自傷行為の親の対応はどうすべき?思春期の娘にやめさせるための方法を知りたい

監修者の石川蓮(公認心理師)先生より

お子さんの傷に気づいた夜は、頭が真っ白になりますよね。
やめさせなきゃと焦る気持ちは、それだけ大事に思っている裏返しです。
ただ、正面から止めようとするほど、隠れてしまうことが多いんです。
まずは傷の手当てから。
責める前に、そこだけ一緒にできたら十分だと私は思っています。

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ご相談ありがとうございます。

腕の傷を見つけた瞬間の、心臓が縮むような感覚は、なかなか言葉になりませんよね。どう声をかけても間違える気がして、動けなくなってしまう方は少なくありません。

この記事では、自傷に気づいたときの親の対応を、気づいた日の夜からの流れに沿って整理します。やめさせる前に何ができるのか、一緒に考えていけたらと思います。

自傷に気づいて動揺している親のあなたへ

子どもの傷に気づいたあとの数日は、考えがうまくまとまらないものです。自傷への親の対応に、たった一つの正解があるわけではありません。ここではまず、あなた自身の動揺を自然な反応として受け止めるところから始めます。

気づけたことにまず意味がある

傷に気づいた時点で、あなたはすでに子どもの異変を見逃さずにいます。多くの自傷は、誰にも知られないよう一人きりで行われると報告されています。そのなかで気づけたことは、決して小さくありません。

いま必要なのは、正しい対応を完璧にこなすことより、気づいた事実をこわがりすぎないことです。一度にすべてを解決しようと焦ると、かえって空回りしやすくなります。

気づけた事実を大切にし、親自身の怖さを認めて呼吸を整えることが、次の穏やかな一言につながります。
気づけた事実を大切にし、親自身の怖さを認めて呼吸を整えることが、次の穏やかな一言につながります。

責めたくなるのは怖さの裏返し

なんでこんなことを、と問い詰めたくなるのは、それだけ子どもを失いたくないからです。その気持ち自体は、責められるものではありません。

ただ、恐怖から出た言葉は、子どもには叱責として届きがちです。自分がいま動揺していると気づいておくだけでも、次の一言は変わってきます。ここで一度、呼吸を整えるくらいでかまいません。

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自傷は生き延びるサインでやめさせるほど隠れる

やめさせたいのに、やめさせようとするほど遠ざかる。この一見矛盾した仕組みを知ると、力の入れどころが変わります。ここでは自傷の意味と、隠れてしまう理由を整理します。

死にたいではなく今を耐える行動

自傷と聞くと、死にたい気持ちの表れだと感じるかもしれません。けれど実際は、死ぬためではなく、つらさを一時的に鎮めて今を生き延びるための対処として行われることが多いとされています。死ぬつもりのない自傷は、非自殺性自傷と呼ばれます。

とはいえ、放っておいてよいわけではありません。自傷の経験は、その後の自殺リスクと関連することも知られています。意味を理解することと、ただ見守ることは、分けて考えてください。

自傷を今のつらさに耐える対処として理解しつつ、責めずに見守り、安全の変化を確かめることが大切です。
自傷を今のつらさに耐える対処として理解しつつ、責めずに見守り、安全の変化を確かめることが大切です。

やめさせないという言い方に、放っておくのかと不安になるかもしれません。それは見て見ぬふりとは違い、傷の手当てをうながし、様子を見守り、頻度や方法の変化を把握しておく関わりを指します。正面から迫って止めさせようとするより、こうした関わりのほうが、結果として子どもの安全を守ります。

約10人に1人が抱える一人きりのSOS

自傷は、特別な家庭だけに起きることではありません。とりわけ思春期は感情の揺れが大きく、厚生労働省研究班監修のヘルスケアラボによると、中高生の約10人に1人が自傷を経験したことがあると報告されています。

育て方のせいだと、自分を追い込む必要はありません。背景には学校や友人関係、発達特性など、いくつもの事情が重なっていることがほとんどです。

原因を一つに決めつけず、話せるときに話せる距離を保つことが、親子の安心を守る土台になります。
原因を一つに決めつけず、話せるときに話せる距離を保つことが、親子の安心を守る土台になります。

叱責や約束が逆効果で隠れて続く

二度としないと約束して、と言いたくなりますが、この約束はしばしば裏目に出ます。守れなかったときの自己嫌悪が増え、傷を見えない場所へ移して隠すようになりやすいからです。自傷の多くはアピールではなく、誰にも気づかれないよう一人きりで行われるという調査もあります。だからこそ、叱って抑え込もうとするほど、かえって状況は見えにくくなっていきます。

叱られた子どもは、自分の対処法ごと否定されたように感じます。大切なのは、悪い知らせも安心して話せる関係が保てているかです。そこさえ切れなければ、支える余地は残ります。

叱って止めようとすると隠れて続き、さらに相談しにくくなるため、まず関係を切らないことを優先します。
叱って止めようとすると隠れて続き、さらに相談しにくくなるため、まず関係を切らないことを優先します。

脳の鎮静作用とエスカレートのしくみ

自傷には、痛みによって一時的に気持ちが静まる感覚が伴うことがあります。これは脳内の神経伝達物質の働きによると指摘されています。

問題は、この感覚に慣れが生じることです。同じ刺激では鎮まらなくなり、回数が増えたり傷が深くなったりする変化は、危険度が一段上がったサインと受け止める必要があります。

発達特性やうつが背景にあることも

自傷があるからといって、必ず病気だとは限りません。ただ、ADHDやASDといった発達特性、うつ、過去のつらい体験などが背景に隠れていることはあります。

これは原因を一つに決める話ではなく、一人で抱えず専門家の見立てを借りてよい理由として知っておくと役立ちます。診断名より、本人が何に困っているかへ目を向けたいところです。

気づいた日の夜からできる声かけと手当て

ここからは、実際に何を、どの順で行うかを、時間の流れに沿って見ていきます。完璧な台詞は要りません。順番の見当がつくだけで、少し動きやすくなります。

事実を穏やかに伝え手当てを一緒にする

最初の一手は、問い詰めることでも約束させることでもありません。見えたことを、決めつけずに事実として穏やかに伝えるのが出発点です。たとえば、さっき腕に傷が見えたんだけど、と日時や状況を添えて伝えます。

見えた事実を穏やかに伝え、手当てを優先し、責めずに聞く順番だけ覚えておけば十分です。
見えた事実を穏やかに伝え、手当てを優先し、責めずに聞く順番だけ覚えておけば十分です。

そのうえで、まず優先したいのは傷の手当てです。原因を追及する前にケガの手当てをすることは、大切に思う気持ちがまっすぐ伝わる関わりになります。

もし思わず怒鳴ってしまっても、そこで関係が終わるわけではありません。落ち着いたときに、さっきは驚いて強く言ってしまってごめん、と一言だけ伝え直すことで、子どもは受け止め直してもらえたと感じます。やり直せる余地は、いつでも残っています。

言葉が出ないときは、方法を押しつけず、隣で一緒に呼吸を整えるだけでも安心につながります。
言葉が出ないときは、方法を押しつけず、隣で一緒に呼吸を整えるだけでも安心につながります。

使える言葉と避けたい言葉

かける言葉に迷ったときは、次の対比が目安になります。

届きやすい言葉避けたい言葉
そんなにつらかったんだねなんでこんなことするの
気づけてよかった死ぬ気もないくせに
話してくれてありがとう二度としないと約束して

受け止める言葉は、子どもが次に口を開くための余白になります。うまく言えなくても、責めずにそばにいる姿勢が伝われば十分です。

問い詰める代わりに、気づいたことを伝え、話せるときを待つ姿勢が次の相談の余白になります。
問い詰める代わりに、気づいたことを伝え、話せるときを待つ姿勢が次の相談の余白になります。

代替行動は提案しつつ効きすぎに注意

つらくなったときの別の方法を一緒に探すことも助けになります。氷を強く握る、輪ゴムをはじく、紙を破る、気持ちを書き出すといった方法が知られています。

ただ、こうした刺激で気を逸らすやり方は、慣れが生じやすい面もあります。提案しても拒まれることは珍しくなく、無理に置き換えさせようとしないことが大切です。呼吸を整える練習など、穏やかな方法も並行して少しずつ試せるとよいでしょう。うまくいかない日は、方法探しをいったん脇に置いて、ただ隣にいるだけでもかまいません。

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受診と救急の見極め・親だけでも相談できる

やめさせられるかどうかより、まず安全をどう守るかです。ここでは、様子を見てよい状態と、早めに動いたほうがよい状態の線引きを、煽らずに整理します。

頻度増や傷の深さなど危険が高まるサイン

次のような変化があるときは、早めに医療機関へ相談する目安とされています。

  • 自傷の頻度が増えている
  • 傷が以前より深くなっている
  • 過量服薬や飲酒などが加わってきた
  • 食事の問題が重なってきた
  • 死にたい気持ちを繰り返し口にする

これらは叱って止める段階ではなく、専門家の力を借りる合図です。一つでも当てはまるなら、相談をためらわないでください。

危険が高まるサインがあるときは、子どもを無理に連れ出す前に、親だけで専門家へ相談してかまいません。
危険が高まるサインがあるときは、子どもを無理に連れ出す前に、親だけで専門家へ相談してかまいません。

出血や意識の異常はためらわず救急へ

傷の出血が止まらない、意識がぼんやりしている、大量に薬を飲んだ可能性がある。こうしたときは、様子見の対象ではありません。過量服薬は、この量なら安全という線引きができないとされており、迷ったら受診や相談を優先してください。

身体の安全が危ういときは、ためらわず救急(119)を利用してください。その場で完璧な声かけを考える必要はありません。落ち着いてから、かかりつけ医などに状況を伝えましょう。

スクールカウンセラーや相談窓口の使い方

相談先は病院だけではありません。スクールカウンセラーや養護教諭、精神保健福祉センター、児童相談所など、身近な窓口があります。親だけで相談してよいことも、知っておいてください。学校に伝えるべきか迷うときは、子ども本人にひとこと断ってからのほうが、その後の信頼を保ちやすいとされています。

公的な電話相談は、厚生労働省のまもろうよ こころに、こころの健康相談統一ダイヤルやいのちの電話などがまとまっています。本人を無理に受診させるより、まず親が相談の一歩を踏み出すところからでかまいません。

親自身の消耗と夫婦・きょうだいへの配慮

最後に、後回しになりがちな親自身のことを扱います。支える人が消耗しきると、支え続けること自体が難しくなります。ここは、自分を守る話として読んでください。

支える親も一人で背負わず、休む時間を持ち、自分のために相談してよい存在です。
支える親も一人で背負わず、休む時間を持ち、自分のために相談してよい存在です。

自責と共感性疲労から自分を守る

子どものつらさに向き合い続けると、親のほうも眠れなくなったり、気持ちがすり減ったりします。相手の苦しみに共感して自分もつらくなる状態は、共感性疲労と呼ばれます。

子どもの回復の速さを、自分の頑張りの点数と結びつけないことが、消耗を防ぐ助けになります。うまくいかない日があっても、それはあなたの値打ちとは別の話です。気持ちを誰かに話す時間も、手放さないでいてください。

夫婦で方針が割れたときの考え方

厳しく関わりたい親と、見守りたい親とで、意見が食い違うことはよくあります。どちらかだけが正解というより、子どもの前で対立を見せないことと、危険なサインの基準だけは共有しておくことが現実的です。

きょうだいがいる場合、その子も不安を抱えていることがあります。事情をすべて話す必要はありませんが、あなたのせいではないと短く伝えておくだけでも、その子の安心につながります。全員を一人で支えようとせず、専門機関という第三者を早めに間に入れてよいと考えておくと、少し楽になります。一人で背負いきらない形を、家族で探していけたらと思います。

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監修者: 石川蓮(公認心理師)

公認心理師、行動心理士。1997年生まれ。北里大学・大学院卒業。その後、公認心理師と行動心理士の資格取得。
在学中は高齢者や生産人口の色覚異常や朝型夜型特性が睡眠に与える効果等の研究を行う。
大学院卒業後、大学病院附属の研究所にてカウンセリングやデータマネジメント担当として勤務。また、都立高校の心理学講師としても勤務。
「心の悩みを持つ方のそばに寄り添う」をモットーに業務遂行しております。

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