醜形恐怖症で学校に行けない中学生の娘に、どう声をかければいいのか分かりません
プロモーション
監修者の石川蓮(公認心理師)先生より
醜形恐怖症で学校に行けないお子さんを前にすると、どう声をかけても届かない気がして、親御さんのほうが疲れてしまいますよね。
甘えでも育て方のせいでもありません。
鏡やマスクへのこだわりも、本人なりに不安をしのぐ行動なんです。
急がず、まず今日をどう過ごすかから一緒に考えていけたらと思います。
40代女性(パート・アルバイト)
中学2年の娘が、鏡の前から離れられずに学校へ行けない日が増えました。
アイプチがうまくいかないと泣いて、そのまま布団に戻ってしまいます。
醜形恐怖症ではと調べてみたものの、どう声をかけたらいいのか分からなくて、朝がくるたびに私まで動けなくなるんです。
ココラボ相談室からの回答
ご相談ありがとうございます。
朝がくるたびに気持ちが張りつめて、何と言えば娘さんが動けるのか分からなくなる。そんな時間を、あなたはもう長く続けてきたのかもしれませんね。
この記事では、醜形恐怖症で学校に行けないとき家庭で何が起きているのかを整理し、今日は休ませるか促すかの見立て方と、届きやすい声のかけ方を一緒に考えていきます。
どう声をかければいいか分からない、その戸惑いから始める
朝がくるたびに、どう言えば娘さんが動けるのか分からなくなる。まずはその手詰まりの感覚を、そのまま置いておくところから始めます。この章では答えを急がず、学校に行けない朝に何が起きているのかを一緒に見ていきます。
学校に行けない朝に娘の中で起きていること
鏡の前から離れられない、アイプチが決まらないと泣いてしまう、マスクを外せないから給食が怖い。そんな朝が続くと、親御さんには「なぜそこまで」と映るかもしれません。
けれど本人の中では、鏡を見るたびに違う顔に見えたり、少しの崩れが一日中頭から離れなくなったりしています。気にしているのは顔ですが、本当につらいのは見られることのほうかもしれません。
たとえば体育や水泳、写真撮影、席が近い相手とのグループワークなど、視線が集まる場面ほど登校のハードルは上がります。学校に行けないのは怠けているからではなく、その場に自分をさらすことへの恐怖が強いからです。

見守るしかない無力感を責めなくていい
声をかけても届かず、ただ様子を見ているしかない。その状態を、親として何もできていないと感じてしまう方は少なくありません。
でも、見守れているというのは、少なくとも本人の安全が保たれている状態でもあります。無理に引きはがして登校させないでいられることは、それ自体が支えになっています。
いま結論を出せなくても構いません。まずは今日を大きく崩さずに終える、その積み重ねが後で効いてきます。
監修者の石川蓮(公認心理師)先生に相談してみませんか?
醜形恐怖症で学校に行けなくなるのはなぜか
ここでは、醜形恐怖症とはどんな状態なのかを必要な範囲で整理します。仕組みが少し見えると、朝の行動の意味も違って見えてきます。
醜形恐怖症とはどんな状態か
醜形恐怖症は身体醜形症とも呼ばれ、他人から見れば気にならない外見の一部を、自分では醜いと強く思い込んでしまう状態を指します。国際的な診断基準ICD-11では、強迫症の仲間として位置づけられています。
鏡で何度も確認する、逆にまったく鏡を見られない、人と自分の顔を比べ続ける。こうした行動は、不安を打ち消そうとして繰り返されるものです。本人にとっては、確認せずにはいられないほど切実な苦しさがあります。
決して珍しいものではなく、青年期の有病率はおよそ1.7〜2.2%と報告されています。クラスに一人はいてもおかしくない、という規模の悩みです。

鏡・アイプチ・マスクが登校を止める場面
朝の準備に一時間以上かかる、アイプチが二重にならないと家を出られない、マスクを外す給食や体育の時間だけ休む。上位の相談でも、こうした具体的な場面が繰り返し語られています。
これらは単なる身支度ではなく、安心を確保するための行動です。準備が整わない日は、その一日を乗り切る土台が崩れてしまうと感じられます。
だからこそ、朝の遅れや欠席は「行きたくない」ではなく「行ける状態を作れなかった」に近いことが多いのです。
不登校の中での醜形恐怖症の位置づけ
不登校にはさまざまな背景がありますが、醜形恐怖症による欠席は、外見への不安から人前を避ける回避行動として現れます。不登校を類型で捉える考え方では、神経症性の不安をともなうタイプに近いと整理されることもあります。
ここで大切なのは、原因を一つに決めつけないことです。同じ不登校でも、背景が違えば必要な関わり方も変わってきます。
娘さんの欠席がどのタイプに当てはまるかを性急に断じるより、いま何を避けたくて動けないのかに目を向けるほうが、次の一歩は見つけやすくなります。
思春期に多く治療で登校が戻ることが多い
醜形恐怖症は思春期に多く、平均発症年齢は十代の半ばごろと報告されています。ちょうど、人の目を強く意識し始める時期と重なります。

見通しの部分は慎重に伝える必要がありますが、治療を続けることで、登校できる、教室で落ち着いて座っていられるといった生活の機能が戻っていくことが多いとされています。
すぐに以前どおりにはならないとしても、この状態がずっと同じ強さで続くわけではありません。時間の見立てを少し長めに持っておくことが、親子双方の消耗を防ぎます。
今日は休ませるか、登校を促すかの見立て方
毎朝くり返される「休ませていいのか」という迷いに、決まった正解はありません。この章では、二択で決めきらないための見立ての観点を整理します。
消耗・安全・翌日への影響から考える
判断に迷ったとき、次の三つの観点を手がかりにすると、少し立ち止まりやすくなります。
- 消耗の深さ:睡眠や食事が崩れ、心身のエネルギーが底をついていないか
- 安全:自分を傷つける言動や、消えたいという気配がないか
- 翌日以降への影響:今日無理に促すことで、来週の回避がかえって強まらないか
消耗が深い日は、登校を促すより、まず回復に充てる日と捉えたほうが結果的に登校日を増やすことがあります。逆に、少し余力がありそうな日は、別室や保健室など小さな接点を保つ選択もあります。

大事なのは、休むことを後退と決めつけないことです。休養は、次に動くための準備期間にもなります。
メイクやマスクをすぐ取り上げない理由
アイプチやマスクを一律に禁じたくなる気持ちは自然なものです。ただ、それらは本人にとって不安をしのぐ命綱のような役割を担っています。
いきなり取り上げると、支えを失って余計に動けなくなることがあります。準備行動そのものを責めるより、それがないと安心できない気持ちのほうに関心を向けてみてください。
すぐにやめさせることを目標にせず、少しずつ確認や準備に使う時間を一緒に見直していく。そのくらいの速度のほうが、本人も付き合いやすくなります。
監修者の石川蓮(公認心理師)先生に相談してみませんか?
家庭での声かけと親子のすれ違い
よかれと思ってかけた言葉が、なぜか届かない。この章では、家庭で起きやすいすれ違いを整理し、切り出し方を一緒に考えます。
「かわいいよ」がなぜ届きにくいのか
醜いと思い込んでいる子に「そんなことないよ、かわいいよ」と伝えても、多くの場合その場しのぎにしかなりません。
否定的な保証は、一瞬安心させても「本当にそうかな」という確認をまた呼び込み、かえって不安を強めることがあります。慰めよりも、つらさの中身をそのまま聞いてもらえたと感じられるほうが、本人は落ち着きます。

かわいいかどうかを言い合うのではなく、鏡の前でどれだけしんどい時間を過ごしているのか、その苦労を認める言葉のほうが届きやすいのです。
本人が親に言い出せない気持ち
つらいなら早く言ってほしい。そう思う一方で、本人には言い出せない理由があることが少なくありません。
心配をかけたくない、可愛がってくれているからこそ打ち明けられない、以前「不細工」と口にしたら強く否定された。実際の相談にも、こうした気持ちがそのまま綴られています。
だから、無理に語らせようとするより、「話したくなったら聞くよ」と扉を開けたままにしておくくらいがちょうどよいこともあります。切り出すのは、親のほうからでも構いません。

整形したいと言われたときの向き合い方
高校入学前に整形したい、と娘さんが口にすることもあるかもしれません。頭ごなしに否定すると、気持ちを閉ざしてしまいます。
一方で、醜形恐怖症では経過中に何らかの美容医療を受ける人が多い一方、それで満足に至ることはほとんどなく、別の部位が新たに気になり再燃しやすいと報告されています。この事実は、責める調子ではなく、判断を急がないための材料として共有できます。
する・しないをこの記事や親御さんが決める必要はありません。消耗が最も深い時期に大きな決断を確定させないこと、それだけを一緒に守れれば十分です。
学校や専門機関に相談するときの進め方
最後に、家庭の外に助けを求めるときの進め方を整理します。誰に、どの順で伝えるかが見えると、動きやすくなります。
担任・スクールカウンセラーへの伝え方と環境調整
学校に伝えるときは、わがままではなく、外見への強い不安から人前が怖くなっている状態であることを、具体的な場面とともに共有すると伝わりやすくなります。
たとえば、マスクを外す場面や席の位置、写真撮影の配慮など、困る場面を一つずつ挙げるほうが、精神論より調整につながります。別室登校やスクールカウンセラーの利用、通信制という進路も、逃げではなく環境を合わせる選択肢です。

親が交渉の矢面に立ちすぎて消耗しないよう、担任だけで難しければスクールカウンセラーや管理職を間に入れることも考えてみてください。
相談先の整理と保護者だけで始められる相談
相談先は、心療内科・精神科、思春期を扱うクリニック、心理カウンセリングなどがあります。何科か迷う場合は、まず思春期のこころを扱う医療機関を探すのが目安になります。
本人がどうしても動けない段階では、保護者だけで相談を始めても構いません。実際、親御さんの相談から始めて、少しずつ本人につなげていく形をとる機関は少なくありません。
公的な窓口として、まもろうよ こころ(厚生労働省)や、子ども本人向けの24時間子供SOSダイヤルもあります。まず話を聞いてもらう先として知っておくと、いざというとき動きやすくなります。
治療の進み方と受診を急いだ方がよいサイン
治療では、認知行動療法や、不安な場面に少しずつ慣れていく曝露療法が中心になります。室内でマスクを外す、人通りのある場所を歩く、写真を見返すといった段階を、無理のない速さで進めていきます。必要に応じて薬が用いられることもあります。

一方で、次のようなときは相談を急いだほうがよいサインです。消えたい・生きていても仕方がないという言葉や気配があるとき、自分を傷つける行為があるとき、食事や睡眠が大きく崩れているとき。この場合は迷わず、医療機関や公的相談窓口に連絡してください。
焦って何かを決める必要はありません。今日をしのぎ、頼れる先を一つ増やしておく。その積み重ねの先に、娘さんが少し息をつける朝が戻ってきます。