学習性無力感かもで、カウンセリングに行くほどなのか自分でも分からない…

監修者の石川蓮(公認心理師)先生より

何をしても無駄だと感じていると、カウンセリングに行くかどうかを決めること自体、重たく感じますよね。

その迷いは、あなたが真剣に立ち止まっている証でもあります。

行く行かないを、今すぐ決めてしまわなくて大丈夫。

まずは自分がどれくらい消耗しているか、眺めるところから始めてみてください。

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30代女性(会社員・公務員)

職場で何を提案しても通らない日が続いて、最近は会議で発言する前から、どうせ無理と考えるクセがついてしまって。

学習性無力感という言葉を知り、あ、これかもしれないと思いました。

とはいえ、この程度でカウンセリングに行くのは大げさな気もして、なかなか決めきれません。

ココラボ相談室からの回答

ご相談ありがとうございます。

どうせ無理と感じてしまうほど、これまで十分に力を尽くしてこられたのだと思います。学習性無力感は、性格や甘えではなく、環境の中で身についた反応として知られています。

この記事では、カウンセリングに行くか迷うときの判断軸と、実際に相談で何を話すのかを、一緒に整理していきます。

「どうせ無駄」と感じて動けないのは自然なこと

まずは、いま感じている無力感がどこから来ているのかを一緒に眺めていきます。ここで答えを急がず、あなたの現在地を確認するところから始めます。

相談する気力が出ないのは意志の弱さではない

何をしても状況が変わらない経験が重なると、人は動いても無駄だと学習していきます。これは怠けや甘えではなく、繰り返しの中で身についた反応です。

だから、カウンセリングに行く気力すら出ないのも自然なことです。相談するという行動そのものが、いまのあなたにとっては一番ハードルの高い一歩かもしれません。

この程度で相談していいのか、という迷いも無力感の一部として現れます。相談しても無駄だろうという諦めそのものが、学習性無力感の一つの現れでもあります。大げさかどうかを、つらさの大きさだけで測らなくて大丈夫です。

その無力感には名前がついている

何をやっても無駄だという感覚には、学習性無力感という名前がついています。学習性無気力や学習性絶望感と呼ばれることもあります。

動いても無駄だと感じ、相談まで怖くなるのは、意志の弱さではなく繰り返しの経験から身についた反応です。
動いても無駄だと感じ、相談まで怖くなるのは、意志の弱さではなく繰り返しの経験から身についた反応です。

名前がつくと、それが性格の欠陥ではなく、環境との関わりの中で起きた現象だと少し距離を置いて眺められます。自分が悪いという以外の説明があると知ることが、回復の入り口になります。

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学習性無力感とはどんな状態か

ここでは、学習性無力感がどんな仕組みで生まれるのかを整理します。定義を押さえておくと、自分の状態を落ち着いて見やすくなります。

セリグマンの実験からわかること

学習性無力感は、心理学者マーティン・セリグマンが提唱した概念です。回避できない電気刺激を受け続けた犬が、あとで逃げられる状況になっても行動を起こさなくなった、という実験がよく知られています。

ここで大切なのは、行動しなくなった理由が能力ではなく、これまでの経験にあるという点です。環境が、何をしても無駄だと教え込んだ結果なのです。

この実験には続きもあります。無理にでも逃げられる経験をやり直すと、犬は再び行動を取り戻していきました。一度学んだ無力感も、条件が変われば書き換わりうるという見方は、いまのつらさを固定しないための手がかりになります。

否定される経験が重なると、逃げたり提案したりできる場面でも、動く前から諦める反応が残ることがあります。
否定される経験が重なると、逃げたり提案したりできる場面でも、動く前から諦める反応が残ることがあります。

つまり、いまのあなたの動けなさも、努力不足では説明できません。

パワハラや毒親など環境が作る無力感

学習性無力感は、逃げ場のない環境で長く続くストレスから生まれやすいとされます。理不尽な叱責が続く職場、否定され続ける家庭、パワハラやモラハラなどが典型です。

繰り返し否定される状況が続けば、多くの人が同じように無力感に陥るとも指摘されています。特別に弱い人だけがなるものではありません。

たとえば、提案しても却下され続ける職場に長くいると、やがて発言する前から諦めるようになります。これは意欲の問題というより、環境がそう学習させたと捉えるほうが実態に近いのです。

まず環境の側に原因はなかったかを先に見ることが、自分を責めすぎないための順序になります。

否定が続く環境で諦めを学んだなら、自分を責める前に、無力感を生んだ環境の側を見直すことが大切です。
否定が続く環境で諦めを学んだなら、自分を責める前に、無力感を生んだ環境の側を見直すことが大切です。

うつ病との違いと重なり

学習性無力感は、うつ病の一因として関わっていると考えられています。ただ、同じものではありません。

無力感に加えて、気分の落ち込みや不眠、食欲の変化などが続く場合は、うつ病の可能性も視野に入ります。無力感が長引くうちに、うつ状態へ移っていくこともあると言われています。

どちらなのかを見極めるのは医療機関の役割で、記事やセルフチェックはあくまで目安にとどまります。自分で診断名をつけて安心も不安もしすぎず、気になる不調が続くなら専門家に確かめる、くらいの距離感がちょうどよいと思います。

カウンセリングに行くべきか迷うときの判断軸

ここが、いちばん知りたいところだと思います。行くか行かないかの二択ではなく、いまの状態に合う選択肢を一緒に考えていきます。

カウンセリングが向いているサイン

次のような状態が続いているなら、心理カウンセリングが力になりやすい段階です。

  • 自分が悪いという以外の説明が浮かばなくなっている
  • 一人で抱えている期間が長く、誰にも話せていない
  • つらさの原因を整理したいのに、自分だけでは堂々巡りになる

これらは、話を聞いてもらいながら考えを整理する作業と相性のよいサインです。つらさの強さだけでなく、一人で抱えている期間の長さや、選択肢が見えなくなっている度合いのほうを目安にしてみてください。

一人で長く抱え、考えが堂々巡りになっているときは、相談先を調べること自体が小さな選択肢になります。
一人で長く抱え、考えが堂々巡りになっているときは、相談先を調べること自体が小さな選択肢になります。

大げさに思えても、視野が狭くなっている自覚があるなら、それだけで相談する理由になります。

先に医療機関を考えたい状態

一方で、心理カウンセリングより先に医療機関を検討したいときもあります。

眠れない、食べられない状態が続いている。消えてしまいたい気持ちが出てきている。日常生活が回らない。こうしたときは、心療内科や精神科での評価が先になることがあります。

心理カウンセリングは話を整理し、認知や行動のパターンを扱う場所です。医療機関は症状の評価と治療を行う場所で、役割が違います。体の症状が出ているかどうかが、どちらを先にするかの分かれ目になりやすいです。

気持ちを整理したいときはカウンセリング、症状の評価が必要なときは医療機関が役立ち、迷う段階から相談して構いません。
気持ちを整理したいときはカウンセリング、症状の評価が必要なときは医療機関が役立ち、迷う段階から相談して構いません。

二週間続く不調は相談の目安(診断ではない)

気分の落ち込みや意欲の低下、不眠や食欲の変化が二週間以上続いているときは、一人で抱えずに相談を考えたい目安とされています。

ただし、これは診断ではありません。あくまで立ち止まって考えるための目安です。数字に当てはまらないから相談してはいけない、ということでもありません。

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カウンセリングでは実際に何を話すのか

予約する前の不安の多くは、何をされるのか分からないことから来ます。ここでは、実際の流れのイメージをお伝えします。

話がまとまっていなくても大丈夫

カウンセリングは、悩みをきれいにまとめてから行く場所ではありません。何を話せばいいか分からないという状態のまま、話し始めても構いません。

むしろ、まとまらない気持ちを言葉にしていく過程そのものが、整理の作業になります。うまく説明できない自分を責めずにいて大丈夫です。

環境と自分を切り分けて整理する

カウンセリングでよく行うのは、環境の影響と自分の受け止め方を切り分ける作業です。何が環境の問題で、何なら自分で変えられそうかを、一緒に見ていきます。

切り分けの作業では、努力でどうにかなる範囲と、環境や相手の側の責任である範囲を分けて見ていきます。全部を自分のせいにしていた状態から、ここは自分、ここは環境、と線を引けるだけで、少し呼吸がしやすくなることがあります。

まとまらない話をそのまま持ち込み、環境の影響と自分で変えられる範囲を一緒に切り分けることもカウンセリングの役割です。
まとまらない話をそのまま持ち込み、環境の影響と自分で変えられる範囲を一緒に切り分けることもカウンセリングの役割です。

心理学では、やればできるという感覚を自己効力感と呼びます。学習性無力感から抜けるとき、この自己効力感を少しずつ取り戻すことが鍵になると考えられています。回復とは、元どおり動けることより、選択肢が見えている状態を取り戻すことに近いのかもしれません。

費用や回数など通う前に気になること

費用や通う頻度は、相談先によって幅があります。対面のほか、自宅から話せるオンラインカウンセリングを選べるところも増えています。初回で今後の見通しや料金を確認できることが多いので、分からないまま抱え込まなくて大丈夫です。

まず一度だけ話し、対面やオンラインなど通い方を選び、合わなければ相談先を変えるという進め方もできます。
まず一度だけ話し、対面やオンラインなど通い方を選び、合わなければ相談先を変えるという進め方もできます。

一度きりにするか、しばらく続けるかも、話しながら決めていけます。合わないと感じたら、無理に通い続けなくてもかまいません。通い方を自分のペースで選べると知っておくだけで、予約前のハードルは少し下がることがあります。

一歩が踏み出せないときの小さな始め方

最後に、動けないときにどこから始めればいいかを整理します。無理に大きく動かず、いまできそうなところから考えます。

相談することが最初の小さな一歩になる

よく勧められる小さな成功体験を積むという方法は、動けない人にとってはその一歩自体が難しいものです。

だからこそ、信頼できる誰かに一言だけ話してみることを、最初の小さな一歩と考えてみるのも一つです。相談すること自体が、やってみたら少し変わったという経験の候補になります。

多くの記事が小さな成功体験を勧めますが、その最初の一つに相談を置いてよいのだと思います。うまく話せなくても、話そうとしたこと自体が、動いても無駄という学習を少しだけ揺らします。

信頼できる人に一言だけ伝えることも、動いても無駄という学習を少し揺らす、小さな一歩になりえます。
信頼できる人に一言だけ伝えることも、動いても無駄という学習を少し揺らす、小さな一歩になりえます。

家族や友人に話しづらければ、まずは匿名で使える窓口から始めても構いません。

環境から離れられないときの選択肢

転職や引っ越しがすぐには難しく、環境から離れられない人も多いと思います。その場合は、相談相手の選び方が助けになります。

同じ職場の同僚は、同じ無力感に陥っている可能性があります。なるべく違う環境にいる人に話すほうが、狭くなった視野を広げやすいとされています。

休職や部署異動という選択肢を、一人で先に打ち消してしまわないことも大切です。消耗しきった状態のまま、転職や退職といった大きな決断を単独で急がないほうがよいときもあります。判断力そのものが、いまの状況の影響を受けている場合があるからです。

すぐに環境を離れられないときは、違う環境の人や公的窓口につながり、大きな決断を一人で急がない選択も大切です。
すぐに環境を離れられないときは、違う環境の人や公的窓口につながり、大きな決断を一人で急がない選択も大切です。

つらさが強いときの公的な相談窓口

消えてしまいたい気持ちがあるときや、パワハラ・虐待など安全が脅かされているときは、心理的な整理より先に、その場から離れることや公的な窓口につながることが優先されます。

働く人の悩みについては、厚生労働省の委託事業であるこころの耳電話相談などの無料窓口があります。うまく話せなくても構わないので、一人で抱えきらないでいてください。

行くか行かないかをいますぐ決めなくても、選択肢を知っておくだけで十分な一歩です。

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監修者: 石川蓮(公認心理師)

公認心理師、行動心理士。1997年生まれ。北里大学・大学院卒業。その後、公認心理師と行動心理士の資格取得。
在学中は高齢者や生産人口の色覚異常や朝型夜型特性が睡眠に与える効果等の研究を行う。
大学院卒業後、大学病院附属の研究所にてカウンセリングやデータマネジメント担当として勤務。また、都立高校の心理学講師としても勤務。
「心の悩みを持つ方のそばに寄り添う」をモットーに業務遂行しております。

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