気分循環性障害の家族への接し方に困り、イライラの波に振り回される…

監修者の石川蓮(公認心理師)先生より

気分の波に振り回されていると、自分の対応が悪いのかと責めてしまいますよね。

でも、読みづらい波に疲れるのは、あなたが薄情だからではないんです。

全部を受け止めようとせず、少し離れる日があってもいい。

支える人が倒れないことも、立派な接し方だと私は思います。

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40代女性(パート・アルバイト)

夫が気分循環性障害と言われてから、機嫌のいい日と沈む日の落差についていけません。

昨日まで笑っていたのに、今朝は些細なことで声を荒げられて、体がすくみました。

私の言い方が悪かったのかと考え込む夜が増えて、どう接すればいいのか分からなくなっています。

ココラボ相談室からの回答

ご相談ありがとうございます。

気分の波に毎日合わせていると、自分の心まで一緒に揺れてしまいますよね。目の前の機嫌に反応するだけで、一日が終わってしまう日もあると思います。

この記事では、気分循環性障害の接し方を、時期ごとの関わりと、支える側が線を引いてよい範囲の二つから整理します。読み終える頃に、少し肩の力が抜けていたらうれしいです。

気分の波に振り回されて疲れていませんか

まず、支える側であるあなたの疲れから見ていきます。相手の機嫌に合わせて動く毎日は、思っている以上に消耗します。その疲れに名前をつけるところから始めましょう。

イライラの矛先を受け止め続ける疲れ

昨日は穏やかだったのに、今日は些細な一言で不機嫌になる。そんな落差の中にいると、次はどっちだろうと常に身構えてしまいます。

相手のイライラを、自分への評価だと受け取ってしまうと、心はさらに削られます。表情をうかがい、言葉を選び、家の空気を読む。その積み重ねが、じわじわと効いてきます。

相手の機嫌を読み続ける疲れ
相手の機嫌を読み続ける疲れ

気分循環性障害の接し方に悩むのは、相手を大切に思っているからでもあります。だからこそ簡単には離れられず、疲れをためこみます。そして、うまく支えられない自分を責める方向に向かいやすいです。

いつからこんなに気をつかうようになったのか、思い出せない。そう感じているなら、あなたはもう十分すぎるほど頑張っています。

その疲れは自然な反応です

振り回されて苦しいのは、あなたが弱いからではありません。予測できない波のそばにいれば、誰の神経もすり減ります。

疲れている自分を責めなくて大丈夫です。むしろ、疲れに気づけたことは、これからの関わりを見直す入口になります。相手のためにも、まず自分の状態を知る順番が役に立ちます。

今日の自分がどれくらい消耗しているか、静かに眺めてみてください。眠れているか、食べられているか。その二つだけでも、心の余力がだいたい見えてきます。

支える側が自分の疲れに気づく
支える側が自分の疲れに気づく
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気分循環性障害とは、性格の問題ではない理由

続いて、相手の状態を整理します。接し方を考える前に、何が起きているのかを知ると、対応の軸が定まります。

気分循環性障害は、軽い高揚と軽い落ち込みを繰り返す状態です。DSM-5では、その期間を2年以上とし、双極症の関連群に位置づけています。躁やうつの診断基準までは満たさないため、性格のせいだと見過ごされがちです。

軽躁期と抑うつ期にあらわれるサイン

調子が上がっている時期は、睡眠が短くても平気で、多弁になり、予定を詰め込みます。このとき、イライラや易怒性が前に出る人もいます。急に態度が大きくなったり、衝動的な買い物が増えたりもします。

落ち込む時期は、意欲が下がり、疲れやすく、人に会いたがらなくなります。口数が減り、返事が遅くなることもあります。同じ人の中で、この二つが数日から数週間の単位で行き来します。

気分と睡眠を一緒に記録する
気分と睡眠を一緒に記録する

どちらも本人が選んでいるわけではありません。波はコントロールしづらいと知っておくと、受け取り方が変わります。相手の言動を、その日の天気のように眺める視点も助けになります。

生活リズムの乱れも波のサインになる

睡眠や起床の時間がずれ始めると、気分の波は大きく振れやすくなります。夜更かしが増えた、食事の時間がばらついてきた。そうした変化は、次の波の前ぶれかもしれません。

こうした生活リズムを整える関わりは、家庭でもできる支えです。対人関係・社会リズム療法という治療の枠組みでも、同じ点が重視されています。専門的な治療の柱の一つが、実は日々の暮らしの中にあるのです。

気分と睡眠を短くメモしておくと、傾向が見えてきます。責めるためではなく、一緒に眺める材料として使うのがコツです。波が来る前に休む予定を入れておく、といった備えにもつながります。数値や記録は、感情のぶつかり合いを避けるクッションにもなります。

気分と睡眠の記録を一緒に眺める
気分と睡眠の記録を一緒に眺める

双極症など他の疾患との違いは専門家の領域

気分循環性障害は、双極症Ⅰ型やⅡ型、うつ病、ADHDなどと見分けにくい状態です。似た状態が複数あるので、診断は専門家の領域になります。長い経過をたどるうちに、双極症として診断が変わる人もいます。

家族が病名を確定させる必要はありません。あなたの役割は、診断ではなく、日々の関わりを少し整えることです。気になるサインをメモして、受診のときに医師へ渡す。その橋渡しだけでも、十分に意味があります。

気分循環性障害の時期に合わせた接し方と伝え方

同じ言葉でも、相手がどの時期にいるかで受け取られ方は変わります。ここでは軽躁期、抑うつ期、落ち着いた時期に分けて、接し方と伝え方を整理します。

軽躁期は大きな決定を急がせない

調子が上がっている時期は、勢いのまま大きな買い物や決断に進みがちです。この時期は、止めようとするほど反発を招きます。助言そのものが届きにくくなる時期だと考えておくと、こちらも構えずにすみます。

真正面から否定せず、決定を少し先送りにする提案が効きます。来週もう一度考えよう、と時間を置く。その一言が、後悔の芽を摘む日もあります。

その場で説き伏せようとしないことも大切です。上がっている時期の説得は、けんかの火種になりやすいからです。

大きな決定を急がせない伝え方
大きな決定を急がせない伝え方

抑うつ期は無理に励まさない

落ち込む時期は、頑張ってと背中を押すほど、本人を追い込むことがあります。励ましより、そばにいる姿勢のほうが届きます。

何かしてほしいことはある、と短く尋ねてみる。返事がなくても、静かに待つ。それだけで支えになる日もあります。温かい飲み物をそっと置く、といった小さな行動が、言葉以上に伝わることもあります。

家事や連絡を代わりに引き受けすぎないことも、この時期の目安です。回復のペースは本人のもので、周りが巻き取りすぎると、かえって自信を奪います。

イライラを向けられたときの言葉選び

強い言葉をぶつけられたら、その場で言い返さないほうがこじれません。売り言葉に買い言葉は、後で二人とも傷つけます。

いま少し疲れているみたいだから、あとで話そう。そう言って、その場を離れてかまいません。伝えたいことは、相手が落ち着いた時期にまわす。この時間差が関係を守ります。

言い返さず、落ち着く時間をつくる
言い返さず、落ち着く時間をつくる

ただし、症状だからと何でも受け流す必要はありません。傷ついたことは、落ち着いた時期に、あなたを主語にして静かに伝えてよいのです。

受診をすすめるタイミングと伝え方

受診の話は、上がっている時期より、落ち着いた時期のほうが受け取ってもらえます。病名で説得しようとせず、困りごとに寄せて話します。

眠れない日が続くのが心配、と主語を心配に置く。責める形にしないことが、次の一歩につながります。あなたを助けたいだけなんだ、という気持ちが伝われば、身構えもゆるみます。

困りごとを話して相談につなぐ
困りごとを話して相談につなぐ

本人が受診を拒むこともあります。そのときは無理に連れ出そうとしなくて大丈夫です。まずあなたが専門機関に相談し、次の関わり方を教わる道もあります。相手を動かす前に、こちらが情報を持っておくと気持ちが楽になります。

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気分循環性障害を支える側の境界線とセルフケア

最後は、あなた自身を守る話です。支え続けるには、全部を引き受けない工夫が要ります。境界線とケアの持ち方を見ていきましょう。

引き受けなくていい範囲を決める

支えることと、相手の課題を肩代わりすることは違います。深夜の連絡、金銭の穴埋め、代わりの意思決定は、抱え込まなくてよい領域です。

線を引くのは冷たさではなく、長く関わり続けるための現実的な準備です。断ってよい要求を、あらかじめ自分の中で決めておきましょう。

支える側の境界線とセルフケア
支える側の境界線とセルフケア

自分の仕事や睡眠、友人との時間まで削れていないか。生活が相手の波一色になっていたら、少し戻す合図だと受け取ってください。あなたが倒れてしまえば、支える手そのものがなくなります。自分を守ることは、相手を見捨てることとは違います。

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緊急性の高いサインは様子見にしない

死にたいという言葉、自分を傷つける行為、極端な浪費や衝動的な決断。こうしたサインが見えたら、様子見にはしないでください。

そのときは、一人で判断を抱えず、医療機関や公的な窓口に頼ります。厚生労働省が案内する電話やSNSの相談窓口など、匿名で話せる場所もあります。

判断に迷う段階でも、相談していいのです。何かあってからでは遅い、と自分を追い詰めないでください。早めに外の手をひとつ増やしておきましょう。

あなた自身が相談できる場所

支える側にも、相談できる場所があります。本人の受診とは別に、あなただけでカウンセリングを使ってかまいません。

支える側も相談できる場所を持つ
支える側も相談できる場所を持つ

気分循環性障害の接し方に迷い続けているなら、一人で抱え込まないでください。その迷いも相談の入口になります。言葉にして誰かに預けると、絡まっていた気持ちがほどけていきます。

うまく支えたいという願いは、あなたが誠実に向き合ってきた証でもあります。その気持ちごと、頼れる相手と少しずつ分け合っていけたらと思います。相手の波と、あなたの生活。どちらも大事にしていい、という前提だけは手放さずにいてください。

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監修者: 石川蓮(公認心理師)

公認心理師、行動心理士。1997年生まれ。北里大学・大学院卒業。その後、公認心理師と行動心理士の資格取得。
在学中は高齢者や生産人口の色覚異常や朝型夜型特性が睡眠に与える効果等の研究を行う。
大学院卒業後、大学病院附属の研究所にてカウンセリングやデータマネジメント担当として勤務。また、都立高校の心理学講師としても勤務。
「心の悩みを持つ方のそばに寄り添う」をモットーに業務遂行しております。

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