非定型うつ病の家族にどう接すればいい?急に不機嫌になる相手が怖いです

監修者の石川蓮(公認心理師)先生より

元気そうに見える時間があるのに、急に不機嫌になる。

その落差に戸惑うご家族は少なくありません。

振り回されて疲れてしまうのは、あなたが冷たいからではないんです。

症状として説明がつく部分と、あなた自身を守る視点を、ここで一緒に整理していけたらと思います。

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40代女性(会社員)

夫が非定型うつ病と診断されました。

平日の朝は起きられないのに、休日の趣味には出かけていく姿を見ると、どう受け止めていいのか分からなくなります。

声をかけた途端に不機嫌になることもあって、その表情が怖くて、最近は顔色ばかりうかがっています。

ココラボ相談室からの回答

ご相談ありがとうございます。

元気に見える瞬間があるからこそ、あなたの戸惑いは周りに伝わりにくく、一人で抱え込みやすいのだと思います。

この記事では、非定型うつ病の家族への接し方を、気分の波を症状として理解する視点と、支えるあなた自身が消耗しすぎないための境界線という二つの面から整理していきます。

「好きなことはできるのに」と感じてしまう家族へ

非定型うつ病の家族と暮らしていると、相手の気分の波に自分の心まで持っていかれることがあります。

まずはこの章で、いま感じている怖さや戸惑いがどこから来ているのかを、責める前にそのまま眺めてみます。

急に不機嫌になる相手が怖いのは当然のこと

さっきまで普通に話せていたのに、ひとことで空気が変わる。

その落差に身構えてしまうのは、あなたが弱いからではなく、予測できない反応にさらされ続けているからです。

人は次に何が起きるか読めない状況に置かれると、自然と警戒モードになります。

顔色をうかがう時間が増えているとしたら、それはあなたの神経がずっと張っているサインでもあります。

疲れて嫌になる自分を責めなくていい

支えたい気持ちはあるのに、心のどこかで相手を疎ましく感じてしまう。

そんな自分に気づいて、後ろめたさを覚える方は少なくありません。

けれど、その感情は愛情が消えた証拠ではなく、支え続けた末に出てくる消耗のサインであることが多いです。

疲れをなかったことにするより、ここまで踏ん張ってきた自分にまず気づくほうが先だと思います。

家族の育て方が原因ではない

自分の関わり方が悪かったのではと、過去を振り返って責めてしまうこともあります。

非定型うつ病の背景には、生まれ持った気質や環境、対人関係のストレスなど複数の要因が絡むとされ、誰か一人のせいで説明できるものではありません。

非定型うつ病の背景は気質・環境・対人ストレスなどが重なり、家族の誰か一人のせいとは限りません。
非定型うつ病の背景は気質・環境・対人ストレスなどが重なり、家族の誰か一人のせいとは限りません。

原因を一つに決めつけようとするほど、家族全体が身動きを取りづらくなります。

今できることに目を向けるほうが、本人にとっても支える側にとっても現実的です。

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非定型うつ病で家族が振り回される理由

振り回されていると感じる相手の言動には、性格ではなく症状として説明がつく部分があります。

この章では、家族が最も戸惑いやすい気分の波を、少しだけ仕組みの側から見直してみます。

典型うつ病との違いと気分反応性

一般的なうつ病は一日中気分が沈み、朝がつらい傾向があります。

一方で非定型うつ病では、楽しいことがあると一時的に気分が持ち直す気分反応性という特徴が知られています。

過眠や過食、手足が鉛のように重く感じる感覚、夕方に調子が落ちやすい点も挙げられます。

こうした違いを知っておくと、相手の変化を気まぐれと片づけずにすみます。

「好きなことはできる」は甘えではなく症状

家族が最も納得しづらいのが、仕事や家事は動けないのに趣味には出かけられる、という場面だと思います。

ここでやっぱり甘えではと感じてしまうのは、無理のない反応です。

動けない時間と楽しめる時間が同時にあることは、気分反応性という症状の見え方として整理できます。
動けない時間と楽しめる時間が同時にあることは、気分反応性という症状の見え方として整理できます。

ただ、気分反応性はこの病気の中心的な症状の一つとして整理されています。

好きなことに反応できること自体が、回復したことを意味するわけではないという点は、覚えておくと見方が変わりやすいところです。

逆ギレや不機嫌は拒絶過敏性という反応

ささいな指摘に強く反応したり、急に不機嫌になったりする背景には、拒絶過敏性という特徴が関わることがあります。

これは、否定や拒絶を実際以上に強く受け取ってしまう状態を指します。

あなたの言葉そのものが悪かったというより、受け取る側の感度が上がっている時間帯だったという見方もできます。

とはいえ、ぶつけられる側の傷つきが軽いわけではありません。そこは後の章で改めて触れます。

非定型うつ病は正式な診断名ではない

補足として、非定型うつ病という言葉は、実は正式な病名ではありません。

DSM-5という国際的な診断基準では、非定型の特徴を伴う抑うつ障害として位置づけられています。

背景に別の状態が混ざっていることもあり、診断や見立ては専門家でも慎重に進められます。

家庭で名前だけを頼りに本人を分類しようとしないことが、かえって関係を守ることにつながります。

非定型うつ病の家族への接し方と声かけ

ここからは、日常でできる具体的な関わり方に入ります。

正解を一つに絞るのではなく、選べる引き出しを増やすつもりで読んでいただけたらと思います。

正解を押しつけず、落ち着いた時間に短い言葉で話すことが、家族のやりとりを穏やかにします。
正解を押しつけず、落ち着いた時間に短い言葉で話すことが、家族のやりとりを穏やかにします。

避けたい言葉と代わりに使える言葉

よかれと思った言葉が、相手を追い込んでしまうことがあります。

特に気分反応性があるぶん、元気そうな瞬間を引き合いに出す言葉は避けたいところです。

避けたい言葉代わりに使える言葉
前はあんなに楽しそうだったのに今日は少し動けたんだね
気の持ちようだよ、頑張って無理そうな日は言ってね
いつになったら治るの焦らなくて大丈夫、待ってるよ

一言でも責める響きが混じっていないかを確かめるだけで、伝わり方はずいぶん変わります。

励ます励まさないは主治医の方針を確認する

情報を調べると、励まさない方がよいという説明と、多少の励ましは問題ないという説明が混在していて、混乱するかもしれません。

実際、厚生労働省のこころの耳でも、励ましが逆効果になる時期と有効な時期があり、対応の時期は主治医に相談するようすすめています。

つまり、励ますかどうかは一律に決められず、本人の状態と主治医の方針によって変わるということです。

迷ったら自己判断で押し切らず、通院に付き添った折に確認しておくと安心です。

生活リズムを一緒に整える関わり方

非定型うつ病では過眠が出やすく、昼夜のリズムが崩れやすい傾向があります。

だからといって、管理する立場で予定を組んでしまうと、相手には圧力に感じられることがあります。

起きる時間をそろえる、朝に少し光を浴びるといった工夫は、本人に代わってやるのではなく、隣で一緒に取り組むくらいの距離感がちょうどよいです。

生活リズムは管理するのではなく、起床・朝の光・日々の行動を隣で一緒に整える姿勢が大切です。
生活リズムは管理するのではなく、起床・朝の光・日々の行動を隣で一緒に整える姿勢が大切です。

できた日を一緒に確かめられると、相手の小さな達成感にもつながります。

怒り発作が起きた場面での対応と関わり直し

強い言葉をぶつけられた瞬間は、その場で議論しても互いに消耗するだけのことが多いです。

まずは肯定も否定もしすぎず、少し距離を置いて双方が落ち着くのを待つほうが、事態はこじれにくくなります。

落ち着いてから、責める口調ではなく、さっきは少し驚いたと自分の気持ちを短く伝えてみる。

言い返すことより、あなた自身の安全と平静を先に確保することを優先してかまいません。

怒りが高まったら距離を取り、落ち着いてから短く伝え、何より自分の安全を優先してください。
怒りが高まったら距離を取り、落ち着いてから短く伝え、何より自分の安全を優先してください。

受診の促し方と家族が先に相談する選択

本人がまだ受診していない場合、病名を前面に出すと身構えられやすいものです。

眠れていない状態が続いているのが心配、と見えている事実をそのまま伝えるほうが届きやすいとされています。

本人が動けないときは、家族だけで先に相談してよいという点も知っておいてください。

精神保健福祉センターやかかりつけの心療内科には、家族からの相談を受け付けている窓口があります。

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支える家族が限界を迎える前に

最後に、本人ではなく、支えているあなた自身の状態に目を向けます。

支え続けるためにこそ、どこかで手を抜いたり人に渡したりする視点が要ります。

家族自身の消耗と限界のサイン

眠れない夜が続く、相手といるとき常に緊張している、以前は楽しめたことに関心がわかない。

こうした変化は、あなたのエネルギーが底をつきかけているサインかもしれません。

支える側が倒れてしまうと、共倒れになりかねません。

自分の睡眠と食事が保ててるかを、相手の様子と同じくらい気にかけてよいところです。

支える側も、自分の睡眠や食事が保てているかを確かめ、休む時間を取って構いません。
支える側も、自分の睡眠や食事が保てているかを確かめ、休む時間を取って構いません。

暴言・暴力・自殺のほのめかしがあるときの安全確保

暴言や暴力がある、本人が死をほのめかすといった場面では、我慢して耐えることが最善とは限りません。

身の危険を感じるときは、その場から物理的に離れることが、結果的に本人のためにもなる選択です。

死にたい気持ちが語られたときは、一人で抱えず主治医や相談窓口につなぐことを最優先にしてください。

安全は、接し方のどんな工夫よりも先に来るという順番だけは、崩さないでほしいと思います。

相談できる窓口と家族会

抱えきれないと感じたら、外に手を伸ばすことをためらわないでください。

公的な相談先としては、各地の精神保健福祉センターや、厚生労働省のこころの耳の相談窓口があります。

同じ立場の人と話したいときは、家族会やオンラインのコミュニティも選択肢になります。

同じ体験をした人に話せると、自分だけが抱えているという感覚がやわらぐことがあります。

精神保健福祉の窓口、家族会、心理相談は、一人で抱えないために組み合わせて利用できます。
精神保健福祉の窓口、家族会、心理相談は、一人で抱えないために組み合わせて利用できます。

いつまで続くのか別れるべきか迷うとき

先が見えないと、この関係を続けていいのかと考えてしまうこともあると思います。

その問いに、記事の側から別れる別れないの答えを出すことはできません。

ただ、大きな決断は、あなた自身の消耗が少し回復してから考えても遅くないというのは、一つの目安になります。

判断を急がされていると感じたら、まずは信頼できる人や専門家に、いまの状況を言葉にして預けてみてください。

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監修者: 石川蓮(公認心理師)

公認心理師、行動心理士。1997年生まれ。北里大学・大学院卒業。その後、公認心理師と行動心理士の資格取得。
在学中は高齢者や生産人口の色覚異常や朝型夜型特性が睡眠に与える効果等の研究を行う。
大学院卒業後、大学病院附属の研究所にてカウンセリングやデータマネジメント担当として勤務。また、都立高校の心理学講師としても勤務。
「心の悩みを持つ方のそばに寄り添う」をモットーに業務遂行しております。

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