対人恐怖症で仕事が続かず何度も辞めています。このまま働けないのではと不安です
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監修者の石川蓮(公認心理師)先生より
仕事が続かないと、努力や我慢が足りないせいだと自分を責めてしまいますよね。
けれど実際にお話を伺うと、しんどさは人と関わる特定の場面に偏っていることが多いものです。
辞めるかどうかの前に、どこで消耗しているのかを一緒にほどいていけたらと思います。
20代男性(会社員)
人と話す場面が続くと頭が真っ白になって、電話が鳴るだけで手が止まってしまいます。
今の職場で三社目なんですが、また続かないかもと思うと、朝、家を出る前から胃が重くなって。
自分の甘えなのか、もう分からなくなってきました。
ココラボ相談室からの回答
ご相談ありがとうございます。
何度か辞めてきた事実だけを取り出すと、自分に足りないものばかり数えたくなりますよね。でも、続かなかった背景には、その場面ごとの負担の大きさが隠れていることも少なくありません。
この記事では、続かない理由を性格や能力から少し切り離して見直しながら、辞める・続ける・休むをどう考えるかを一緒に整理していきます。
仕事が続かず何度も辞めてきた今の気持ち
同じところで長く働けなかった経験が重なると、次を考える前に自分を責める気持ちが先に立ちますよね。まずはその重さを、いったんそのまま置いておきましょう。ここでは、今のあなたの状態を否定せずに見ていきます。
どの場面で限界がきたかを思い出す
続かなかったと一括りにすると、まるで自分の全部がだめだったように感じてしまいます。でも実際には、つらさが集中していた場面はもっと限られていたはずです。
電話が鳴った瞬間なのか、報告や相談で声をかけるときなのか、会議で急に話を振られたときなのか。どの場面で消耗したのかを一つ思い出すだけでも、続かなかった理由の輪郭が変わってきます。
仕事そのものより、人と関わる特定の場面に負担が偏っていたと気づくと、次に避けたい条件も見えやすくなります。

働けない自分に価値がないと感じるとき
短い期間で辞めるたびに、働けない自分には価値がないという考えが浮かんでくることがあります。この思いは、気分が落ちているときほど事実のように感じられます。
けれど、働き続けられるかどうかと、人としての価値は本来別のものです。今つらいのは、価値が下がったからではなく、合わない負荷が続いていたからかもしれません。 この見方の切り替えは、すぐにできなくても構いません。
もしこの考えが繰り返し強く出てくるなら、後半で触れる相談先を早めに思い出してください。
監修者の石川蓮(公認心理師)先生に相談してみませんか?
続かないのは甘えでも性格ではない
続かないのは自分が甘えているからだ、という声は、対人恐怖症の相談でよく聞きます。ここでは、その受け止め方を少しほどいていきます。原因を性格から切り離して見直すのがねらいです。
対人恐怖症と社交不安症の関係
対人恐怖症は、実は正式な診断名ではありません。医療機関では社交不安症(社交不安障害・SAD)と呼ばれることが一般的で、人前で否定的に評価される不安が強く続き、生活や仕事に支障が出る状態を指します。
対人恐怖症という言葉は、日本の文化に根ざした表現としてICD-10でも紹介されてきました。性格の弱さではなく、不安の反応が過度に高まりやすい状態だと整理すると、少し扱いやすくなります。

回避が一時的に楽になる仕組み
つらい場面を避けると、その瞬間は不安がすっと下がります。この安心感が、また避ける行動を選びやすくします。
これは回避の負の強化と呼ばれる仕組みで、行動療法でも知られています。避けたことを責める話ではありません。楽になった経験があるからこそ、避ける選択が身についていくのは自然なことだと知っておくと、自分を責めずに済みます。
そのうえで、避けてよい負荷と、少しずつ慣らしていける負荷を分けて考えられると、選択肢が広がります。
続かないと続けたくないを分ける
続かないと感じているとき、体が限界で続けられないのか、その職場を続けたくないのかは、混ざりやすいところです。

前者には休息や環境調整が要りますし、後者は働き方そのものの見直しが合っています。同じ辞めたい気持ちでも、疲れきって動けないのか、方向を変えたいのかで、次の一手は変わります。 ここを分けておくと、勢いだけで決めずに済みます。
辞める・続ける・休むをどう判断するか
仕事を辞めたいと思ったとき、いきなり結論を出さなくても大丈夫です。ここでは判断の材料を並べていきます。答えを一つに絞る章ではありません。
体調と生活から今の状態を見る
判断のときに見落とされやすいのが、心の状態と体のサインです。次の観点を、今の自分に当てはめてみてください。
| 見るところ | 続けながら調整できそう | 一度休む・相談を優先したい |
|---|---|---|
| 睡眠・食欲 | 大きくは崩れていない | 出社前に眠れない・食べられない |
| 出勤前の体調 | 気は重いが動ける | 動悸や吐き気で動けない日がある |
| 職場の配慮 | 相談できる相手がいる | 相談先がまったくない |
当てはまりが右に寄るほど、辞めるより先に、休息や相談を挟む判断が向いています。
決断を急がない方がよいサイン
退職や転職は大きな決断なので、体調が最も悪い日には決めない、という目安が役立ちます。強い自責や気分の落ち込みがあるときは、視野が狭くなりやすいためです。

向いてる仕事に移れば解決する、と単純化しないことも大切です。 同じ職種でも職場によって負担は大きく変わります。まずは収入と生活の見通しを確かめてから動くと、選択に余裕が生まれます。
実際、精神障害のある人の職場定着率は、就職から1年で半分ほどに下がるという障害者職業総合センターの調査もあります。続かなさは個人の弱さだけの問題ではなく、職場との相性が大きく関わることを示す数字です。
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今の職場と働き方でできる工夫
すぐ辞める前に、今の場所で負担を減らせる余地もあります。ここでは小さく試せる工夫と、環境の選び方をまとめます。無理に全部やる必要はありません。
今の職場でできる負担の減らし方
人と関わる場面の負担は、準備の仕方で少し軽くなります。試しやすいものを挙げます。
- 伝えたいことを、結論・状況・確認したいことの三つに分けてメモしておく
- 報告や質問の時間帯を、午前に一度などと自分の中で固定する
- よく使う言い回しをいくつか決めて、毎回考え込まない
相手の反応が気になったときは、事実と自分の解釈を分けて見直すと落ち着きます。返事が短かったのは事実でも、嫌われたというのは解釈にすぎません。この切り分けは、認知行動療法のコラム法でも使われる考え方です。

働きやすい環境の4つの条件
対人恐怖症で仕事ができないと感じるとき、職種より先に環境の条件を見ると選びやすくなります。目安は、対人接触の少なさ、業務手順の明確さ、在宅や時短の可否、少人数で静かな環境の四つです。
この四つが揃うほど、気を張り続ける時間が短くなり、働き続けやすくなります。 すべてを満たす職場は多くないので、絶対に避けたい条件から先に決めるのが現実的です。

向いてる仕事は職種名だけで選ばない
事務やデータ入力、IT、軽作業、在宅ワークなどは、負担が少ない例としてよく挙がります。ただし同じ事務でも、電話や来客が多い職場なら負担は大きくなります。
職種名ではなく、実際のやり取りの多さで見るのが失敗しにくいコツです。 求人を見るときは、コミュニケーションの頻度や働き方まで確かめておくと安心です。
周囲に伝える相手と範囲の選び方
配慮を求めるのは、過剰な要求ではありません。ただ、伝えること自体が怖い場合は、相手と範囲を選んでいいのです。
仕事の進め方は上司、働き方や制度は人事、体調は産業医や産業保健スタッフ、と相手ごとに分けると伝えやすくなります。全部を一度に打ち明ける必要はなく、困る場面を一つ共有するだけでも十分です。

配慮を前提に働くと続きやすくなる傾向もあります。ある調査では、障害を開示しない場合の1年後の定着率が約28%、開示した場合は約45%、障害者雇用ではおよそ64%と報告されています。ただ、開示には負担も伴うので、急いで決めなくて構いません。
一人で抱えないための相談先と制度
最後に、外の支えを並べておきます。どれも今すぐ使わなくてよく、知っておくだけでも気持ちの逃げ場になります。急かす意図はありません。
精神科・心療内科・カウンセリングの違い
精神科や心療内科では、診断や薬による治療、環境調整の相談ができます。受診はつらさを感じた段階でよく、重くなってからでなくて構いません。
カウンセリングは、考え方の癖や不安との付き合い方を、時間をかけて整理する場です。役割が違うので、今の困りごとに近い方から選べば大丈夫です。 オンラインカウンセリングなら、外出が不安なときでも相談しやすいでしょう。

使える制度とお金の支えを知る
働けない期間の生活が不安だと、判断も焦りがちになります。使える制度を知っておくと、その焦りは少し和らぎます。
診断があれば、自立支援医療で通院費の負担を軽くできる場合があります。休職中には傷病手当金、状態によっては障害年金や精神障害者保健福祉手帳、障害者雇用枠という選択肢もあります。就労移行支援やハローワークの専門窓口、障害者就業・生活支援センターも相談先です。まずお金の見通しを立てるだけでも、動ける範囲は変わります。

受診や相談を考えたい目安
次のような状態が続くときは、一人で抱えず相談を考えてみてください。出勤前の動悸や吐き気、不眠が続く。人を避ける場面が仕事以外にも広がっている。気分の落ち込みが二週間以上続く。
こうしたサインは、頑張りが足りないからではなく、休息と支えが必要になっている合図です。自分を傷つけたい気持ちがあるときは、緊急の相談先につながってほしいところです。 いのちの電話などの窓口は、匿名でも利用できます。続かない今を、一人だけで抱え込まなくて大丈夫です。