認心理師)

公認心理師、行動心理士。1997年生まれ。北里大学・大学院卒業。その後、公認心理師と行動心理士の資格取得。
在学中は高齢者や生産人口の色覚異常や朝型夜型特性が睡眠に与える効果等の研究を行う。
大学院卒業後、大学病院附属の研究所にてカウンセリングやデータマネジメント担当として勤務。また、都立高校の心理学講師としても勤務。
「心の悩みを持つ方のそばに寄り添う」をモットーに業務遂行しております。

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