自他境界が曖昧なのはなぜですか?人の感情に振り回されて毎日疲れる

監修者の石川蓮(公認心理師)先生より

人の気分に合わせすぎて疲れてしまう方は、優しさのセンサーが人より敏感なだけ、ということも多いんです。

自他境界が曖昧なのは性格の欠陥ではなくて、これまでの環境で身についた反応の癖なんですね。

まずは、誰といると消耗するのかを眺めてみるところから。

線を引くのは、相手を突き放すためではありませんよ。

アバター画像

30代女性(会社員)

職場で誰かが不機嫌だと、自分のせいかもと一日中そればかり考えてしまいます。

頼まれごとも断れなくて、気づけば予定はぎっしり。

自他境界が曖昧だからと知ったものの、なぜこうなったのか分からなくて。

家に着くとぐったりで、自分の気持ちがどこにあるのかも見えません。

ココラボ相談室からの回答

ご相談ありがとうございます。

人の機嫌に神経をすり減らして、家に帰るころには何も残っていない。そんな毎日は、ほんとうに消耗しますよね。

この記事では、自他境界が曖昧になる背景と、今日から少しだけ試せる距離の取り方を、公認心理師監修のもとで整理します。すぐに性格を変える話ではなく、疲れの出どころを見つけるところから始めましょう。

人の感情に振り回されて疲れてしまうあなたへ

誰かの機嫌がわるいと、自分のせいのように感じてしまう。そんな日が続くと、心も体もすり減っていきますよね。ここでは原因や対処に入る前に、いまのしんどさを少しだけ言葉にしてみます。

相手の機嫌が自分のせいに感じる

上司の眉間のしわ、友人の短い返信。本当は関係ないかもしれないのに、私が何かしたのかなと頭から離れなくなる。

これは考えすぎというより、相手の感情と自分の感情の境目が薄くなっているサインかもしれません。人の気分が自分の中に流れ込みやすい状態です。

責任感が強い人ほど、その場の空気を自分で背負おうとします。まずは、機嫌の理由の多くは相手の側にあると思い出すところからで十分です。

断れないのは弱さではない

頼まれると断れず、気づけば予定がいっぱい。あとで、なんで引き受けたんだろうと一人で反省する。

断れなさは意志の弱さではなく、嫌と言うと関係が壊れる、と体が学んできた結果であることが多いです。長く続けてきた反応なので、急に変わらなくて当然なんです。

相手の機嫌と自分の責任を分けて考えることが、抱え込みすぎないための最初の一歩です。
相手の機嫌と自分の責任を分けて考えることが、抱え込みすぎないための最初の一歩です。

自分を責める前に、その反応がいつごろから始まったのかを、少しだけ振り返ってみてください。

アバター画像

監修者の石川蓮(公認心理師)先生に相談してみませんか?

自他境界(バウンダリー)が曖昧とはどんな状態か

自他境界は、バウンダリーや境界線とも呼ばれます。ここでは、それがどんなものかと、曖昧なときに現れやすいパターンを整理します。自分に当てはまるかを、疲れの出どころ探しとして見てみましょう。

自分と他人を分ける心の境界線

自他境界とは、自分と他人は違う存在だという、心の中の目に見えない線のことです。感情や責任、考えがどこまで自分のものかを分けてくれます。

この線がはたらいていると、相手が不機嫌でも、それは相手の事情と置いておけます。曖昧だと、相手の感情まで自分の責任のように抱えてしまうんですね。

生まれたての赤ちゃんは、自分と世話をしてくれる人の区別がついていません。人は成長の中で少しずつこの線を育てていく、と発達心理学では説明されます。つまり境界は、もともと固定されたものではないのです。

自分の気持ちと相手の感情の間に境界線を意識すると、責任の範囲を整理しやすくなります。
自分の気持ちと相手の感情の間に境界線を意識すると、責任の範囲を整理しやすくなります。

曖昧な人によくある特徴チェック

自分に当てはまるものがないか、疲れの手がかりとして眺めてみてください。診断ではなく、あくまで傾向の確認です。

  • 嫌なことを嫌と言えず、あとで後悔する
  • 周りの意見にすぐ影響されて、自分の考えが揺れる
  • 相手の機嫌が、自分のせいのように感じる
  • ちょっとした言動で深く傷つきやすい
  • つい他人と自分を比べてしまう

いくつか当てはまっても、それは性格の欠点ではなく、線が緩みやすい今の状態を映しているだけです。当てはまる数を競うものではありません。

自分を広げる型と他者を取り込む型

曖昧さには、大きく二つの方向があると言われます。ひとつは、自分の感覚を相手も同じはずと考える、自分の領域を広げる型です。

もうひとつは、相手の考えや責任まで自分の中に取り込んでしまう型です。人の頼みを断れず、批判もそのまま抱え込みやすくなります。

頼まれた瞬間に引き受けず、自分の予定を確かめる時間も大切な境界の一部です。
頼まれた瞬間に引き受けず、自分の予定を確かめる時間も大切な境界の一部です。

人の感情に振り回されて疲れるという悩みは、後者に近いことが多いです。どちらの型かが見えると、自分の消耗のしかたも少しつかめてきます。

なぜ自他境界が曖昧になってしまうのか

原因はひとつではなく、育ちや気質、そのときの状態が重なって生まれます。ここでは背景を整理しながら、自己判断で決めつけない見方も一緒に確認していきます。

機嫌を読む家庭やいい子役割の影響

小さいころ、親や周りの機嫌を先に察して動く必要があった人は、自分の気持ちより相手の顔色を優先する癖が身につきやすいです。

いい子でいれば安心できた経験は、その場では役に立ったはずです。ただ大人になっても続くと、自分の希望がいつも後回しになってしまいます。

これはあなたが選んだ性格ではなく、その環境を生き延びるために覚えた工夫だった、と考えてみてください。

共感性が高く優しい人ほど緩みやすい

人の気持ちを敏感に感じ取る力が強い人は、相手の感情が自分の中に流れ込みやすくなります。優しさや共感性の高さが、そのまま消耗につながることがあるのです。

冷たい人だから疲れないのではなく、思いやりがあるからこそ巻き込まれる。そう考えると、自分への見方が少し変わりませんか。

一時的な疲れか昔からのパターンかの見分け方

最近になって急に人の機嫌が気になるなら、ストレスや疲労で一時的に線が緩んでいる可能性があります。この場合は、休息をとると戻ることも少なくありません。

最近だけの疲れか昔から続く反応かによって、自分を整えるペースや頼る先も変わります。
最近だけの疲れか昔から続く反応かによって、自分を整えるペースや頼る先も変わります。

一方、子どものころから同じ苦しさが続いているなら、長年のパターンとして根づいているのかもしれません。どちらなのかで、対処のペースは変わってきます。

眠れているか、食欲はあるか。体のサインもあわせて見てみてください。

発達障害との関連は自己判断しない

自他境界の曖昧さは、ASDなどの特性と関連づけて語られることがあります。ただ、曖昧イコール発達障害ではありません

ネットの情報だけで自分にラベルを貼ると、かえって不安が強まりがちです。気になる場合は、自己判断せずに専門機関へ相談するほうが安心です。

アバター画像

監修者の石川蓮(公認心理師)先生に相談してみませんか?

今日から試せる自他境界の引き方

ここからは、小さく試せる関わり方を紹介します。一度に全部を変える必要はありません。ひとつだけ選んで、無理のない範囲から始めてみてください。

快・不快を基準に小さく決める

正しいかどうかより、自分が心地よいか、嫌かを手がかりにするところから始めます。難しく考えず、体が少し軽くなる方を選ぶ感覚です。

たとえば誘いを受けたとき、行きたいのか、断りたいのかを一度だけ自分に聞いてみる。答えがすぐ出なくてもかまいません。

即答せず保留する一言と断り方の例

反射的にいいよと言ってしまう人は、返事の前に一拍おく言葉を用意しておくと楽になります。その場で決めない練習です。

返事の前にひと呼吸おき、自分の予定を確認することから小さな境界を作れます。
返事の前にひと呼吸おき、自分の予定を確認することから小さな境界を作れます。

たとえば、少し考えて連絡しますね、予定を確認してから返します、など。断るときは、今は余裕がなくて、と理由を長く説明しすぎないのがコツです。

保留は逃げではなく、自分の気持ちを確かめる時間を確保する工夫なんですね。

境界は壁ではなくドアという再定義

線を引くと聞くと、相手を突き放す冷たい行為に思えるかもしれません。けれど境界は壁ではなく、開け閉めできるドアのようなものです。

閉じたいときは閉じ、心を許せる相手には開く。全部を拒むのではなく、出入りを自分で選べる状態が、ほどよい距離感といえます。

境界を引くことは、関係を切るためではなく、続けるための調整だと考えてみてください。

境界を引いた後の相手の反発に備える

これまで通してきた要求を断ると、相手が戸惑ったり、不機嫌になったりすることがあります。その反応は、あなたが間違えた証拠ではありません

罪悪感に訴えられても、いったん受け止めてから考える。反発が一時的に強く出ることもあると先に知っておくだけで、気持ちが揺れにくくなります。

一人で抱えず相談したほうがよいとき

境界の引き直しは、一人で完璧にやろうとすると苦しくなりがちです。ここでは、関係別の悩みと、誰かに頼ったほうがよいサインを整理します。

親子、パートナー、職場の悩みは、一人で抱えず関係に合う支えを借りてよいものです。
親子、パートナー、職場の悩みは、一人で抱えず関係に合う支えを借りてよいものです。

親子・パートナー・職場など関係別の悩み

同じ曖昧さでも、相手が親か、恋人か、職場の人かで、感じる苦しさは変わります。距離が近い関係ほど、境界は曖昧になりやすいとされています。

親との関係、支配的なパートナー、断りにくい職場。どれも一人で背負い込みやすい場面です。関係ごとに、試せる一歩は少しずつ違ってきます。

抑うつやモラハラを伴うときは専門家へ

断ることを考えるだけで強い恐怖が出る、相手の機嫌で眠れず食べられない。そんなときは、無理に自力で解決しようとしないでください

背景に虐待やモラハラ、抑うつのような状態があるなら、専門家の力を借りて大丈夫です。厚生労働省のこころの耳では、働く人向けの相談窓口を案内しています。

誰かと一緒に、少しずつ線を引いていく。その順番のほうが、たいてい長く続きます。

アバター画像

監修者: 石川蓮(公認心理師)

公認心理師、行動心理士。1997年生まれ。北里大学・大学院卒業。その後、公認心理師と行動心理士の資格取得。
在学中は高齢者や生産人口の色覚異常や朝型夜型特性が睡眠に与える効果等の研究を行う。
大学院卒業後、大学病院附属の研究所にてカウンセリングやデータマネジメント担当として勤務。また、都立高校の心理学講師としても勤務。
「心の悩みを持つ方のそばに寄り添う」をモットーに業務遂行しております。

この記事をシェアする

公認心理師が
あなたの一歩を支えます

相談は無料です。
お気軽にお問い合わせください。

公認心理師がサイト上で回答します

公認心理師にオンラインで相談

カウンセリングの詳細