嘔吐恐怖症なのに看護師になりたい。私でも現場でやっていけるのか不安…

監修者の石川蓮(公認心理師)先生より

嘔吐が怖いのに看護の道を選ぶのは、矛盾でも甘えでもありません。

恐怖症は気合いで消えるものではないので、まず仕組みを知るのが先ですね。

吐く場面の少ない働き方は実際にあるし、無理に触れて慣れる必要もないんです。

選択肢を並べて、どうしたいかを一緒に考えましょう。

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10代女性(学生)

高校3年で看護師を目指しているのですが、私には嘔吐恐怖症があります。

実習の話を聞くたび、患者さんが吐く場面を想像して手が冷たくなるんです。

なりたい気持ちは本物なのに、現場で固まる自分しか思い浮かびません。

資格を取っても続けられないんじゃないかと、願書を前に手が止まっています。

ココラボ相談室からの回答

ご相談ありがとうございます。

看護師になりたい気持ちと、吐く場面が怖い気持ち。

その二つを同時に抱えたまま進路を決めるのは、思っている以上に消耗しますよね。

この記事では、嘔吐恐怖症を意志の問題として片づけずに、吐く場面の少ない働き方や、目指すか立ち止まるかを自分で決める見方を一緒に整理していきます。

嘔吐恐怖症で看護師を諦めきれないあなたへ

まずは、なりたい気持ちと不安のあいだで揺れている今の状態を、そのまま置いておけたらと思います。ここでは結論を出す前に、あなたが何に引っかかっているのかを一緒に整理していきます。

なりたい気持ちと吐く場面への不安のあいだで

看護師になりたいという願いは、はっきりとある。

それなのに、患者さんが吐く場面を想像すると体がこわばって、その先を考えられなくなる。

この二つは、どちらかが本物でどちらかが嘘、というものではありません。

なりたい気持ちと、吐く場面が怖い気持ちは、同時に存在していいものです。

看護師になりたい気持ちと吐く場面への恐怖は、どちらも同時に抱えていてよいものです。
看護師になりたい気持ちと吐く場面への恐怖は、どちらも同時に抱えていてよいものです。

矛盾しているように見えて、実は多くの当事者が同じ場所で立ち止まっています。

願いが強いからこそ、続けられなかったらという不安も大きくなる、という関係にあります。

「自分だけがダメなのか」という引け目

恐怖のつらさより、それを人にわかってもらえないつらさの方が重い、という声は少なくありません。

吐くのが嫌なだけでしょ、と流されると、こわくて仕方ない感覚だけが取り残されます。

だからといって、あなたの感じ方が過剰なわけではない。

同じ悩みを抱えたまま現場に立っている看護師は、実際に存在します。

引け目は、周りと自分を比べるほど強くなりやすいものです。

平気そうに見える同級生や先輩も、内側では別の何かと闘っているだけかもしれません。

周囲の平気そうな姿だけを基準にせず、自分の怖さを否定したり採点したりしないことが大切です。
周囲の平気そうな姿だけを基準にせず、自分の怖さを否定したり採点したりしないことが大切です。

見えている一部だけで、自分を採点しないでおけたらと思います。

まずは、この恐怖が何なのかを知るところから始めていきます。

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嘔吐恐怖症は限局性恐怖症という一つの症状

ここでは、嘔吐恐怖症を性格や覚悟の問題ではなく、一つの症状として見ていきます。仕組みがわかると、向き合い方の選択肢も見えやすくなります。

意志の弱さではなく恐怖症という仕組み

嘔吐恐怖症は、特定の対象に強い恐怖が起きる限局性恐怖症という不安症の一つとして扱われます。

高所やとがったものへの恐怖と同じ枠にある、と考えるとわかりやすいかもしれません。

危険の度合いに比べて恐怖が過剰になり、自分でも怖がりすぎだとわかっていても抑えにくい。

これは意志が弱いからではなく、不安の反応が過敏に働いている状態です。

怖い場面を避ける行動が習慣になると、生活の範囲は少しずつ狭まっていきます。

避けること自体が悪いのではなく、避けないと動けない範囲が広がっていないかを見ておきたいところです。

恐怖を意志の弱さではなく不安反応の仕組みとして知ることが、自分を責めすぎない第一歩になります。
恐怖を意志の弱さではなく不安反応の仕組みとして知ることが、自分を責めすぎない第一歩になります。

だから、気合いで吐き気に慣れようとしても、うまくいかないことが多いんです。

仕組みとして起きている以上、気持ちの持ち方だけで乗り越えようとしない方が、結果的に消耗を防げます。

怖いのは自分の嘔吐か他者か吐物か音か

ひとくちに嘔吐が怖いといっても、こわさの中心は人によって違います。

ここを分けて見ておくと、現場のどの場面がつらいのかを予測しやすくなります。

  • 自分が吐くことへの恐怖
  • 他者が吐く場面を見る恐怖
  • 吐物そのものへの嫌悪や接触の恐怖
  • 吐く音やにおいへの反応
恐怖の中心を分けてみると、避けたい刺激と対応できそうな場面の線引きがしやすくなります。
恐怖の中心を分けてみると、避けたい刺激と対応できそうな場面の線引きがしやすくなります。

自分が吐くのは平気でも、他者の嘔吐だけはどうしても無理、という人もいます。

どの刺激に強く反応するかがわかると、避けたい場面と耐えられる場面の線引きがしやすくなります

吐く場面が比較的少ない診療科と働き方

ここでは、諦めるか続けるかの前に、働き方の幅を見ていきます。絶対に嘔吐のない科はありませんが、頻度や質には差があります。

NICU・産科・皮膚科など場面の少ない配属

現役の看護師からは、新生児を扱うNICUは働きやすかったという声があります。

吐くとしてもミルクで、大人の嘔吐ほどの負担にはなりにくい、という理由でした。

産科では、つわりの人が来ても食べていない時間が長く、実際に吐く量は少ない場面もあるようです。

皮膚科や整形外科のクリニック、健診センターや眼科のように、嘔吐に接する頻度が比較的低い環境もあります。

反対に、内科や救急、消化器の病棟は、体調を崩した人が吐く場面に出会いやすい傾向があります。

自分の恐怖がどの刺激で強く出るかと、配属先の場面を照らし合わせておくと、無理のない選び方に近づきます。

嘔吐に接する頻度や自分の反応を照らし合わせ、無理の少ない配属先や働き方を探せます。
嘔吐に接する頻度や自分の反応を照らし合わせ、無理の少ない配属先や働き方を探せます。

もちろん、どの科にも例外はあり、絶対にない場所を探すのは難しいという前提は持っておきたいところ。

それでも頻度の低い環境を選ぶという発想は、諦める以外の現実的な道になります。

役割分担や環境調整で続ける現場の工夫

嘔吐に慣れないまま働き続けている看護師も、実際にいます。

慣れることを目標にせず、工夫で乗り切るという考え方です。

ある現役看護師は、患者さん用と自分用の受け皿を二つ持ち歩いて対応していると書いていました。

慣れられないなら、慣れない前提で動き方を決める、という割り切りですね。

こうした役割分担や環境調整は、弱さの証拠ではなく、続けるための技術です。

一人で抱えず、職場で共有できる相手を見つけられると、負担はさらに分散します。

役割を分け、環境を整え、信頼できる人と共有することは、無理なく働き続けるための技術です。
役割を分け、環境を整え、信頼できる人と共有することは、無理なく働き続けるための技術です。

白衣を着ている時だけ切り替える人もいる

プライベートでは人の嘔吐に近づけないのに、白衣を着ている間は対応できる、という当事者もいます。

仕事のときだけ、と自分で区切ることで動ける人がいるということです。

これは無理な我慢というより、心のスイッチの使い方に近いものです。

オンとオフを分けることで、恐怖に飲まれずに役割を果たせる場合があります。

ただし、切り替えが効くかどうかは人によります。

効かないときに自分を責める材料にはしない、という前提で試すのが安全です。

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目指すか続けるか別の道かを自分で決める軸

ここでは、なれるかなれないかの二択ではなく、あなたが自分で決めるための見方を整理します。答えを急がず、判断の材料をそろえていきます。

恐怖が進路や生活を狭めていないか

判断のとき、まず見てほしいのは症状そのものより生活への影響です。

症状の強さだけでなく、睡眠や食事、勉強、外出など日常生活への影響を落ち着いて見ていきます。
症状の強さだけでなく、睡眠や食事、勉強、外出など日常生活への影響を落ち着いて見ていきます。

恐怖のせいで進路や日常が、どのくらい狭まっているかという視点ですね。

外食や外出を避け続けている、実習の想像だけで眠れない、といった支障が続くなら、まず心の状態を整える方が先かもしれません。

逆に、場面を選べば生活が回っているなら、働き方の工夫で続けられる可能性は十分あります。

判断を焦ると、怖さそのものより「早く決めなきゃ」という圧に押されてしまいがちです。

今日の自分に見えている範囲で、少しだけ先の生活を思い描いてみるくらいで十分です。

目指すか立ち止まるかは、根性ではなく、今の生活がどれだけ守れているかで測る方が現実的です。

生活への影響と働き方の工夫を見ながら、目指すかどうかを今すぐ決めない選択もできます。
生活への影響と働き方の工夫を見ながら、目指すかどうかを今すぐ決めない選択もできます。

決めるのはあなたで、今すぐでなくてかまいません。

無理に素手で克服しようとしない

早く慣れたい気持ちから、吐物に素手で触れて平気になろうとする人がいます。

けれど、準備のないまま強い刺激に飛び込むのは、恐怖をかえって深める危険があります。

克服とは、感覚を消すことではありません。

怖さがあっても行動できる範囲を、少しずつ広げていくことの方が、無理な突撃より続きます。

慣れれば大丈夫という言葉に、自分を追い込まないでほしいと思います。

慣れなくても選べる道がある、という前提を手放さないことが、心を守ります。

治療の選択肢と専門家に相談する目安

最後に、付き合っていくための治療と、相談の目安に触れます。一人で抱えるより、専門家の力を借りた方が楽になる場面もあります。

曝露療法や認知行動療法で付き合う

嘔吐恐怖症では、心理療法として認知行動療法や段階的な曝露療法が用いられます。

弱い刺激から順に慣れていき、不安があっても動ける状態を目指す方法です。

医療機関では、絵から写真、映像へと段階を追って恐怖を下げていく取り組みが紹介されています。

段階的な取り組みは、自己流で急がず専門家と相談しながら進めることが大切です。
段階的な取り組みは、自己流で急がず専門家と相談しながら進めることが大切です。

この段階づけは専門家と一緒に進めるもので、自己流でいきなり強い刺激に挑むものではありません。

症状が強いときは、抗不安薬などの薬物療法を組み合わせることもあります。

薬は恐怖を消すためというより、治療に取り組める土台を整えるために使われることが多いようです。

大切なのは、恐怖を完全に消すより、付き合いながら生活を広げるという目標設定です。

ゼロを目指さないことが、かえって前に進みやすくします。

専門家と相談し、弱い刺激から段階的に取り組むことで、生活の範囲を少しずつ広げていきます。
専門家と相談し、弱い刺激から段階的に取り組むことで、生活の範囲を少しずつ広げていきます。

不眠やパニック様症状が出る前に相談する

眠れない、動悸や息苦しさが出る、食事がとれないといったサインが続くときは、早めに相談してよい段階です。

我慢の限界まで待つ必要はありません。

どこに相談するか迷うときは、厚生労働省のこころの耳のような公的な窓口から、専門の相談先を探すこともできます。

公認心理師によるカウンセリングも、進路の悩みごと整理する選択肢の一つです。

看護師になれるかどうかを、一人きりで決める必要はありません。

怖さを言葉にできる相手が一人いるだけでも、視界は少し変わります。

あなたの気持ちを軽く扱わない誰かと一緒に、次の一歩を選んでいけたらと思います。

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監修者: 石川蓮(公認心理師)

公認心理師、行動心理士。1997年生まれ。北里大学・大学院卒業。その後、公認心理師と行動心理士の資格取得。
在学中は高齢者や生産人口の色覚異常や朝型夜型特性が睡眠に与える効果等の研究を行う。
大学院卒業後、大学病院附属の研究所にてカウンセリングやデータマネジメント担当として勤務。また、都立高校の心理学講師としても勤務。
「心の悩みを持つ方のそばに寄り添う」をモットーに業務遂行しております。

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