認知の歪みを自分で治したいのですが、自分で出来る対処法を教えてほしい

監修者の石川蓮(公認心理師)先生より

認知の歪みを自分で治したいと検索するとき、多くの方はもう十分すぎるほど頑張っています。
考え方を変えようとして、かえってしんどくなるのはよくあることなんです。
書き出して余計に落ち込む日があってもいい。
まずは眠れているか、疲れていないか。そこから見てあげてくださいね。

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30代女性(会社員・公務員)

仕事で少し注意されただけで、頭の中が「自分はだめだ」という声でいっぱいになります。

認知の歪みを自分で治そうと、本を読んで書き出してみました。でも読み返すほど、気分が沈むんです。

考え方のクセだと分かっても、直せなくて。こんな自分がまた嫌になってしまいます。

ココラボ相談室からの回答

ご相談ありがとうございます。

直そうと動いているのに、かえって自分を責めてしまう。その苦しさは、努力が足りないからではありません。

この記事では、認知の歪みを自分で治すときの進め方を、体調との関係や、書き出しがつらいときの止め方まで整理します。無理に考え方を変える前に、今の状態から見直せる順番でお伝えします。

書き出しても苦しいのは自然なこと

考え方を直そうとするほど、なぜか気持ちが重くなる。そんな感覚は珍しくありません。ここではまず、その苦しさの正体を一緒に見ていきます。

書き出して落ち込むのは、失敗を意味しません。むしろ、それだけ真剣に自分と向き合えている証拠です。

認知の歪みを自分で治そうとする人ほど、まじめで責任感が強い傾向があります。だからこそ、うまくいかないと「やっぱり自分はだめだ」と受け取ってしまいがちです。

でも、それも一つの考え方のクセかもしれません。直せない自分を、新しい責め材料にしない。まずはそこから始めても大丈夫です。

書き出して沈んだ日は、自分を責める材料にせず、いったん休む選択をしてかまいません。
書き出して沈んだ日は、自分を責める材料にせず、いったん休む選択をしてかまいません。

認知の歪みは、特別な人だけに起きるものとは限りません。忙しいときや不安なときは、誰の頭にも浮かびます。あなただけがおかしいわけではないのです。

認知の歪みを自分で治すと決めた、その気持ちはとても大切です。だからこそ、力の入れ方を少し工夫していきましょう。

考え方をいきなり変えるところからは始めません。今の状態を確かめることから、順番に進めていきます。

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認知の歪みとよくある考え方のクセ

そもそも認知の歪みとは何なのか。ここで一度、言葉の意味を整理しておきます。用語として押さえるだけで十分です。

考え方のクセとはどういうことか

認知の歪みとは、物事の受け取り方が一方向に偏った状態を指します。精神科医のアーロン・ベックが提唱した認知療法が、この考え方のもとになっています。

同じ出来事でも、人によって感じ方は変わります。上司に「もう少し頑張ろう」と言われて、励ましと受け取る人もいます。責められたと感じる人もいます。

この差を生むのが、これまでの経験でできた考え方のクセです。とっさに浮かぶこの反応を、自動思考と呼びます。

歪みという言葉は強く聞こえます。でも、あなたの人格に問題があるという意味ではないのです。捉え方のクセに名前がついている、それくらいの距離で眺めてください。

同じ言葉でも受け取り方は変わるため、とっさに浮かんだ考えを少し離れて眺めてみましょう。
同じ言葉でも受け取り方は変わるため、とっさに浮かんだ考えを少し離れて眺めてみましょう。

よくあるパターンの呼び方

認知の歪みには、名前のついたパターンがいくつかあります。代表的なものを挙げます。

  • 全か無か思考(白黒思考):少しの失敗で全部だめだと感じる
  • べき思考:「〜すべき」で自分を縛る
  • 過度の一般化:一度の失敗を「いつもこうだ」と広げる
  • 心のフィルター:良い面を見ず悪い面だけ拾う
  • 感情的決めつけ:不安だから失敗すると決める

ほかにも、マイナス化思考、結論の飛躍、レッテル貼り、個人化などがあります。名前を全部覚える必要はありません。

全部に当てはめようとしなくて構いません。気になるものを一つか二つ見つければ十分です。一覧を自己診断のチェックにしすぎると、かえって疲れてしまいます。

自分によく出てくるのはどれか。そこだけ、そっと見つけておく。それで先に進めます。

なぜその考え方になりやすいのか

こうしたクセは、過去の経験や育った環境の影響でできると言われます。厳しい評価の中で育つと、まず最悪を想像する習慣がつきます。

ただ、この習慣には別の意味もあります。先に悪い方を考えるのは、傷つく準備をして自分を守ってきた反応でもあります。

自分に出やすい考え方のクセを一つ見つけるだけでも、選び直すための手がかりになります。
自分に出やすい考え方のクセを一つ見つけるだけでも、選び直すための手がかりになります。

だめな性格だから、そうなったのではないのです。あなたなりに、その場をしのぐ方法だった。そう考えてみると、少し見え方が変わります。

それに、いまのストレスや疲れも関係します。余裕がない時期ほど、考えは悪い方へ傾きます。過去だけでなく、今の状況も影響しているのです。

体調を整えながら認知の歪みを自分で治すセルフワーク

ここからは、自分でできる具体的な進め方に入ります。ただ、考え方をいじる前に確かめたいことがあります。順番を大切にしてください。

睡眠や疲れとの関係を確認する

眠れていますか。疲れは抜けていますか。この二つは、考え方より先に見てほしい点です。

睡眠が足りないと、誰でも物事を悪い方に受け取りやすくなります。脳が危険を強く見積もるためです。

つまり、いまの重い気分は、性格ではなく体の疲れが映っているだけかもしれません。まず生活のリズムを整える。それだけで見え方が変わることもあります。

寝つきが悪い。朝から体が重い。そんな日が続くなら、考え方より先に、休むことを優先してください。

直したいのは考え方なのか、それとも今の状況そのものなのか。ここを分けて見るだけでも、力の入れどころが変わります。

考え方を直す前に、睡眠と疲れ、そして今の状況を分けて確かめることが大切です。
考え方を直す前に、睡眠と疲れ、そして今の状況を分けて確かめることが大切です。

状況と気分から反証を書く手順

体調に大きな問題がなければ、書き出しを試します。認知行動療法のコラム法という方法です。厚生労働省も、うつ病の認知療法・認知行動療法の資料を公開しています。

やり方はシンプルです。次の順で紙に書きます。

  1. 状況:いつ、どこで、何があったか
  2. 気分:そのときの感情と強さ(0〜100%)
  3. 自動思考:頭に浮かんだ考え
  4. 根拠と反証:そう言える事実と、そうでない事実
  5. 別の見方:両方をふまえた新しい考え

たとえば、送ったメッセージの返信が来ないとき。気分は不安70%。自動思考は「嫌われた」。根拠は「まだ返事がない」。反証は「今日は忙しいと言っていた」。別の見方は「返信は明日かもしれない」。

ここまで書くと、不安の目盛りが少し下がることがあります。反証が思いつかないときは、友人が同じ状況にいると想像します。その人になんと声をかけるかを、そのまま書いてみます。

事実と別の見方をノートで整理すると、不安を少し距離を置いて眺めやすくなります。
事実と別の見方をノートで整理すると、不安を少し距離を置いて眺めやすくなります。

書けない時に使う代替と中断ライン

書こうとしても手が止まる。書くほど落ち込む。そういう日もあります。それは、あなたが弱いからではありません。

反証が出てこないのは、その考えが強くあなたを守ってきた証拠です。無理に書き換えなくて大丈夫です。

そんなときは、事実だけを一行書きます。「上司にこう言われた」。解釈は足しません。それだけで十分な日があります。

書いていて涙が止まらない。気分がさらに沈む。そう感じたら、そこで中断してください。中断は失敗ではなく、自分を守る判断です。

うまく書けた日と、書けない日があって当たり前です。できなかった日を、できた日より重く数えないでください。

考えがぐるぐると止まらなくなるときの向き合い方は、こちらの記事も参考になります。

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変わるまでの時間の感じ方

考え方のクセは、長い時間をかけてできています。ですから、すぐには変わりません。数日で結果を求めると、続かなくなります。

変化は、感情の強さの目盛りで測ります。同じ出来事で、不安が80%から60%に下がれば、それは十分な一歩です。

焦ると、変わらない自分をまた責めたくなります。でも、目盛りが動かない日があっても普通です。何週間かかけて、ゆっくり眺めるくらいでちょうどいいのです。

書くほどつらくなる日は、事実だけに絞る、中断する、休むという選択で自分を守れます。
書くほどつらくなる日は、事実だけに絞る、中断する、休むという選択で自分を守れます。

人によっては、手応えを感じるまで数週間から数か月かかることもあります。それでも遅くはありません。急がない人ほど、続けられます。

ゼロを目指さないことが、続けるコツです。小さな下がり幅を、変化として認める視点を持っておいてください。

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一人で抱えないための境界線と相談

最後に、自分だけで抱えないための視点を整理します。自分で治すことと、誰かと扱うことは、対立しません。

相手の言動まで自分のせいにしない

認知の歪みを学ぶと、何でも自分の受け取り方の問題だと考えがちです。でも、それは行きすぎることがあります。

実際に理不尽な扱いを受けているなら、自分のせいにする必要はありません。過度な叱責やモラハラ的な言動は、あなたの考え方の問題ではありません

自分を見直すことと、相手との境界線を引くことは、両方あっていいのです。どこまでが自分の課題で、どこからが相手の課題か。その線を、一度引き直してみましょう。

自分を振り返る姿勢は、それ自体とても誠実なものです。ただ、その誠実さを誰かに一方的に利用されてよい理由は、どこにもありません。

自分の課題と相手の課題を分けるときも、信頼できる人と一緒に整理してかまいません。
自分の課題と相手の課題を分けるときも、信頼できる人と一緒に整理してかまいません。

受診やカウンセリングの目安

自分でできる範囲には限りがあります。次のような状態が続くときは、専門家の力を借りる段階と考えてください。

  • 眠れない日が二週間以上続いている
  • 仕事や家事に支障が出ている
  • 自分を責める考えが止まらない
  • 消えてしまいたい気持ちが浮かぶ

こうしたサインがあるときは、セルフワークをいったん止めます。先に相談窓口や医療機関を頼ってください。それは弱さではなく、適切な選び方です。

眠れない日や生活への支障、自責が続くときは、セルフワークより相談を優先してください。
眠れない日や生活への支障、自責が続くときは、セルフワークより相談を優先してください。

気持ちの落ち込みが強く続くときの過ごし方は、あわせてこちらも読んでみてください。

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治るのかなどよくある疑問

認知の歪みは治るのか。ゼロにするというより、気づいて選び直せる幅が広がる。その表現が近いです。

うつ病との関係を心配する声もあります。認知の歪みそのものは病気ではありません。ただ、気分の落ち込みが長く続くときは、背景に別の不調がある場合もあります。

自分でチェックできるのか、という点も気になるところです。ネットの簡易チェックは入り口には便利です。でも結果に一喜一憂せず、目安として使うくらいがちょうどいいです。

本やアプリも入り口として役立ちます。ただ、長年の思い込みや、つらさが強い時期は、一人では届きにくい部分もあります。

焦ってすべてを一人で背負おうとすること。それ自体が、実は考え方のクセの一つかもしれません。抱え込まないことも、立派な対処法です。

そんなときは、誰かと一緒に整理していい。ココラボ相談室のカウンセリングも、その選択肢の一つとして考えてみてください。

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監修者: 石川蓮(公認心理師)

公認心理師、行動心理士。1997年生まれ。北里大学・大学院卒業。その後、公認心理師と行動心理士の資格取得。
在学中は高齢者や生産人口の色覚異常や朝型夜型特性が睡眠に与える効果等の研究を行う。
大学院卒業後、大学病院附属の研究所にてカウンセリングやデータマネジメント担当として勤務。また、都立高校の心理学講師としても勤務。
「心の悩みを持つ方のそばに寄り添う」をモットーに業務遂行しております。

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